Adobe MAX
https://max.adobe.com/
注目の、動画を延長する『生成拡張(ベータ)』
Adobeは生成AIの活用に取り組んでおり、数多くのアプリケーションで生成AIを利用出来るようになってきた。生成AIのプロジェクトのもっとも先鋭的な部分は、実験場であるFireflyとして開発されている。Photoshopで扱うようなビットマップの画像を生成するFirefly Image 3 Model。 続いてIllustratorで扱うようなベクターデータを扱う Firefly Vector Model。 デザインを扱うFirefly Design Model。
そして、今、成果が表われつつあるのが動画を扱うFirefly Video Modelだ。
その中でも、今年のAdobe MAX最大の注目機能が、動画を延長する『生成拡張(ベータ)』だ。
成果物に使って不自然ではないのは2秒。2秒でも十分に効果
この機能は、編集している中で、音楽とのタイミングを合わせる時に、どうしても使ってる素材を延長したい……他の素材を入れられない、スローモーションにするわけにもいかない……という時に、動画を2秒まで延長できるというもの。
『2秒』というと短いようだが、動画編集においては少なくない時間だ。ご自分で映像を編集しない人は、一般に流通している編集された動画を見ていただきたい。案外と数秒の細かい動画が繋ぎ合わされている。1分も2分も同じ画角の動画が続いたら、その映像は案外に退屈に感じてしまう。だから、そこにおいては2秒は大きな時間なのだ。
しかし、機能として追加するなら、10秒でも20秒でも伸ばせた方がいいような気がする。プロフェッショナルフィルム&ビデオ製品マーケティングディレクターのミーガン・キーンさんによると、「その時間には多くの試行錯誤があり、先行して使用したユーザーの意見から決定した。私たちは実際に利用するクリエイターの意見を重視する。彼らの意見を聞いたところによると『「2秒が適当だろう」となった』とのことだ。
生成AIで動画を作れば何秒だって伸ばすことができるはずだ。しかし、2秒以上は不自然だったのだろう。
2秒なら、同じアクションを続けても不自然ではない。
たとえば、同じ方向に歩いていく。同じ姿勢でいる。同じ行動を続けている。しかし、2秒以上になると、何かしら不自然が生じてくる。
実際に生成された動画を見ると、『同じ動作を続ける』『影なども違和感なく生成させる』などクリエイティブに使えるクオリティだ。パルクールのようなアクションでも、2秒間違和感なく生成されていた。
2秒なら同じアクションでも不自然ではないが、10秒になると、次のアクションが必要になる。その際に、それまでのシーンから推測して次のシーンを作る生成 AIでは、不自然になるのだということだ。
別に、生成AIだけで動画を作ろうというわけではない。ただ、クリップが2秒伸びると便利だし、生産性を向上させる。だから2秒なのだ。ちなみに、音は10秒延長できる。もちろん、音楽は権利上生成できないし、会話も無理だ(次に何を話すべきなのかはわからない)。背景音、空間音などを伸ばせるということだ。
デジタルメディア事業部門代表のデイビッド・ワドワーニさんは「生成AIはツールであり、人の創造性を置き換えるものではない」と言っている。この点が、他の画像生成AIと大きく異なる点だ。
だから10秒ではなく、2秒なのだ。
ニュースなどに使われても、 CAIの機能で検証できる
もうひとつ、Adobeの生成AI利用においてケアしていることがある。
Adobeの生成AIの学習データはAdobeが権利を持ってるAdobe Stockと著作権フリーで公開されている画像のみである。学習データがクリエーターの権限を侵害しているということはない。
また、『コンテンツ認証イニシアチブ(Content Authenticity Initiative= CAI)』という取り組みによって、Adobeのアプリで生成AIを使ったクリエイティブについては、AIを利用したという記録が残る。
たとえば、先の『生成拡張(ベータ)』にしても、一般的なプライベートな動画や、ドラマなどのコンテンツで利用する分には問題はないが、ニュース映像となると、わずかでも問題だと思う。
CAIの機能を使えば、そのコンテンツに生成AIが使われているかどうかわかるので、検証可能だ。
アドビのアプリの機能として報道には使えないというわけではない。どんなクリエイティブをどうやって制作するかはあくまでユーザー側に委ねられている。しかし、生成AIを使って制作された映像かどうかは検証出来るようにする……というのがアドビのスタンスである。
定まってきたアドビのスタンス
アドビの動画生成AIにも、プロンプトだけから動画を生み出す機能はある。また、写真などから動画を生成することもできる。
しかし、これらは仕上がりからしても、成果物に使うというよりは、アイデア出しや、クリエイターに依頼する場合のコンテ的な使い方が想定されているようだ。
生成AI利用も数年経って、アドビ側のスタンスも定まってきたようだ。
(村上タクタ)
※渡航費、取材中の滞在費はアドビに負担いただいていますが、発信については報酬はありません。発信内容はThunderVoltと筆者の見解です。
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