旅芸人でもあったヴォードビル役者が穿いた一足をイメージ。

「個人的には、黒い革は茶芯でないと面白くないと思います」と語るほど、茶芯ブーツに一家言ある鈴木さん。彼が企画、デザインした「ザ トゥーモンキーズ」のブーツは[ヴォードビル]というモデル名の通り、旅芸人でもあったヴォードビル役者の足元をイメージした1足だ。
ヴォードビルとは、映画がまだ普及する前にアメリカにおいて大衆の娯楽であった演劇のこと。1880年〜1920年頃のニューヨークなどの大都市には数多くのヴォードビル劇場があり、彼らは劇場から劇場へと旅を続けながら、歌や踊り、お笑いや手品などの様々な芸を披露していたのだという。
そんな時代背景を汲み取り、デザインされたこのブーツの特徴は、強く絞られたウエストやクラシックなキャップドトゥのデザイン。これらのデザインからは、ほんのりとドレッシーなムードも感じられる。
「ヴォードビルが一世を風靡した1910年頃は、自動車がまだ普及しておらず、道が塗装されていませんでした。そんな状況で街を歩くと靴の中に土やホコリが入ってきてしまうことから、足元はブーツが一般的だったのです。つま先が盛り上がったキャップや上下で切り替えた腰革などがその時代のブーツのデザイン的な特徴で、レザーは茶芯が一般的でした」と当時のデザインを踏襲して製作したのだという。
製法はグッドイヤーウェルトとマッケイを組み合わせており、さらにアッパーには当時もよく使われていたホースフロントを使用。レザージャケットにも多く使用されるホースフロントは足を包み込むようにしなやかで柔らかく、ワークブーツとはひと味違う柔らかな履き心地を実現している。
「例えば、エンジニアブーツは労働者の作業靴として作られたブーツですが、この時代のものは特定の職業の人に向けてではなく、“誰もが履くことのできる”という目的で作られています。シャフトも6インチと長すぎず、非常にトライしやすい1足です。今日はリネンキャンバスのワークパンツに合わせていますが、デニムやチノパンなどのクラシックなアメカジスタイルには何でも合います。また、ボリュームもやや抑えているので、比較的細めのパンツとも難なく合わせられるのも魅力ですね」

(出典/「Lightning 2025年3月号 Vol.371」)
Text/K.Minami 南樹広 Photo/Y.Amino 網野貴香
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