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メディアの好敵手である広報の内実を書いた本『マスコミ対策の舞台裏』発表会に行ってきた

まるで、謝罪会見のような写真を冗談で撮ってみたが、日経BP社から発売された『マスコミ対策の舞台裏』という本の発表会に行ってきた。こちら、日経クロストレンドの『風雲! 広報の日常と非日常』という連載が書籍化されたもの。非常に面白いので、みなさんもぜひ読んでみていだだきたい。

著者のおふたりは元アップル広報と、元ソニー広報。広報というのは、企業や商品について世に知らしめる窓口になる人たちだが、謝罪会見のようなネガティブインパクトを最小限に留める仕事もする。本誌はそんな広報パーソン目線の本だ。

iPodやウォークマン発売にまつわる舞台裏のエピソードなども出てくるし、「日本の広報にとって、ジョブズはこういう人だった」という、本当にジョブズとやりとりした人としての話が出てくるのは、アップルファンとしても非常に楽しい。

マスコミ対策の舞台裏 役員からの電話で起こされた朝
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風雲! 広報の日常と非日常
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00157/

メディアと広報は、好敵手にして戦友

読者のみなさんには分かりにくい部分かもしれないが、我々メディアと企業の広報ご担当者の方は、表裏一体。一緒に戦う戦友であり、好敵手である。

お互いの立場は違うし、勝利条件も違うが、手を組まないと目的は達成できない存在でもある。

我々は『守秘義務契約書』というのを結んで、企業さんから新製品をお借りして記事を書いたりする。読者の方々の中には、そういう情報を「すっぱ抜くメディア」の方がエライという思いがあるようだが、実際にはそんなことをすると、長い時間をかけて新製品を開発し、広報戦略を立てて来ている企業に多大な迷惑をかけるし、ちゃんと契約を守ってる他のメディアの方からは総スカンを食う。もちろん、その企業からは2度と発表会に呼んでもらえなくなるし、製品も借りられなくなる(実際に、『バーで拾った未発表のiPhone』を返却せずに記事にしたUS Gizmodoとアップルは長年険悪で、ずっと発表会に呼ばれなくなったのは業界では有名な話)。

たとえば、「詳しくは言えませんが○月○日あたりのスケジュールを空けておいていただけると幸いです」と耳打ちされるとか、発売前の製品を事前に記事執筆のために貸してもらえるとか、超トップシークレットである発表前のプレスリリースの草稿……などを貸してもらえるのは、お互いに絶対に破られない信頼関係があるからで、その意味で親密な関係を構築できている広報とメディアは、戦場で背中を預けられる同盟国の戦友……という関係でもある。

ホントにお互いを裏切ったら、それぞれ2度と業界で仕事をできなくなるレベルの情報を預かる場合もあるワケだし。

『原稿確認させて』と編集部に言うと何が起こるのか?

一方、広報の方は、企業の現場の方々、トップの方々と戦いながら我々に情報を提供してくれていることもよく分かる。企業トップの方々が、「こういう記事を書かせろ」とか「あんな記事を出させるな」とか言うというのはよくあることのようで、その指示と我々メディアの間で板挟みになるのが広報だったりするわけだ。

たとえば、この本の冒頭の「『原稿確認させて』と編集部に言うと何が起こるのか?」という案件などまさにそうだ。

これはメディアや業界によって非常にグラデーションがあって、たとえば新聞やいにしえの雑誌などは、「『報道の自由』があるのだから、企業の思う通りに原稿をねじ曲げられるなどということは絶対にあってはならない」というのが矜持だったりする。私が、30年程前に最初に入ったバイク雑誌もそうで、「ダメなバイクはダメと書く」わけだから、出版前に広報に確認を取るなんてことは、非常に特殊な取材(ワークスマシンとか、企業秘密に関する取材など)以外ではあり得なかった。

しかし、昨今「確認なしに、記事を載せるなんてあり得ない」という風潮もあり、たとえば飲食店の紹介記事にしても、「確認なしに、記事を掲載された!」なんてSNS投稿が「ヒドイですね!」なんていう感想とともにバズったりする。

これは、そもそも原稿用紙に文章を書くのは特殊なプロの仕事だったのが、誰でもパソコンでそれなりの文章を書けるようになったというような事情もあると思う。手書きの原稿用紙の記事に文字数をカウントしつつ赤字を入れるなんて、シロウトには無理だったことが、パソコンのテキストデータだと気軽に修正できてしまうという問題でもあると思う。

で、基本的に我々はプロの執筆者だし、事実関係はともかく、シロウト考えで赤字を入れていただきたくない……というのが本音。うかつに赤字を入れると、てにおはがおかしくなったり文脈が崩れたりしてしまう。にもかかわらず、「赤字を入れるのが、私の権限であり仕事!」みたいな感じで原稿を真っ赤にして返してくる企業がある。これは大いなる勘違いだし、そういうことをしたらどうなるかは……ぜひ、この本をお読みいただきたい。

メディアの向こうで、広報がどういう対応をしているかが透けて見える好著

鈴木さんは、元アップル広報。現広報部長さんの下でずっと広報をされていたし、ジョブズとやりとりする場面もあった時代の人だ。私が、アップルの取材を始めた頃はまだいらっしゃったはずだが、私が駆け出しだったので、アップル時代はそんなに密にやりとりすることはなかった。

その後、NECレノボに移られてからはいろいろお世話になった。当時の社長のデビット・ベネットさんについてなど、いろいろ取材でお世話になった。そして、今年、アドビに移られ、さらに濃いやりとりがスタートしそうな予感だ。ボランティアで山梨のラグビーチーム『クリーンファイターズ山梨』の広報もされていたりして、広報と人生を楽しむ達人だ。

遠藤さんは、元ソニーの広報だが、その後独立してフリーランスの広報に。あまりこれまで注目されて来なかった『フリーランス広報』という仕事で新たな道を切り開き、活躍されている。独立した広報部門を持つことができない中小企業、スタートアップなどの広報を請け負われているのだが、筆者は特にスタートアップの広報としてお世話になっている。

どちらも非常に素晴らしいお人柄だし、文章も面白い。企業の広報、情報発信をしている人、メディア担当者はもちろん、特に企業広報に情報を発信して欲しい役員、社内の担当者の方などにぜひ読んで欲しい。また、ウェブメディアを読む人にとって、その記者の向こう側で対応している広報がどういう存在なのか、どういうやりとりをしているのか垣間見えるのはとても面白いと思う。

ヘリテージという出版社にいる筆者が、日経BPという他社の本をこれだけプッシュするのは奇妙。だが、もちろん理由がある(笑)。

これだけ、この本をプッシュしておけば、鈴木さんや、遠藤さんが担当される発表会でかならずや、筆者には良い席が用意されるだろう。ナイショの情報も先んじて教えてもらえるに違いない。我々メディアは、広報とそういう利害を共有しながら仕事をしているのである(笑)。

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(村上タクタ)

 

 

この記事を書いた人
村上タクタ
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村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
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