革から底付けまで各工程で徹底的に作り込んだ美しきミリタリーシューズ。
ヴィンテージのワークやミリタリーなどの無骨な靴をクローズアップし、日本のクラフトマンシップで再構築するジェラード ザ ブーテッド。
昨年にこけら落としとしてリリースされたエンジニアブーツに次いで、待望の新作であるUSN41サービスシューズがリリースされた。ファッション業界は基本的に春夏と秋冬でシーズンが分かれており、単純計算すると半年で新製品を作るタームとなっている。
しかしジェラードでは、フラッグシップ的な“ラストリゾート(伝家の宝刀)”のように、その時間軸にとらわれず、コストと時間を度外視し、徹底的に作り込みを行なっており、まさに当作にもそのこだわりが反映されている。
そもそもジェラード・ザ・ブーテッドを始めるきっかけとは?
「私たちの仲間に、Youtube『ブーツのミカタ』でお馴染みの鈴木理也さんが加入したことが、大きなきっかけになりましたね。ジェラードのオリジナルプロダクツを始めてから、かれこれ20年近く経ちますが、クロージングに関しては原材料からステッチ1本までこだわる意味合いがわかっても、靴作りに関して同じ感覚を持つには、まだまだ理解していくことがあると実感していました。
そんな時に鈴木さんと縁があって、一緒にモノ作りをすることになったんです。餅は餅屋じゃないですが、細かな点は鈴木さんに監修してもらうことにしたのですが、これが大正解だったと思います。モノ作りのファーストステップとなるデザインや元ネタとなるヴィンテージの選定に関しては自分が行い、クオリティコントロールの部分を鈴木さんにお願いするスタンスです。鈴木さんは、自身のブランドも手掛けているので、様々な実力派ファクトリーを熟知しており、デザインにとって工場を振り分けることもあります。
また同じレザーでも、洋服とシューズでは求めるものが違うので、よりクオリティを高めることができました。シューズやブーツはソールの底付けやライニングなど、分解しないと見えない箇所が多いので、靴作りを根底から理解する人だからこそこだわれる部分をこのモデルは突き詰められたと思います」
今回のUSN41サービスシューズは、後藤さんが語る通り様々な角度からこだわっているが、特筆すべきは1941年のネイビーラストを使っていること。実際に海軍の官給品を生産する際に使われていた希少なラストである。
「自分が持っていた’40年代の米国海軍のサービスシューズをベースにし、鈴木さんが所有している1941年のネイビーラストを木型として使っているんです。初期のサービスシューズのアッパーデザインの特徴であるやや尖ったつま先や6対の隠しハトメ、カカトのT字型の市革など再現しつつ、ステッチの運針までこだわりました。また肝となるガラスレザーは、あえてキップレザーを選んでいます。
一般的なガラスレザーに使われるステアハイドに比べて柔らかさやキメ細かさがあり、履き込んだ時に美しいシワ感が生まれ、式典などで使われていたサービスシューズのドレッシーな要素にもマッチしてくれます。’40年代のサービスシューズは、後年のモデルと比べるとよりドレッシーなテイストが強いので、キップで正解でした。
そして茶芯仕様となっているので、エイジングが楽しめるのもポイント。ドレス感を楽しみたい方は、あえてブラックのクリームでメインテナンスをしてもおもしろいと思いますね。
生産においては鈴木さんが革のタンナーから、製造を行うファクトリーまで適材適所で、この手のシューズを美しく仕上げてくれるプロたちを選定してくれたメイドインジャパン。ここまでこだわると次の製品を企画するのが億劫になるほど、完成度の高いプロダクツに仕上がりました(笑)」
’40年代のサービスシューズは、ヴィンテージ市場でも滅多に出てこないスペシャルピース。マイサイズでミントコンディションを探すのは至難の業。そんなアーカイブを超えるようなプロダクツに仕上がっているので、是非とも実物を手に取ってほしい。
「ジェラード・ザ・ブーテッド」は、サンプルを後藤本人が自ら履き込み、エイジングのチェックや細かな修正点を改善してから、初めて生産化される。ご覧のようにキップを用いたガラスレザーは、細かなシワ感が特徴である。8万8000円
パートナーである鈴木氏が所有している1941年製のネイビーラストの実物。1941年と刻印されていることがわかる。ドレスシューズのようなシャープなシルエットながらも、多様な足型に合うような設計となっている。
【DATA】
ジェラードフラッグシップストア
TEL03-3464-0558
http://jelado.com
(出典/「Lightning 2024年10月号 Vol.366」)