メタルフレームの製造は驚くほど繊細だった
「ディグナクラシック」を手がける「パリミキ」が所有する、メタル専門の自社工場「クリエイトスリー」。ものづくりにおいては、「手作業の良さ」にやたらスポットが当たるが、ここでは機械を使った「とにかくストイックな完璧主義」に定評がある。
たとえば、金型を作る工程は手作業で行う工場が多いなか、同工場では機械で金型に直接凹型の彫りを入れていく。これにより、限りなく精度が高まる。また、「ディグナクラシック」の象徴、ぐにゃりと曲がるゴムメタルを扱えるのは、同工場含めてたったの4社。鯖江屈指の工場なのだ。
1.製図・モデリング
まずは原型となる製図を作り、デザイナーの思い描く完成図を、実際に製造するうえで実現可能な形に落とし込む。金型を作るための3Dデータを作るモデリングという作業も。
2.金型づくり
各パーツを作るための基盤となる金型を作る。上の写真中央の奥にある箱型の金属が、何も手が施されていない状態。右が機械によって、一部のパーツの形が彫り込まれ、金型として完成した状態だ。
3.プレス
高熱でメタルを柔らかくしながら潰していくプレス工程。ひとつのパーツに対して平均すると8回ほど、プレスを行う必要がある。モデルによって使う金型が異なり、それらがズラリと並ぶ収納庫は圧巻。
4.切削
プレスでパーツを抜き出すだけでは、まだ製品にできるほどのクオリティにはならない。油をかけてバリが出るのを防ぎつつ、カッターで切削していく。1㎜以下の非常に細かな世界である。
5.ロウづけ
メタルならでは工程が、この「ロウづけ」である。熱によって溶けるロウ剤を接着剤として、1000度ほどの熱を与えることでパーツ同士を固定していく。ロウ剤が不恰好にはみ出したり、製品になったときにロウがパーツから離れたりしないよう、細心の注意を払う。
6.ガラ入れ・磨き
角のある状態のフレームに丸みを与えるガラ入れはプラフレームと共通。ただし、ガラ(研磨用チップ)の種類が異なり、「クリエイトスリー」ではくるみチップをメインで使用。もちろん手作業によるバフがけの工程も必要不可欠。これにより美しき光沢を得る。
7.最終調整
人の手によって最終調整。完璧を目指して、少しの微差も見逃さない。ここでなにも調整しないことはあり得ないという。クリップオンにいたっては、バーの曲がり具合を癖づけるのは完全なる手作業。
ディグナクラシック渾身の周年記念モデルに注目
国内最大規模を誇るメガネチェーン「パリミキ」のオリジナルブランドであり、2nd誌でもお馴染みの「ディグナクラシック」。本年で生誕15周年を迎え、アニバーサリーモデル5型がリリース予定。うち3型にクリップオンが付属し、それぞれシリアルナンバー入りで600本のみ生産される、まさにスペシャルなモデルだ。
同ブランドに多大な影響を与えたという、偉大なミュージシャンが愛用していたメガネをオマージュした[309 ピース]や、手彫りした金型をプレスすることで、非常に細かく美しい彫金があしらわれた[310]、[311]。そのクオリティの高さに対してはお手頃な価格は、周年モデルだからこその特権。この機を逃すわけにはいかない。
309 Peace
今回主役を張る[ピース]。偉大なミュージシャンに敬意を表したという玉型や、タルの形をした智が魅力。5万9400円(ディグナハウスTEL03-5843-1612)
310
50年代の米国ヴィンテージに見られたシェイプをモチーフに製作。周年モデルのなかではもっとも普遍的でかけやすい。5万9400円(ディグナハウス)
311
[310]同様、50年代の米国ヴィンテージがソース。クラウンパントとは反対に、下辺が直線的な意匠を“シモカク”と呼ぶ。5万9400円(ディグナハウス)
※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
(出典/「2nd 2024年4月号 Vol.203」)
Photo/Ryota Yukitake Styling/Shogo Yoshimura Hair&Make/Miho Emori Text/Shuhei Takano
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