制式採用された栄誉ある時計。海軍に支給されたミリタリーウォッチの魅力とは?

ヴィンテージウォッチの分野でも極めてマニアックなミリタリーウォッチ。国内随一の品揃えを誇る名店キュリオスキュリオの萩原秀樹氏への取材を交え、海軍に支給されたモデルの魅力について解説する。

王道のダイバーズから幻のモデルまで見つかる。

「HIDEKI HAGIWARA」萩原秀樹さん|ミリタリーウォッチに特化したヴィンテージ専門店として内外で定評があるキュリオスキュリオのオーナー。確かな知識と豊富な経験に多くの時計コレクターが信頼を寄せている

ヴィンテージウォッチの世界において、海軍が使用していたミリタリーウォッチとは、どのような特徴や魅力があるのか。このジャンルの第一人者であるキュリオスキュリオの萩原秀樹さんは、次のような見解を述べた。

「海軍の腕時計となると、やはり王道はアメリカ軍でしょうか。この1年間で、BENRUSのタイプⅠとタイプⅡが二倍近い価格で取引されるようになりました。人気の理由は、ブランドロゴすら入らない文字盤、マットな質感に仕上げたケースなどに見られる、軍用モデルらしいストイックなデザインにあります。ワンピース構造のケース設計なども面白いのですが、スペック云々よりも見た目に惹かれる人が多いと思います。それなりに数があるので、根気よく探せば見つかるはずです」

その一方で、萩原さんが最近手に入れたというIWCのダイバーズウォッチは、これらと一線を画す魅力を放っている。

こちらのクロノグラフ3本はすべて萩原氏の私物。いずれのモデルも希少性がずば抜けて高いコレクターズアイテムであり、入手は極めて困難であると言わざるを得ない。右から順に、LEMANIA シリーズ3(1960年代製造、オーストラリア海軍)、LEMANIA シリーズ2(1960年代製造、イギリス海軍潜水艦乗務員用)、HANHART タキテレ(1940年代製造、ドイツ海軍砲撃部隊)

「ポルシェデザインが手掛けたオーシャン 2000の軍用バージョンは全部で7種類あり、ベゼルが黒で分針が赤であることが主な特徴です。こちらのRef.3519は、西ドイツ海軍のマインダイバーのために作られた世界で50本しか存在しない超レアモデルで、文字盤にはトリチウムを意味する3Hのマークが入ります。2000mまで潜水できる完璧な防水性能に加え、チタンケースなので軽やかな付け心地で使いやすいですね」

ダイバーズウォッチ以外にもクロノグラフなどの選択肢があることも海軍の腕時計の魅力であり、奥行きだと言える。

「クロノグラフも面白いモデルが見つかります。パーツやディテールにはすべて意味があって、夜光付きの黒文字盤はパイロット用、潜水艦乗務員用ならコントラストを効かせた夜光なしの白文字盤と、用途に応じて分けられています。ダイヤルの表記やケースバックの刻印も同じようなことが言え、どこの軍隊なのかを識別できるようになっています。

ヴィンテージに該当する時代の腕時計については、エリート部隊に支給されていたことから、特殊な仕様や製造本数が少ないモデルが存在します。あまりも希少であることから、実機を見ることさえ難しいモデルも少なくありません。僕自身、何十年も探し続けて、ようやく手に入れた時計が何本かあります」

ミルスペックについて記載されたBENRUS タイプⅠとタイプⅡに関する説明書。こちらはオリジナルではなくコピーだが、それでも入手が難しいと言われている

制式採用された栄誉ある時計がこちら!

【1960s】BENRUS TypeI Class A(右)

アメリカ海軍をはじめ、幅広い部隊に支給されていたBEN RUS タイプⅠ。まるで鉄の塊のようなケースと超シンプルな文字盤の組み合わせが人気。1979年製造、自動巻き(Cal.KG1D2)、ステンレススチールケース、径39㎜、¥980,000

【1960s】BENRUS TypeII Class A(中)

BENRUS タイプⅠと同時期にアメリカ海軍に支給されていたダイバーズウォッチで文字盤の仕様に違いがあるが、防水性能を含め、スペックはほぼ同レベル。1973年製造、自動巻き(Cal.GS1D2)、ステンレススチールケース、径39㎜、¥780,000

【1960s】PORSCHE DESIGN by IWC OCEAN 2000(左)

1980年代から1990年代にかけて製造されたオーシャン2000。その中で最も希少性が高いのが、50本しか存在しない西ドイツ海軍のマインダイバー用モデル。Ref.3519、1988年製造、自動巻き(Cal. 3755AM)、チタンケース、径4 2㎜、スタッフ私物

【DATA】
Curious Curio
東京都港区南青山4-26-7 +8ビル 302
TEL03-6712-6933
https://curious-curio.jp

※情報は取材当時のものです。

(出典/「CLUTCH2023年2月号 Vol.89」)

この記事を書いた人
CLUTCH Magazine 編集部
この記事を書いた人

CLUTCH Magazine 編集部

世界基準のカルチャーマガジン

日本と世界の架け橋として、国外での販路ももつスタイルカルチャーマガジン。本当に価値のあるモノ、海外記事を世界中から集めた、世界基準の魅力的コンテンツをお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

ヘビーデューティど真ん中! レトロなデイパックに注目。

  • 2026.01.26

1977年に発売された『ヘビーデューティの本』という名著をご存知だろうか。当時数々の雑誌で、イラスト・ルポ(自ら現地に赴いて取材した内容をイラストを用いながら報告すること)を描いていた小林泰彦さんが手掛けた1冊で、いまだファッション好きにとってのバイブルとなっている。ヘビーデューティとは、「耐久性が...

映画で観た欧米のクラシックな世界観をモダンに昇華。“好き”が詰まった空間で暮らす!

  • 2025.12.30

衣食住は、私たちが生活するうえで必要不可欠な要素である。なかでも日々の生活と最も密接に結びつく住居には、ひと際こだわりたいもの。自分のお気に入りの空間を作るための選択肢のひとつに、リノベーションがある。 “三人四脚”で作り上げた理想の居住空間 兵庫県芦屋市。豊かな自然と落ち着きのある街並みから関西で...

オリジナル建材で古民家をスタイリッシュにリニューアル! ビフォーアフターを大公開!!

  • 2025.12.28

2025 年の夏の時点では床だけが施工されただけの古民家を再び訪れると、当時とはまったく違う姿になっていた。カントリーベースはこの家にどんな魔法をかけたのか? 何でもない空き家が宝物なる材料と技術 [caption id="attachment_887933" align="alignnone" w...

日本屈指のインディアンジュエリーブランドが放つ、美しき馬蹄のシルバージュエリー。

  • 2025.12.24

日本屈指のインディアンジュエリーブランド・ファーストアローズがこの冬新たにリリースした「馬蹄」を象った「ホースシュー」シリーズ。奇しくも2026年は午(うま)年。ファッション面だけでなく、来年こそは飛躍を願う人にとって最高の開運アイテムとなるはずだ。 新作「ホースシュー」シリーズを一挙紹介! 1. ...

【KEATON CHASE U.S.A.×2nd別注】大人のための、ちょうどいいシャンブレーシャツ登場!

  • 2026.01.25

ライトオンスのシャンブレーを使用した、米国のシャツファクトリー「キートンチェイスUSA」の定番プルオーバーシャツ。カジュアルな要素を備えながらシャツ本来のきちんと感も残したこのアイテムを、2nd仕様に別注。胸ポケットの作りや前立てのボタンの数などを微調整し、すっきりと大人な印象にまとまっている。 >...

Pick Up おすすめ記事

「ORGUEIL」が提案する、凛冬を彩る大人のガーメンツ。

  • 2025.12.26

凛とした寒さが日に日に増し、コーディネートが重くなりがちな季節。クラシックなデザインと丁寧な作り込みのORGUEILのクロージングが、いつものスタイルを格上げしてくれる。さりげなく上質で存在感のある一着が、冬の日々を彩ってくれるはずだ。 Aniline Steer Oil A-1 Jacket 19...

オリジナル建材で古民家をスタイリッシュにリニューアル! ビフォーアフターを大公開!!

  • 2025.12.28

2025 年の夏の時点では床だけが施工されただけの古民家を再び訪れると、当時とはまったく違う姿になっていた。カントリーベースはこの家にどんな魔法をかけたのか? 何でもない空き家が宝物なる材料と技術 [caption id="attachment_887933" align="alignnone" w...

【KERRY WOOLLEN MILLS×2nd別注】本物のアランは暖かさだけじゃない! アランケーブル クルーセーター登場

  • 2026.01.24

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【KERRY WOOLLEN MILLS×2nd】アランケーブル クルーセーター もともとは海の男たちを守るための、...

【連載】ビートルズのことを考えない日は一日もなかった

  • 2024.02.05

80年代、私的ビートルズ物語。 ビートルズ研究と収集に勤しむビートルデイズを始めて早44年(Since1980)。 なにをするにもビートルズが基準だった『昭和40年男』編集長のビートルズ史を、 当時の出来事とともに振り返ります。

デニム界の異端児・ラングラー、製造期間は約1年のみの“幻の名作”がついに復刻

  • 2025.12.27

ロデオ・ベンをデザイナーに迎えてカジュアルウエアに参入したという歴史やカウボーイカルチャーとの結びつきなど、独自の発展を遂げてきたラングラー。膨大なアーカイブの中から、王道から希少な隠れ名作まで全6型が復刻を果たした。 幻の名作が華麗なる復刻を遂げた。 アメリカ三大デニムブランドのなかでも特異な歴史...