EYEVAN(アイヴァン)の名作メガネはこうして生まれる

“着るメガネ”という新しいコンセプトを提唱した今までにない洗練されたデザインは、まだその概念すらなかったアイウエア=ファッションという打ち出しで続々とアイコニックなモデルを開発し、創業50周年を迎えた「アイヴァン」。その歴史や伝統を受け継ぐマスターピースとして、現在も高い人気を誇るのが[Webb]と[E-0505]。この2枚看板がどのようにして生まれるのか。その現場はもちろん鯖江にあり、鯖江の職人たちによる、匠の技が息づいている。

アイウエア=ファッションを確立した「アイヴァン」

Webb|クラシックフレームの王道、ボストンウェリントン型にオリジナルのカシメ丁番を採用したアイヴァンが誇るマスターピースのひとつ。テンプル芯にはクラシックカーのパーツから着想を得た美しい柄が施されている、シンプルながら重厚感のある意匠。4万700円

アメリカ東海岸のトラッドファッションをベースに、当時のトレンドだったアイビースタイルを日本に根付かせたヴァンヂャケットと協業するかたちで1972年に産声を上げた、「アイヴァン」。“着るメガネ”という新しいコンセプトを提唱した今までにない洗練されたデザインは、まだその概念すらなかったアイウエア=ファッションという打ち出しで続々とアイコニックなモデルを開発。今日における国産メガネの礎を築いたと言っても過言ではない。

E-0505|ブランド初期から定番として君臨する、ボストンシェイプのコンビネーションフレーム。マンレイブリッジやヨロイ、テンプルなどのメタルパーツは金型から特注したこだわりで50年を超える歴史あるブランドのフィロソフィーを宿し、伝える逸品。4万4000円

その後、ブランドは一時休止を余儀なくされたが、2018年に復活を果たす。そして、そのきっかけにもなったのは、ここにある2モデルである。ウェリントン型プラスチックフレームの[Webb]と、ボストン型コンビネーションフレームの[E-0505]は、まさにアメリカンクラシックを体現する、オーセンティックなデザイン。しかし、その背景には鯖江の職人たちによる、匠の技が息づいていることは、忘れてはいけない純然たる事実なのだ。

美しい光沢と滑らかな曲線をフリーハンドで磨く「Webb」

テンプル裏から覗く幾何学模様が施されたテンプル芯が重厚なアクセントに。ブラックフレームの多くは顔料によって色付けされるが、あえて染料を使用することでグランドピアノのような深みのある黒を表現したアイヴァンの完全オリジナルカラー。幾度となく磨かれることで、より純度の高い色味へと仕上げられている。メガネ4万700円、サングラス4万9500円(アイヴァン 東京ギャラリーTEL03-3409-1972)

プラスチックフレームの製作はメタルフレームに比べていまだに多くの工程がハンドメイドである。[ウェブ]の生産を長年請け負っているこの工場は、プラスチックを専門に取り扱っているだけあって、年季の入った機械が随所に見られるなど、昔ながらのメガネ作りの風景が多分に残されていた。

なかでも[ウェブ]の真髄である、美しい光沢とフォルムを生み出すため、最も重要となる工程が「磨き」。メガネの磨きは大きく分けてふたつ。バレルと呼ばれる箱の中で研磨剤とともに数日間、回しながら磨く「ガラ入れ」と、数種類の布を使い分けながら手作業で行われる「バフ磨き」があり、それぞれの工程を3回ずつ交互に行う。

特にバフ磨きに関しては、手作業のため、職人の経験が物を言う。「磨きながら削り、丸みを出しつつも、角をつける」、この相反するような奥深い匠の技により、あの特徴的な甲丸感とシャープな直線のバランスが生まれるのだ。

フロントリムは型の削り出しから、計6回にも及ぶ磨きの工程を経て、完成にまで辿り着く。バフと呼ばれる布を高速で回しながら手作業で磨かれる工程は、まさに職人技。リムとテンプルを滑らかに繋ぐ、ヨロイ部分は、ただ丸くすればいいわけじゃない。随所に直線を交えることで、フレームの奥行きが生まれる

昔ながらの機械が揃い、手仕事を重んじる伝統的なメガネ作りの風景が多分に残る、プラスチックフレームの専門工場。ここでは、生地の切削からガラ入れ、バフ磨き、丁番のカシメなど、多くの工程が行われている。職人は10人にも満たない会社ではあるが、鯖江のなかでは比較的大規模な工場だという
この記事を書いた人
2nd 編集部
この記事を書いた人

2nd 編集部

休日服を楽しむためのマガジン

もっと休日服を楽しみたい! そんなコンセプトをもとに身近でリアルなオトナのファッションを提案しています。トラッド、アイビー、アメカジ、ミリタリー、古着にアウトドア、カジュアルスタイルの楽しみ方をウンチクたっぷりにお届けします。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

進化と伝統、どちらもここに。「L.L.Bean」のアウトドアと日常の垣根を超える名品たち。

  • 2025.10.17

100年以上にわたり、アウトドアと日常の垣根を越える名品を生み続けてきた「エル・エル・ビーン」。誠実なモノづくりと顧客への真摯な姿勢は、現代まで脈々と受け継がれている。伝統を守りながらも進化を恐れない、その精神こそが、今も世界中の人々を魅了し続ける理由だ。 愛される理由は機能美とその誠実さ 100年...

【Punctuation × 2nd別注】手刺繍のぬくもり感じるロングビルキャップ発売!

  • 2025.10.29

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【Punctuation × 2nd】ロングビルキャップ[トラウト] 温もりのある手仕事が特徴の帽子ブランド「パンク...

“黒のコロンビア”って知ってる? オンオフ自在に着回せる、アップデートされたコロンビアの名品を紹介!

  • 2025.10.21

電車や車といった快適な空間から、暑さや寒さにさらされる屋外へ。都市生活は日々、急激な気温差や天候の変化に直面している。実はその環境こそ、自然で磨かれた「コロンビア」の技術が生きる場だ。撥水性や通気性といったアウトドア由来の機能を街に最適化し「コロンビア ブラックレーベル」は、都市生活者の毎日を快適に...

2nd

良質な素材感とシルエットが美しい、東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。

  • 2025.10.17

東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。白黒の世界で際立つ良質な素材感とシルエットをご堪能あれ。 質感、シルエット、美しいミリタリー&ワークウエア 米軍同様のへビーナイロンツイルを使ったMA-1。軽量性・保温性・防寒性を備えたクライマシールドの中綿でスペックは現代的だが、エイジング加工によってヴ...

【J.PRESS×2nd別注】こんなイラスト、二度と出会えない。 著名イラストレーターとのコラボスウェット。

  • 2025.10.21

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【J.PRESS×2nd】プリントスウェットシャツ【AaronChang】 アメリカにある優秀な8つの大学を総称して...

Pick Up おすすめ記事

進化と伝統、どちらもここに。「L.L.Bean」のアウトドアと日常の垣根を超える名品たち。

  • 2025.10.17

100年以上にわたり、アウトドアと日常の垣根を越える名品を生み続けてきた「エル・エル・ビーン」。誠実なモノづくりと顧客への真摯な姿勢は、現代まで脈々と受け継がれている。伝統を守りながらも進化を恐れない、その精神こそが、今も世界中の人々を魅了し続ける理由だ。 愛される理由は機能美とその誠実さ 100年...

2nd

良質な素材感とシルエットが美しい、東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。

  • 2025.10.17

東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。白黒の世界で際立つ良質な素材感とシルエットをご堪能あれ。 質感、シルエット、美しいミリタリー&ワークウエア 米軍同様のへビーナイロンツイルを使ったMA-1。軽量性・保温性・防寒性を備えたクライマシールドの中綿でスペックは現代的だが、エイジング加工によってヴ...

【J.PRESS×2nd別注】こんなイラスト、二度と出会えない。 著名イラストレーターとのコラボスウェット。

  • 2025.10.21

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【J.PRESS×2nd】プリントスウェットシャツ【AaronChang】 アメリカにある優秀な8つの大学を総称して...

【Punctuation × 2nd別注】手刺繍のぬくもり感じるロングビルキャップ発売!

  • 2025.10.29

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【Punctuation × 2nd】ロングビルキャップ[トラウト] 温もりのある手仕事が特徴の帽子ブランド「パンク...

いつものトラッドがこんなにも新鮮に!ジャパンデニムの雄エドウインが提案する、クラシックな黒

  • 2025.10.18

“黒”という色はモードファッションとの結びつきが強い。故にトラッドスタイルとの親和性は低いように思われる。しかし、エドウインの提案する“黒”は実にクラシックである。 クラシックなトラウザーズが黒とトラッドを身近にする ブレザー、ボタンダウンシャツ、スラックス……。アメリカントラッドを象徴するアイテム...