ロック的、パンク的なマインドがあるポップミュージック

竹部:そういえば、サニーデイは『若者たち』から今年で30年だそうで。
渡邊:最初に曽我部と田中に会ったのは94年2月だから31年の付き合いだね。
竹部:どういうきっかけで関わるようになったんですか。
渡邊:僕が下北の251で開催してたイベントに曽我部と田中が来てて、終わったあとに2人と話をしたんだよ。2人はちょっと酔っぱらってたけど、そのときの曽我部の自信ありげで、少し不遜な態度も気に入ったし、しゃべり声を聴いてていい声だなあって思ったの。その時点でまだ曲も聴いてないけど、このバンド担当したいなって思ってた。
竹部:運命的出会いだったんですね。
渡邊:そのとき『COSMO-SPORTS ep』っていう、知り合いのインディーレーベルからリリースされていた彼らのCDをもらったんだよ。で、帰宅してすぐ聴いたらやはりめちゃくちゃよかったから、次の日に曽我部に電話して、「一緒にやりたいんだけど、どうかな?」って伝えた。
竹部:その関係が今でも続いているというのはすごいことですよね。そもそも渡邊さんは最初から音楽の制作者とかディレクターになりたいと思っていたんですか。
渡邊:まずレコード会社に就職したい、というのではなく、ミディで働きたかったんですよ。
竹部;そうでした。その話、聞いたことありましたよね。当時のミディは、坂本龍一、矢野顕子、大貫妙子、ムーンライダーズ(※リリースはなし)とかがいて、新しい時代の音楽を作っていた斬新なレコード会社でした。
渡邊:そこで働きたかったんだよね。ぼくの大学時代は85年から89年だったんだけど、89年はミディでは新卒採用をしてなかったの。
竹部:だからとりあえず、一般企業に勤めたんでしたよね。
渡邊:そう。なぜミディにこだわったかっていうと、ミディ的な音楽が好きだったということはもちろんだけど、大きいレコード会社だとやりたいことがパッと出来ないかもっていう漠然とした印象があって。
竹部:そうかもですね。
渡邊:それで90年にスタッフ募集があって、面接で社長の大蔵博さんに「いつか自分の手で、次の世代のムーンライダーズやカーネーションのような、自分が本当に良いと思えるバンドを発掘してリリースしていきたいです」っていきなり勝手なことを言ったんですよ(笑)。
竹部:そこでムーンライダーズなんですね。
渡邊:Xにも書いたけど、彼らがいなかったらこの世界に入る勇気はもてなかったな。あんなに勝手な音楽を作り続けてる彼らのようなバンドがこの世界にいるんだったら、自分もそういう精神でやりたい、やれるかもしれないっていう気持ちが生まれたんだよ。80年、中2の1月にライダーズを好きになったとき、良い音楽っていうのは、売れた、売れないは関係ない。チャートに入るだけが音楽じゃないんだってなって気づいたの。それはその前の真二にも思ったんだけどね。「ア・デイ」とか「マーチ」とか、鮮烈なデビュー当時より売れなくなってもいい曲はいいってね。順位をつけることはいい面もあるけど、順位をつけることによって、ヒット曲じゃない作品を下に置くみたいなイメージがつくのは違うだろうって。そんなことは絶対にないんだっていうのを、前ほど売れなくなっていた真二を聴いてぼくは思ってた。それは今も変わらないですよ。
竹部:それは渡邊さんが昔から言っていることですよね。
渡邊:とにかく自分がいいと思う人とその音楽を自分なりになんとか広めたいっていう気持ちがムーンライダーズで芽生えたんだよね。
竹部:ブレてないですね。それでミディ入社以降、ディレクターとしてエレクトリック・グラス・バルーン、サニーデイ・サービス、ゆらゆら帝国などを手掛けると。
渡邊:やりたかったことをやっただけなんだけど。それは今も変わらない。ムーンライダーズを初めて聴いたときに思ったことをやっているだけなんだよ。単純なことなんだけど。
竹部:ビートルズにしても世界一売れたバンドという絶対的な数字があるから、メジャーなバンドという先入観があるけど、一方で実験を繰り返していたマニアックなバンドということも言えるわけで、やりたいことをやった最初のバンドがビートルズなんでしょうね。
渡邊:うん、そうだね。売れる曲も作るけど、実験性の高い曲もたくさんあって。それは売れたからできたっていうのはあるだろうけど、ただ売れただけのバンドではないんだよね。ビートルズの幅広さ、奥深さはとてつもない発明だよね。ビートルズ以降のバンドは、「ビートルズ」というお手本があるわけだけど、ビートルズって、「ビートルズ」っていうお手本がないなかであの音楽を作っていたというのはやっぱりすごいね。
竹部:神様の配置、宇宙の法則としか言いようがないんですけどね。ビートルズの話をしていると結果的にすごい、偉大だっていうことになってしまうから、そうなると、個人的な思いとか思い出をくっつけていかざるをえない。今日も、事前に渡邊さんにビートルズの話をしましょうと言っただけなんだけど、これだけ膨らんでしまうのがおもしろい。まさかティーンエイジ・ファンクラブの話が出るとは思わなかったです。原田真二の話になるんだろうなとは思ったけど(笑)。
渡邊:ロックでありながら、キャッチーなメロディを携えてるっていうところがポイントだよね。ロック的、パンク的なマインドがあるうえでポップミュージックをやっている人が好きなんだろうな。それは好きな小説、映画、漫画、絵画なんかにも共通してることなんだけど、それはまた別の機会に(笑)。
竹部:ぼくも同じようなものを志向してますね。だから話が合うんだと思いますが。
渡邊:そうだよね。どうしてもそこなんだよ。こだわるっていうことでもないけど、好きになるのはそこなんだよ、本当に。
竹部:今回、原田真二の『ゴールデン☆ベスト』以来、二十数年ぶりに話し合ったわけですが、渡邊さんは本当に変わりませんね。
渡邊:さっきも言ったけど、同じ話をすることは大事なんだよ。
竹部:そうですね。自分が変わっていないことを確認できました。また数年後に同じ話をさせてください。今日はありがとうございました。
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