いま再びのHIGH LARGE LEATHERS。日本古来の技法と革ジャンの“邂逅”。

2015年、彗星の如く出現したHIGH LARGE LEATHERS。アメリカンカジュアル界に空前の“Gジャンタイプブーム” を巻き起こし、その後、ひっそりと息を潜めてしまった伝説のブランドだ。あれから7 年。いま、彼らが再び動き出す。「日本の伝統技法」という武器を携えて——。

ハイラージで日本の伝統技法を世界に広めたい。

2015年にハイラージレザーズを立ち上げたのは、現在、ファインクリークレザーズの代表を務める山﨑佳克さん。なぜいま、ハイラージレザーズを再び始動させるのか、その真相を探るべく、山﨑さんとは、ブランドを始める前からの友人である本誌レザー担当モヒカン小川が話を伺った。

「HIGH LARGE LEATHERS」代表・山﨑佳克さん|テレビのスタイリストを経験した後、2015年にハイラージレザーズを立ち上げる。現在ではファインクリークレザーズやファインクリークアンドコー、MOSSIRなど多くのブランドを手掛ける
ライトニング編集部・モヒカン小川|今まで数えきれないほどの革ジャンに袖を通してきた、自称“革の伝道師”。ハイラージレザーズ時代の革ジャンも数着所有しており、今回もヌバック襟仕様の新作モデル「ムーア」を狙っている

小川 単刀直入に聞くけど、なぜ今ハイラージを始めたの? ファインクリークに不満でもあるわけ(笑)?

山﨑 本当に単刀直入ですね(笑)。不満はないですよ。もともと自社工場を作った時に、心機一転の意味を込めてファインクリークレザーズを立ち上げて、それ以来突っ走ってきたわけですが、ずっと、自分の原点であるハイラージを復活させたい、と思っていたんです。

ただ、ファインクリークと同じことをしても、何の意味もない。ハイラージで何が出来るかを模索していたんです。そんな時にコロナで世界中が大変なことになりました。毎年、海外の展示会を回っていたんですが、コロナでそれも出来なくなってしまった。海外で待つファンのために、ハイラージで何か出来ないだろうか、そう思うようになったんです。

小川 なるほど。コロナ前は、毎年海外を飛び回っていたもんね。俺もよく取材と称して付いていってたし(笑)。

山﨑 懐かしいですよね(笑)。

小川 今回、ハイラージがリリースするモデルって、藍染めだよね? ハイラージで藍染めのモデルを作ろうと思ったってこと?

山﨑 これが本当に偶然なんですが、たまたま家族で奄美大島に行った時に、染色工房の「金井工芸」さんに立ち寄ったんです。そこで、奄美大島に古くから伝わる「泥染め」を初めて見たんです。

小川 それって「大島紬」に使われる技法だよね。

山﨑 そうです。車輪梅という植物を煮出した液でまず染めて生地にタンニンをよく染み込ませ、その後に泥で染めるんです。これ、本当に水溜りみたいなところで染めるんですよ。奄美大島の泥には鉄分が多く含まれているので、タンニンと化学変化を起こして黒くなっていくんです。

金井工房裏の「泥田」で泥染めの工程を行う。奄美大島の泥には鉄分が多く含まれているため、生地に染み込ませた車輪梅のタンニンと鉄分が化学変化を起こし、黒くなる

小川 天然の草木で黒く染めるのはすごく難しいから、昔から重宝されてた技法なんでしょ? 本で読んだことがある。

山﨑 そうなんです! それを見た時に感動しちゃって、思わず金井さんに聞いたんです。「革も染められますか?」。そしたら「もちろんです」だって。

小川 革も泥染めってできるんだ。

山﨑 僕もビックリでした。でも泥染めで革を染められると知った時に、「これだ」と思ったんです。ハイラージレザーズは、日本の伝統技法を取り入れて、日本でしか作れないモノを世界に発信していこうと。

小川 金井さんとの出会いは、まさに運命的だね。

山﨑 本当に感謝しかないですね。ハイラージ復活の第一作目は、やはりGジャンタイプを作りたかったんです。そのため藍染めに挑戦したかったんですが、ただ青いだけの革は嫌だったんです。そこで金井さんと相談して、藍で染めた後に、泥染めで黒を足していく「藍泥」という手法を使いました。そのおかげで、デニムのような深い色合いを、革で実現できたんです。

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HIGH LARGE LEATHERS OKLAHOMA CITY[Indigo-Mud Dye]

フルベジタブルタンニンで鞣した2.3㎜の肉厚な馬革を、奄美大島の手法「藍泥」で染め上げた渾身の一着。この「藍泥」の手法は、非常に手間がかかる方法で作られている。まず下地として藍染めを10数回繰り返し、その後に車輪梅を煮出した「テーチ木染料」で10回ほど染め、その後に「泥染め」を施し、また10回ほど「テーチ木染料」で染めて、その後「泥染め」……と繰り返していく。藍色に泥染め特有の黒味が加わり、深海のような青を実現した。49万9950円

ファーストタイプのデニムジャケット がモチーフのオクラホマシティ。背 面はヴィンテージファン垂涎のTバ ック仕様となっている
オクラホマの草原を走り回る馬を デザインしたハイラージレザーズのラベル。この伝説のブランドに再び出会える我々は幸せだ
HIGH LARGE LEATHERSの刻印が入ったオリジナルボタン。錆や 擦れなど鉄製ボタンならではのエイジングも堪能できる
オクラホマシティはブランケット付きの仕様。ヴィンテージを徹底的に解析し作られたブランケットは程よく目が詰まり、防寒性も高い
ファーストタイプの象徴的なディテールであるシンチバックも忠実に再現。経年により、レザー特有のパッカリングが出現する

[Anilline Dye]

フルベジタブルタンニン鞣しの2.3㎜の馬革を使用し、こちらは藍泥ではなく、アニリン染料で仕上げたモデル。革本来の表情を味わうことができ、極上のエイジングが楽しめる。22万4950円

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HIGH LARGE LEATHERS MOORE [Anilline Dye]

かつてハイラージレザーズに存在し、カルト的な人気を誇った知る人ぞ知るモデル「ムーア」が、今回復活した。襟の雰囲気をヌバックで再現するなど、往年のカウボーイジャケットのディテールをトレースしながらも、袖付けにライダースのパターンを採用し、細かな部分でもモディファイが施され、着用時のシルエットも非常に美しい。2.3㎜厚のフルベジタブルタンニン鞣し・アニリン仕上げの馬革を採用し、うねりの大きいジャバラが楽しめる。22万4950円

デニムジャケットの意匠を再現しつつ、スタイリッシュに仕上げたハイラージレザーズのムーア。シャープなシルエットを実現した
カウボーイジャケットをイメージしたハイラージレザーズのオリジナルボタン。擦れや錆、傷など、ボタンのエイジングも見どころ
襟は表面を起毛させたヌバック仕様となる。着込むうちに襟が擦れ、起毛部分が潰れてくることで独特の光沢感が出現してくる
目が詰まったしっかりした質感で、 防寒性も高いオリジナルブランケット。ヴィンテージを徹底的に分析して、忠実に作られている
オリジナル同様、サイドアジャスターには猫目ボタンを使用。細部にわたり、ヴィンテージファンも納得のディテールが楽しめる

[Indigo-Mud Dye]

ムーアにも、藍泥仕様をラインナップ。リアルなデニムのような藍泥特有の深い藍色と、襟のヌバックのブラウンのコントラストが美しい。特有のエイジングも堪能できる。49万9950円

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これらの商品は、期間限定受注生産となっており、23年3月~4月お届けの予定だ。現在予約を受け付け中なので、気になる方は是非サイトを確認していただきたい。

【問い合わせ】
MASPHALTO
Tel.03-6383-4006
http://www.masphalto.jp/

(出典/「Lightning 2022年10月号 Vol.342」)

この記事を書いた人
モヒカン小川
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モヒカン小川

革ジャンの伝道師

幼少期の革ジャンとの出会いをきっかけにアメカジファッションにハマる。特にレザー、ミリタリーの知識は編集部随一を誇り、革ジャンについては業界でも知られた存在である。トレードマークのモヒカンは、やめ時を見失っているらしい。
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