ハイラージで日本の伝統技法を世界に広めたい。
2015年にハイラージレザーズを立ち上げたのは、現在、ファインクリークレザーズの代表を務める山﨑佳克さん。なぜいま、ハイラージレザーズを再び始動させるのか、その真相を探るべく、山﨑さんとは、ブランドを始める前からの友人である本誌レザー担当モヒカン小川が話を伺った。
小川 単刀直入に聞くけど、なぜ今ハイラージを始めたの? ファインクリークに不満でもあるわけ(笑)?
山﨑 本当に単刀直入ですね(笑)。不満はないですよ。もともと自社工場を作った時に、心機一転の意味を込めてファインクリークレザーズを立ち上げて、それ以来突っ走ってきたわけですが、ずっと、自分の原点であるハイラージを復活させたい、と思っていたんです。
ただ、ファインクリークと同じことをしても、何の意味もない。ハイラージで何が出来るかを模索していたんです。そんな時にコロナで世界中が大変なことになりました。毎年、海外の展示会を回っていたんですが、コロナでそれも出来なくなってしまった。海外で待つファンのために、ハイラージで何か出来ないだろうか、そう思うようになったんです。
小川 なるほど。コロナ前は、毎年海外を飛び回っていたもんね。俺もよく取材と称して付いていってたし(笑)。
山﨑 懐かしいですよね(笑)。
小川 今回、ハイラージがリリースするモデルって、藍染めだよね? ハイラージで藍染めのモデルを作ろうと思ったってこと?
山﨑 これが本当に偶然なんですが、たまたま家族で奄美大島に行った時に、染色工房の「金井工芸」さんに立ち寄ったんです。そこで、奄美大島に古くから伝わる「泥染め」を初めて見たんです。
小川 それって「大島紬」に使われる技法だよね。
山﨑 そうです。車輪梅という植物を煮出した液でまず染めて生地にタンニンをよく染み込ませ、その後に泥で染めるんです。これ、本当に水溜りみたいなところで染めるんですよ。奄美大島の泥には鉄分が多く含まれているので、タンニンと化学変化を起こして黒くなっていくんです。
小川 天然の草木で黒く染めるのはすごく難しいから、昔から重宝されてた技法なんでしょ? 本で読んだことがある。
山﨑 そうなんです! それを見た時に感動しちゃって、思わず金井さんに聞いたんです。「革も染められますか?」。そしたら「もちろんです」だって。
小川 革も泥染めってできるんだ。
山﨑 僕もビックリでした。でも泥染めで革を染められると知った時に、「これだ」と思ったんです。ハイラージレザーズは、日本の伝統技法を取り入れて、日本でしか作れないモノを世界に発信していこうと。
小川 金井さんとの出会いは、まさに運命的だね。
山﨑 本当に感謝しかないですね。ハイラージ復活の第一作目は、やはりGジャンタイプを作りたかったんです。そのため藍染めに挑戦したかったんですが、ただ青いだけの革は嫌だったんです。そこで金井さんと相談して、藍で染めた後に、泥染めで黒を足していく「藍泥」という手法を使いました。そのおかげで、デニムのような深い色合いを、革で実現できたんです。
HIGH LARGE LEATHERS OKLAHOMA CITY[Indigo-Mud Dye]
フルベジタブルタンニンで鞣した2.3㎜の肉厚な馬革を、奄美大島の手法「藍泥」で染め上げた渾身の一着。この「藍泥」の手法は、非常に手間がかかる方法で作られている。まず下地として藍染めを10数回繰り返し、その後に車輪梅を煮出した「テーチ木染料」で10回ほど染め、その後に「泥染め」を施し、また10回ほど「テーチ木染料」で染めて、その後「泥染め」……と繰り返していく。藍色に泥染め特有の黒味が加わり、深海のような青を実現した。49万9950円
[Anilline Dye]
フルベジタブルタンニン鞣しの2.3㎜の馬革を使用し、こちらは藍泥ではなく、アニリン染料で仕上げたモデル。革本来の表情を味わうことができ、極上のエイジングが楽しめる。22万4950円
HIGH LARGE LEATHERS MOORE [Anilline Dye]
かつてハイラージレザーズに存在し、カルト的な人気を誇った知る人ぞ知るモデル「ムーア」が、今回復活した。襟の雰囲気をヌバックで再現するなど、往年のカウボーイジャケットのディテールをトレースしながらも、袖付けにライダースのパターンを採用し、細かな部分でもモディファイが施され、着用時のシルエットも非常に美しい。2.3㎜厚のフルベジタブルタンニン鞣し・アニリン仕上げの馬革を採用し、うねりの大きいジャバラが楽しめる。22万4950円
[Indigo-Mud Dye]
ムーアにも、藍泥仕様をラインナップ。リアルなデニムのような藍泥特有の深い藍色と、襟のヌバックのブラウンのコントラストが美しい。特有のエイジングも堪能できる。49万9950円
これらの商品は、期間限定受注生産となっており、23年3月~4月お届けの予定だ。現在予約を受け付け中なので、気になる方は是非サイトを確認していただきたい。
【問い合わせ】
MASPHALTO
Tel.03-6383-4006
http://www.masphalto.jp/
(出典/「Lightning 2022年10月号 Vol.342」)
Text/T.Ogawa 小川高寛 Photo/A.Kuwayama 桑山章
関連する記事
-
- 2024.11.21
この冬の相棒必至の革ジャン6選! スポーツジャケット編
-
- 2024.11.20
この冬の相棒必至の革ジャン7選! ライダースジャケット編
-
- 2024.11.15
経年変化とカスタムで、自分だけの一着を作る悦びを味わってみないか?
-
- 2024.11.12
いろんな革製品をゴシゴシしたくなる革専用ブラシ。