アメカジには欠かせないアイテム、ベースボール&トラッカーキャップのヴィンテージ市場とは?

アメカジの定番アイテムとして人気のベースボール&トラッカーキャップ。歴史も長く人気も高いアイテムにも関わらずそれほどスポットが当たらないベースボール&トラッカーキャップのヴィンテージシーンを覗いてみよう。

身近なアイテムにも関わらず 注目度の低い穴場アイテム。

「SOHWHAT VINTAGE」代表・加藤太郎さん|有名古着店を共に経験した加藤佳純さんとともに2019年に帽子と花瓶専門のユーズド・ヴィンテージショップをスタート。21年より下北沢に実店舗もオープン。今後のキャップのヴィンテージ市場の要となる期待の存在

アメカジに欠かせないベースボールキャップ、そしてトラッカーキャップなどのキャップ。ベースボールキャップとはその名の通り野球のユニフォームとして使用されてきたもので、現在の「ブルックリン・スタイル」(丸帽でツバのあるスタイル)が定着して100年以上の歴史を持つ。

一方、頭部後部がメッシュになっていることからメッシュキャップとも呼ばれるトラッカーキャップ。諸説あるが、1970年代頃から企業が宣伝のために自社のロゴや商品名を入れたキャップを長距離トラックドライバーなどに配布し、愛用されたことがその由来と言われている。

メッシュキャップで野球チームのロゴが入ったモノもあるし、全面コットン製のベースボールキャップスタイルで企業ロゴなどが入ったトラッカーキャップもあるので、デザインを見るのか素材を見るのかで区分も変わってくる。

いずれにしろ古い歴史を持つだけに、ヴィンテージ市場も熱いのかと思いきや、「定期的にアメリカに買い付けにも行きますが、50年代以前で状態の良いものはあまり見かけません」とは、下北沢にあるユーズド・ヴィンテージの帽子と花瓶の専門店「ソーワットヴィンテージ」の加藤太郎さん。

1918年に撮影されたオッタークリフスというラジオ局の野球チームの集合写真。やや浅く、ツバも小ぶりなクラシカルなスタイル。(出典:アメリカ国立公文書記録管理局)
1974年にカンザス州でトラックに積まれたトウモロコシを検査する場面に立ち会う1シーン。ファーマーかトラッカーかは不明だが男性がトラッカーキャップを被っている。リアルワークスイル。1918年に撮影されたオッタークリフスというラジオ局の野球チームの集合写真。やや浅く、ツバも小ぶりなクラシカルなスタイル。(出典:アメリカ国立公文書記録管理局)
アフリカ系アメリカ人選手としてMLBで活躍し、有色人種のメジャーリーグ参加の道を開いた伝説的選手ジャッキー・ロビンソン。1950年、ブルックリン・ドジャーズ在籍時の写真。ほぼ現在のスタイルと変わらない。(出典:アメリカ国立公文書記録管理局)
ベースボールキャップの原型となる帽子は1850年代以前から存在したが、1860年前後にアメリカのブルックリン・エクセシオールというチームが導入したことで広まったとされることから「ブルックリン・スタイル」ともいわれる。その後改良が重ねられ、1940年代にはおよそ現在の形となって定着した。デザインやカラーはもとより、ツバの広さや帽体の高さ、5 ~ 8枚接ぎ、ストライプ柄など時代やスタイルによってシルエットのバリエーションも多岐に渡る

日本はもちろん本場アメリカも意外とマーケットが未成熟。

「旧い時代のベースボールキャップはファッションというよりもスポーツ用品、つまり消耗品として使われていたせいか、状態のいいモノはほどんど見たことがありません。状態やサイズもいいとなると、’60年代以降という印象です」

旧い時代のモノが少ない背景には、アメリカには “キャップは消耗品” という感覚が強いのか、他のアイテムのようにヴィンテージ市場が確立されていないことが一因ではと加藤さんは推測する。

「アメリカに買い付けに行っても、キャップは古着のオマケ的な感じで専門に扱っている人もいないし、資料的なモノもないので、どのメーカーのコレがレアでいくらで流通しているとかもハッキリわからないこともあります」

「ソーワットヴィンテージ」でも仕入れ値や人気の度合いで価格が付けられているが、将来的には一ジャンルとして確立するように深めていきたいと話す。

これだけ歴史があるにも関わらず市場が未開拓ということは、今後注目される可能性は大きい。野球好きはもちろん、トラッカーキャップなら企業ロゴやアーティストモノなどデザインも豊富だから、Tシャツよりもさりげなく個性を主張する小道具として取り入れてみてはいかがだろうか。

アジャスターの形状も年代判別のポイント。

後部のサイズ調節用のアジャスターも1990年代頃までがスナップバッグ(現行品もあり)で、2000年代頃にマジックテープ、さらに2010 年代以降になると金属製のストラップバックと変遷を辿る。

ラベルやメーカーも見どころのひとつ。

MLBの公式ーカーといえば「ニューエラ」だが、MLBの公式キャップには証明するタグが付く。また、アメリカ製だと「Made in U.S.A.」のタグが付くことが多い。メーカーは非常に多岐に渡り、「COBRA」「OTTO」「NISSIN」「DALLAS CAP」などが知られるところだが、資料が少なく詳細は不明なことが多い。

市場価格を知る!

アメリカでもキャップは古着店の一角で売られる感じで、ジーンズやアロハシャツのように年代やメーカー別にまとめた資料本も存在しておらず、明確な価格設定がないというのが現状のようだ。日本も同様で、お店や個人売買でも値段はバラバラ。注目度が高まれば今後は整備されていくだろうが、現状ではサイズとデザイン、状態が自分の好みと合うかを見極めながら購入するしかないようだ。

スウェーデンの自動車メーカー・SAABのロゴ入りトラッカーキャップ。

自動車メーカーとしては2011年に破産したが、会社は航空機・軍需メーカーとして孫座億している。1980年代。1万6900円

テキサス州シュガーランドの市章入りトラッカーキャップ。

テキサス州にある都市・シュガーランドの市章が入ったワッペン付きのトラッカーキャップ。1959とはシュガーランドが一般法市となった年。1980年代。1万2900円

この記事を書いた人
Lightning 編集部
この記事を書いた人

Lightning 編集部

アメリカンカルチャーマガジン

ファッション、クルマ、遊びなど、こだわる大人たちに向けたアメリカンカルチャーマガジン。縦横無尽なアンテナでピックアップしたスタイルを、遊び心あるページでお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

“黒のコロンビア”って知ってる? オンオフ自在に着回せる、アップデートされたコロンビアの名品を紹介!

  • 2025.10.21

電車や車といった快適な空間から、暑さや寒さにさらされる屋外へ。都市生活は日々、急激な気温差や天候の変化に直面している。実はその環境こそ、自然で磨かれた「コロンビア」の技術が生きる場だ。撥水性や通気性といったアウトドア由来の機能を街に最適化し「コロンビア ブラックレーベル」は、都市生活者の毎日を快適に...

いつものトラッドがこんなにも新鮮に!ジャパンデニムの雄エドウインが提案する、クラシックな黒

  • 2025.10.18

“黒”という色はモードファッションとの結びつきが強い。故にトラッドスタイルとの親和性は低いように思われる。しかし、エドウインの提案する“黒”は実にクラシックである。 クラシックなトラウザーズが黒とトラッドを身近にする ブレザー、ボタンダウンシャツ、スラックス……。アメリカントラッドを象徴するアイテム...

2nd

良質な素材感とシルエットが美しい、東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。

  • 2025.10.17

東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。白黒の世界で際立つ良質な素材感とシルエットをご堪能あれ。 質感、シルエット、美しいミリタリー&ワークウエア 米軍同様のへビーナイロンツイルを使ったMA-1。軽量性・保温性・防寒性を備えたクライマシールドの中綿でスペックは現代的だが、エイジング加工によってヴ...

【土井縫工所×2nd別注】日本屈指のシャツファクトリーが作る、アメトラ王道のボタンダウンシャツ発売!

  • 2025.10.07

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! トラッド派には欠かせない6つボタンのBDシャツ「6ボタン アイビーズB.D.シャツ」 アメリカントラッドを象徴するア...

進化と伝統、どちらもここに。「L.L.Bean」のアウトドアと日常の垣根を超える名品たち。

  • 2025.10.17

100年以上にわたり、アウトドアと日常の垣根を越える名品を生み続けてきた「エル・エル・ビーン」。誠実なモノづくりと顧客への真摯な姿勢は、現代まで脈々と受け継がれている。伝統を守りながらも進化を恐れない、その精神こそが、今も世界中の人々を魅了し続ける理由だ。 愛される理由は機能美とその誠実さ 100年...

Pick Up おすすめ記事

いつものトラッドがこんなにも新鮮に!ジャパンデニムの雄エドウインが提案する、クラシックな黒

  • 2025.10.18

“黒”という色はモードファッションとの結びつきが強い。故にトラッドスタイルとの親和性は低いように思われる。しかし、エドウインの提案する“黒”は実にクラシックである。 クラシックなトラウザーズが黒とトラッドを身近にする ブレザー、ボタンダウンシャツ、スラックス……。アメリカントラッドを象徴するアイテム...

【土井縫工所×2nd別注】日本屈指のシャツファクトリーが作る、アメトラ王道のボタンダウンシャツ発売!

  • 2025.10.07

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! トラッド派には欠かせない6つボタンのBDシャツ「6ボタン アイビーズB.D.シャツ」 アメリカントラッドを象徴するア...

【J.PRESS×2nd別注】こんなイラスト、二度と出会えない。 著名イラストレーターとのコラボスウェット。

  • 2025.10.21

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【J.PRESS×2nd】プリントスウェットシャツ【AaronChang】 アメリカにある優秀な8つの大学を総称して...

進化と伝統、どちらもここに。「L.L.Bean」のアウトドアと日常の垣根を超える名品たち。

  • 2025.10.17

100年以上にわたり、アウトドアと日常の垣根を越える名品を生み続けてきた「エル・エル・ビーン」。誠実なモノづくりと顧客への真摯な姿勢は、現代まで脈々と受け継がれている。伝統を守りながらも進化を恐れない、その精神こそが、今も世界中の人々を魅了し続ける理由だ。 愛される理由は機能美とその誠実さ 100年...

“黒のコロンビア”って知ってる? オンオフ自在に着回せる、アップデートされたコロンビアの名品を紹介!

  • 2025.10.21

電車や車といった快適な空間から、暑さや寒さにさらされる屋外へ。都市生活は日々、急激な気温差や天候の変化に直面している。実はその環境こそ、自然で磨かれた「コロンビア」の技術が生きる場だ。撥水性や通気性といったアウトドア由来の機能を街に最適化し「コロンビア ブラックレーベル」は、都市生活者の毎日を快適に...