好きな理由は言葉にできない。
好きな度合いが深いほど、好きを表す言葉はどんどん離れていく。
趣味の雑誌は、それでも言葉(やイメージ)でその趣味の楽しさを表現しようと努め、読者の「好き」に寄り添っていく。
雑誌「趣味の文具箱」は、文房具の楽しさや大切さを語り続けている。ここでは「万年筆の魅力」について、趣味の文具箱が語ってきた言葉を、4回に分けて紹介しよう。
第3回は「万年筆とインクが生む筆致の味わい」について。
インク出が良好な万年筆は、万年筆そのものの重さだけで書くことができる。つまり、ほとんど筆圧がいらないペンなのだ。指や手、肩などの無駄な力を抜いて、筆圧をかけないで書くと、筆致は自然さを帯び、字は見やすくなり、字面がきれいになる。悪筆と思い込んでいる人(ぜんぜん悪筆ではないのに、そう思い込んでいる人がとても多い)は、ぜひ万年筆を手にして欲しい。万年筆を握って、紙面にペン先を落としてみると、インクが自然に流れ出し、手指の力が抜けて体も心もストレスフリーになる。のびのびとした心地良さは文字にもはっきりと現れてくる。
紙面の上で湧き出るようにインクが奏でる筆致は、油性ボールペンにも鉛筆にもない万年筆ならではのもの。弾力のある金ペン先なら線の抑揚もやわらかく、細やかに変化する。また紙にのったインクが乾いた後には濃淡が生まれ、筆致に独特の味わいが加わる。
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- 2024.11.07
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