松浦祐也の埋蔵金への道。第1回「やっぱり、 あるとしか言えねぇ」

  • 2023.12.20

ひと癖あるクズ役を演じたら天下一品の俳優。映画『岬の兄妹』(片山慎三監督・2019年)で一躍話題に。2023年秋に劇場公開された『福田村事件』(森達也監督・2023年)では、柄本明の息子役を好演した松浦祐也が、一攫千金を夢見て「宝探し」する連載をファッション誌「2nd」でスタート! まずは自己紹介を兼ねて連載に至った経緯のご説明をば。

『宝探し』なんて興味がないヒトはいないテーマじゃないですか!

どーも、松浦祐也と申します。シガナイ肉体労働者でございます。縁があって、たまーにコチラのファッション誌『2nd』のデルモなんかをやらせていただいてます。ご存知ないでしょうが、アタシ、映画に出演してセリフを言ったり言わなかったりしてます。

俳優としての稼ぎだけでは生活が成り立ちませんので、撮影のない日々は、内装仕事をしております。兼業俳優のウダツが上がらねえオッサンです。齢42歳。不惑を越えながらも、日々惑わされつつなんとか生きております。収入が少ないので、家内では虐げられており、今朝もカミさんが、ガンガン掃除機をかけながら「少しは働け、この甲斐性なし!」と熱烈応援してくださったので、スゴスゴとおウチを逃げ出し、喫茶店でコレを書いている次第です。カナチイ役者よのお。

先日、『2nd』編集長になったウエダくんに、クソ美味い牛肉を食わせてもらいました。軽い気持ちで「ウエダくん、デルモで呼ぶだけじゃなくてさあ、アタシになんか書かせてよ」なんて言ったのがコトの始まりなのです。敏腕編集者のウエダくんは、「じゃ、マツーラさんの興味ある事を書いてくださいよ」なんて、お店自家製のキムチをつつきながら興味なさそうに返事をしてくれました。

ならばと早速、アタシが興味を持っている『催眠オ○ニー』の事を書こうかと提案したのですが、「マツーラさん、ウチはファッション誌なんで、そういう事は『熱烈投稿』とか『デラべっぴん』で書いてください」と却下されました。T・P・Oって難しい! オサレファッション誌に相応しいテーマを考えていたのですが、そもそもアタシが興味を持つ、全身グルグルに拘束されてひたすら亀○をストッキングでコスられる『○頭磨き』体験記や、寂れた競輪場でアツく叫ぶギャンブル紀行『競輪』なんてルポルタージュは、高尚な貴誌に相応しくないでしょう。さて、どうすっぺ?

そんな時に、ふと、昔、楽しみにしていた『徳川埋蔵金発掘』のテレビ番組を思い出しました。糸井重里さんが大型重機で赤城山を掘り返していた、あの番組です。『宝探し』なんて興味がないヒトはいないテーマじゃないですか!

ダメもとで編集長にお伺いを立てたら、元来、アタマのネジが一本多いんだか少ないんだか、とにかく他人とは違う視点を持った編集者のウエダくんが、「面白いんじゃないですか?」なんて意外にもノッてきたのであります。「宝探しをテーマに、書いてみます?」「おお、書く!」「ま、書いたら送ってくださいよ」「ウエダくんさ、連載がキッカケで、ホントにお宝を発見したらどうするよ?」「え? マツーラさん、本当に見つかると思ってんですか?」「そりゃ、やるからには見つけてーよ。お宝見つけたら売っ払って生活費に充てたい。カネが欲しいのよ」「ダメっすよ、文化財ですから」「だよなあ、バレたらヤベエよなあ」と、見つけてもいないのにガックリ。

すると、「……でもホントに見つけたら、連載やめちゃえばイイんじゃないすかね。書かなきゃバレないし、そもそもそんな連載を真剣に読むヒトいないですよ」と、ウエダくんが呟く。そんな発想なかったわ! 連載やめちゃえばバレねえか! さすが非常識編集者! やっぱ、それくらい肝が太くねえとな! 遺物・財宝・埋蔵金。そういった「お宝」をゲットし、アタシが億万長者になるトレジャーハント・ドキュメンタリーの連載が決まったのでした。見つけりゃ日々の労働から解放され、カネの心配をしなくてよくなるのだ!

まずはどんな「お宝」を目標にするか。これを決めにゃあなるめえて。アタシはイクのも早いが行動も早いので、早速、神保町の古本屋街へ資料探しに出ました。簡単に「お宝」関係の本が買えると思っていたのですが、数店舗回ってみても見つかりませぬ。むむむ。闇雲に本の山を探していたのですが、それじゃあダメで、「オカルト」とか「郷土・地方」って棚を探しているとたまーに、ひっそりとあるんですなあ。

ただ、どの「お宝」本も値段が高いのです。いまだに根強い「お宝」本ファンがいるのでしょうか? もちろんウエダくんは資料費なんて出してくれないだろうから、アタシの少ない手持ち資金から払います。こりゃあ欲しい本を選定し、予算との兼ね合いを考えなきゃなんねえ。ここにも資本主義の力学が作用しているのであります!

「お宝」本を満遍なく立ち読みして、内容を吟味し、お財布と相談の上、購入しましたヨ。まずは糸井重里著『あるとしか言えない』。これは、この連載のキッカケとなった赤城山徳川埋蔵金発掘の記録。テレビ放送でも扱えなかった記録を、詳細に書いている。値段も高いがキッカケを作ってくれた本だから、絶対的に購入。

次に畠山清行著『海底の秘法と埋蔵金』。トレジャーハント界の重鎮・畠山氏の書いた日本全国の海底に眠るお宝伝説の本。沈没船関係の内容が充実していて「お宝」入門編にゃちょうどいい。そして武田信玄埋蔵金の決定版! 泉昌彦著『信玄の黄金遺跡と埋蔵金』。日本の埋蔵金伝説を知る上で武田信玄の埋蔵金は、外せません。

4冊目は、あの赤城山で埋蔵金を探し続けている水野家3代目・水野智之著『実録 埋蔵金35兆円の謎』! 糸井さんの番組にも出演されていましたね、水野さん。なにしろ親子3代で掘り続けている先人の本は読まなきゃいけないでしょ! この4冊を「お宝」関係資料として購入したのだが、なんと1万円かかってしまった。マズイな。絶対にカミさんにバレちゃならねえ。相当に痛い出費だが、先行投資と思うしかない。まあ、これを参考に埋蔵金を発掘して、一発逆転すりゃあいいのだ。

ちなみに「お宝」関係を調べ始めると、自分が金持ちになった気がして、心が広くなる。細かい事なんかどうでも良くなってしまうのだ。これは「お宝探し」の良い効能かもしれぬ。「金持ち喧嘩せず」ってのはホントなんだ。頭が高いぞ、貧乏人!

次回からは、いよいよ本格的にお宝を探す準備をしなきゃならねぇ。このために購入した関連資料をもとに、「何のお宝を探すのか?」「どんな道具が必要なのか?」「限られた予算でなにが出来るのか?」、とにかく色々考えなければなりませぬ。不安だらけのこの連載がどうなっていくのか……。どうか、皆々さま、乞うご期待でごぜぇやす!

(出典/「2nd 2023年12月号 Vol.200」)

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