米国流儀のオールドスクールカスタム4選。

  • 2023.02.21  2023.02.13

2022年12月4日、横浜ホットロッドカスタムショー2022(以下HCS)が開催された。ムーンアイズが主催するHCSは日本のビルダーにとっての最高峰の舞台であり、まだ日本にカスタムカルチャーが根付いていない頃から海外ゲストを招待して日本と海外のシーンをクロスオーバーさせるなど、日本のカスタムカルチャーの成長には欠かせない存在としてシーンと共に歩んできた。

そして、30周年を迎える今回は西海岸最大のオールドスクールチョッパーショー『BORN FREE』のアワードバイク/ビルダーを招待する予定だったが船の運行が遅れ、バイクがショーに間に合わないという事態に! 本国のリアルなチョッパーを楽しみにしていたファンも多いはず。というわけで、この時のショーでは展示されなかった幻のゲストバイクを紹介する。この4台は次回のゲストバイクとして改めて招待する予定なので、会場で見られるのが今から楽しみだ。

1.1948 H-D Panhead “The Light”|チョッパーの本質を物語る、走るショーバイク。

Built by Metallhaus Jake Wreesman

BORN FREE2021にて、招待ビルダー30人の投票で決めるビルダーズピックを獲得したパンヘッド。ビルダーのJake Wreesmanが狙ったテーマは極めてシンプル。「エレガントかつやり過ぎていない、走れるショーチョッパー」である。

ダウンチューブの形状が特徴的なストレッチフレームは、’54年をベースとしたものだがパテを用いずクロームで仕上げたメタルワークスキルが光るディテールだ。ワンオフのスライダーを備る35φのロングフォークに始まり、フレームの内側を通したエキゾーストや、オリエンタルブルーでペイントしたワンオフのエクステリア、F21-R19インチホイールのセットアップなど、奇を衒うことなく一貫したテーマのもとにスタイリッシュなフォルムを追求。そして、2021年8月にBORN FREEにエントリーして、今回日本に到着するまでに6000マイル以上を走行するリアルに走れるショーバイクなのだ。

ダウンチューブに面がクロームフレームの存在感を強調。エンジンは、ストック排気量の1200㏄のまま、耐久性を向上させている
マフラーは極限の細さを実現するためフレームの内側を通過。跳ね上がったリアフェンダーに合わせたエンドのデザインにも注目
ワッセルピーナッツタンクを加工したタンクは、4Qのマックス・シャーフによる深いオリエンタルブルーのペイントでフィニッシュ

2.1939 H-D OHV/ULH|エンジン設計から始まるフルスクラッチ。

Built by CTNEWMAN Engineering Christian Newman

BORN FREE2021の頂点に輝いたのは、ニューヨークの鬼才、Christian Newmanがエンジンから製作したフルクスラッチ。最大の見所はサイドバルブのULHをベースに、自ら設計したシリンダー、ヘッドを組み合わせOHV化&8バルブ化したスペシャルエンジンだ。

さらにツインキャブ、ツインターボを装備。ワンオフのステンレスフレームはオイルラインの役割を兼ね、クレードルにオイルクーラーを内蔵。チョッパーのスタンダードなシルエットを逸脱することなく、ビルダーのクリエイティブなアイディア、そして、それを具現化する驚異的なスキルが遺憾無く発揮された1台だ。

サイドバルブをOHV機構へ変更。さらに、旧いH‐Dのレーサーに採用された8バルブのディテールも独自で製作。トップがオープンなため、ロッカーアームが剥き出しになっている
エキゾーストはシート下でツインターボに接続し、フレームの内側を通ってエンドに繋がる。オイルタンクはリアフェンダーと1ピースで設計されている
リアレッグがアールを描くボトムリンク式のナローなスプリンガーフォークもビルダーのワンオフ。ヘッドライトまでステンレスで製作したハンドメイドだ

3.1951 TRIUMPH Pre-Unit “Time Warp” |60sカスタムを標榜するピリオドコレクト。

Built by The Official Old Trump Tom Heavey

ノースカロライナに拠点を構えるオールドブリティッシュ専科、The Official Old TrumpのTom Heaveyが、’60sのトライアンフのショーバイクをイメージしたマシンネーム通りのピリオドコレクトで、見事BEST IN SHOWを獲得。世界規模のオールドスクールチョッパーの祭典と言えるBORN FREEでトライアンフがベストに選ばれることは初の快挙である。

奇抜なギミックは皆無と言えるほどにシンプルだが、緻密な計算のもとに贅肉を極限まで削ぎ落とし、スタイリッシュに絞り込まれたフォルムは圧巻。さらに、フレームやエクステリアなどに落とし込まれた見る角度によって表情を変えるIMPERIAL HOUSEのキャンディペイントもこのマシンの重要なアイデンティティだ。

ホワイトレザーのシートはワンオフで製作。レッドのペイントやシートの形などからもEd Rothが製作した〝Mega Cycle hauler〞を連想させる
エンジンは別体650㏄。カバーに溶接したフィンや大きなフランジなどデザインの統一感を持たせたエンジンがコンパクトな車体の中で存在感を放つ
外装やフレームはアップルレッドをイメージしたキャンディペイント。スキャロップや模様が光の具合によって濃淡を変化する味わい深いフィニッシュだ

4.1956 H-D KHK #The Grape Guarantee”|スキニー&シャイニーを実現するアイアンスポーツ。

Built by Erotic City Choppers David Polgreen

2022年のビルダーズピック1位に輝いたのは日本でも馴染みの深いDavid Polgreenが製作したシャイニーな56年KHK。クロームメッキで仕上げた純正モディファイのスイングアームフレームと、Harpoonによるパープル基調のカスタムペイントが落とし込まれたワンオフのエクステリアが美しいコントラストを演出。

’60sのトライアンフからインスパイアされたプロジェクトだけに、タンクやフェンダーをコンパクトに作るだけでなく、フレームのリアセクションをナロードし、リアサスペンションをシングル化することによって実現したスキニーなフォルムに、ビルダーのスキルとバランス感が光る。

タンクは両サイドにスクープを設けたナローかつ立体感を強調する造形。キャンディの下地の独特の質感がスパイスとなるカスタムペイントはHarpoonが担当
クローム仕上げのスプリンガーに特徴的なデュアルヘッドライト、20インチホイールをセット。スプールハブはCNCマシニングで製作されたワンメイド
リブ付きのカバーをワンオフで製作し、サスペンションをシングル化したリアセクション。ナンバーはプライマリー後ろに設置

【DATA】
ムーンアイズ
TEL045-623-5959
https://yokohamahotrodcustomshow.com/

※情報は取材当時のものです。

(出典/「CLUTCH2023年2月号 Vol.89」)

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