スポーツジャケットとは? レザーを大衆化させたスポーツジャケットの功績。

1920~’30年代のアメリカで流行したスポーツジャケット。ウールなども存在するが、メインとなったのはレザー。この時代にはまだカジュアルウエアという概念がなかったため、スポーツウエアの一種として販売され、様々なシーンで使われた。

「Dapper’s」Director・野尻武寿さん

1969年生まれ。神奈川県出身。デニムメーカーを経て、戦前のアメリカンクロージングに特化したDapper’sをスタート。ヴィンテージのワークウエアマニアでもある。

生産効率を度外視して創意工夫を重ねていった。 貴重なヴィンテージスポーツジャケットのディテールに注目!

アメリカの大手通販会社のひとつであったMONGOMERY WARDの1932年のカタログ。いわゆるカーコートと呼ばれるダブルブレストのジャケットが、メンズ用の防寒アウターとして掲載されている。ムートンライニングを付けており、スーツの上から羽織ったイラストだ

日本では2000年代中期頃より注目され始めた戦前のスポーツジャケット。その代表格であるグリズリージャケットこそ、’90年代のヴィンテージブームより人気を集めていたが、その他のモデルは、ほとんどの人がノーマークだった。今回、スポーツジャケットの解説をお願いしたのは、いち早く戦前のヴィンテージに目を付けていた野尻氏だ。

「一言にスポーツジャケットと言っても多種多様で、カーコートからグリズリージャケットまであり、機能性が高く、汎用性のあるアウターの総称です。’20〜’30年代に流行したスタイルで、ビジネスから余暇を楽しむ時まで幅広いシーンで使われていました。当時のカタログを見るとカーコートは、スーツの上に着ているイラストが多いですし、グリズリージャケットでスキーを楽しむような描写もあります。レザーが多用されたのは、防風性や耐久性など、機能美を求めた結果ではないでしょうか。当時は化繊がなく、天然素材がベース。その中でアウターとして防風性や保温性、耐久性を突き詰めていくと、レザーやムートンになったと思いますね」

’20年代に登場したジッパーは、’30年代になると一般の衣類にも使われるようになる。その結果、今のスポーツウエアが最先端の機能素材を使うように、スポーツジャケットはボタンからジッパーが主流となり、デザインのバリエーションもより増えていく

「’20年代は米国陸軍航空隊で採用されたいわゆるA‐1タイプのデザインでしたが、’30年代からジッパーが多用され、デザインの幅が広がりました。またストア系ブランドでもスポーツジャケットに注力し、一般層もシェアが広がりました。ライダースはアビエータージャケットからの進化もありますが、スポーツジャケットの影響も確実に受けていますよね」

ヴィンテージを知り尽くしたDappersが手掛ける復刻モデル。

1930s Lakeland Grizzly Jacket

通称クマジャンと呼ばれるスポーツジャケットの王様。様々なメーカーが作っており、グリズリージャケットやベアージャケットというネーミングで販売された。その中でもスペシャルなのが、赤いムートンを使った通称赤クマであり、コレクターズピースだ。

グリズリージャケットの代表的なメーカーであるLAKELANDは、ウィスコンシン州が拠点。野尻氏の考察だとムートンの生産会社であり、多くのメーカーに卸売していたと推測する
グリズリージャケットの多くはブラウンで、白クマと呼ばれるホワイトが珍しいと言われているが、これはレッドを使ったスペシャルピース。またショールカラーというのもポイントだ

1930s TOP NOTCH Sports Jacket

上品なカーフスキンを使ったスポーツジャケットは、なんとも珍しいツートン仕様が際立っている。20年代にメジャーであったA-1タイプのデザインで、襟はショールカラーを採用。まるでハンドメイドで塗ったようなムラ感のある風合いがたまらない1着である。

いわゆる茶芯のブラックを使ったツートンカラーは滅多に出ない
スポーツジャケットで有名なTOP NOTCHというブランドで、サンフランシスコのRAL PHS-PUGHという会社が展開
ポケットをウエストベルトとともに縫製するなど、ユニークな仕様

1920s Unknown Sports Jacket

飴色にエイジングされたボタンタイプのスポーツジャケットは、第一ボタンと第二ボタンの間隔が広く、テーラードジャケットのようなパターンを採用した旧いタイプ。サイドのバックルや袖のカフスなど、スポーツジャケットらしい意匠が随所に落とし込まれている。

このジャケットの特筆すべき点は、ステアハイドではなく、高価なカーフスキンを使っていること
カーフスキンは子牛なのでサイズが小さいが、背面を1枚革にしているのもポイントが高い
メーカーは不明だが、カーフスキンのタグが付く

1930s Unknown Sports Jacket

一見、’70sあたりに製作されたハンドクラフト系のパッチワークジャケットに見えるが、実は’30sに作られたもの。その証拠にハトメのジッパーが使われている。この年代にしては着丈が長く、レザーが量産に向いていないため、オーダーメイドと思われる。

背面にもパッチワークされたレザーが使われている。サイドにはレザーを使ったアジャスターがあり、機能的な作りとなっている
パッチワークされたレザーの個体差によって、エイジングに差が出て、なんとも個性的な雰囲気に。ヴィンテージの醍醐味である

1940-50s TROJAN Riders Jacket

’30年代にカリフォルニア・ロサンゼルスで創業されたレザージャケットブランド。けっして大きな規模ではなかったが、その特徴的な作りからヴィンテージ市場で評価されている。当ブランドの代表的なモデルであるDポケット型のライダースジャケットである。

ツートンカラーのライダースジャケットでも知られる知る人ぞ知る名門ブランド。ロサンゼルスを拠点し、カスタムオーダーもある
大振りなDポケットのデザインはTROJANならでは。’40sに流行したスタイルで、’50年代後半にはほぼ見られなくなった意匠だ
タロンジッパーの構造から、’40年代後半から’50年代初頭のヴィンテージだと思われる。裏地にはチェックのウールライニングを使用

Dapper’s Classical Leather Car Coat Jacket

’20~’30年代のシングルタイプのカーコートを再現。ボディには茶芯のホースハイドを使用。前身頃の切り替えがない1枚仕立てやボタン式の背帯などをうまく落とし込んだ。¥176,000_

30’s Style Leather Sports Jacket

ジッパーの採用が始まった’30sスタイルのスポーツジャケットは、イタリアのマリアム社のホースハイドを使用。ジッパー付きのポケットや小振りな襟、背面のプリーツが特徴。¥184,800_

【DATA】
Shank Clot hing&Antiques
Tel.03-5315-0906
https://dappers.jp

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「CLUTCH2022年10月号 Vol.87」)

この記事を書いた人
CLUTCH Magazine 編集部
この記事を書いた人

CLUTCH Magazine 編集部

世界基準のカルチャーマガジン

日本と世界の架け橋として、国外での販路ももつスタイルカルチャーマガジン。本当に価値のあるモノ、海外記事を世界中から集めた、世界基準の魅力的コンテンツをお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

無骨と涼感。どちらも、ステュディオ・ダ・ルチザンで手に入る

  • 2026.05.02

異なる魅力を持つふたつのスタイル。だが、その根底にあるのは、日本のモノづくりに裏打ちされた丁寧な作りと、細部に宿る遊び心である。 制約が生んだ大戦期の美学! 物資統制下にあった大戦期、簡略化されたディテールの中から生まれた機能美。その無骨な佇まいをベースに、ステュディオ・ダ・ルチザンが現代的に再構築...

これが“未来のヴィンテージ”。綿、糸、編み機……すべてに徹底的にこだわる唯一無二のカットソー

  • 2026.04.27

綿、糸、編み機……。素材から製法まで徹底的にこだわり、唯一無二のカットソーを創り続けるライディングハイ。「FUTURE VINTAGE(未来のヴィンテージ)」を目指す彼らのフィロソフィは如何にして形成されているのか。プロダクトの根幹をなす代表・薄 新大さんの“アイデアの源”に迫る。 More tha...

大人の夏はゆるくてこなれ感があるコーデが気分。“アジ”のあるピグメントTとデニムさえあればいい

  • 2026.04.17

ハナから古着みたいに着られる、アジのある服が大好きだ。「ジムマスター」が今季推すピグメントTとデニムも、加工感が素敵。いい“アジ”を知り尽くすふたりも、どうやら気に入ったご様子です。 「MIA MIA Kuramae」ヴォーンさんは、ピグメントTにオールインワンを着崩して合わす! 色ムラによる古着ラ...

大人メンズの手首に最適解なバングルを……「アリゾナフリーダム」を象徴するモチーフ“唐草”。

  • 2026.05.08

アリゾナフリーダムを象徴するモチーフのひとつ、唐草。創業当初から脈々と受け継がれ、ブランドの核として多くのファンに愛され続けてきた、いわば普遍的なデザインだ。一見すると同じ唐草でも、彫りの深さやラインの強弱、バングルの幅やサイズによって印象は大きく変化する。その多彩な表情こそが、このモチーフの大きな...

スニーカー派こそ知っておきたい、「クラークス オリジナルズ」の名作シューズとその歴史。

  • 2026.05.12

ご存知、英国生まれのシューメーカー「クラークス オリジナルズ」。実は本誌が標榜するアメリカンスタイルとも縁深い同ブランドの魅力について創業から現代にかけての歴史や数々の名作とともに、再考してみたいと思う。 英国で生まれ、アメリカで人気に火がついた稀有な存在。 アメカジ好きの本誌読者の皆様は、クラーク...

Pick Up おすすめ記事

【連載】ビートルズのことを考えない日は一日もなかった

  • 2024.02.05

80年代、私的ビートルズ物語。 ビートルズ研究と収集に勤しむビートルデイズを始めて早44年(Since1980)。 なにをするにもビートルズが基準だった『昭和40年男』編集長のビートルズ史を、 当時の出来事とともに振り返ります。

大人メンズの手首に最適解なバングルを……「アリゾナフリーダム」を象徴するモチーフ“唐草”。

  • 2026.05.08

アリゾナフリーダムを象徴するモチーフのひとつ、唐草。創業当初から脈々と受け継がれ、ブランドの核として多くのファンに愛され続けてきた、いわば普遍的なデザインだ。一見すると同じ唐草でも、彫りの深さやラインの強弱、バングルの幅やサイズによって印象は大きく変化する。その多彩な表情こそが、このモチーフの大きな...

大人の夏はゆるくてこなれ感があるコーデが気分。“アジ”のあるピグメントTとデニムさえあればいい

  • 2026.04.17

ハナから古着みたいに着られる、アジのある服が大好きだ。「ジムマスター」が今季推すピグメントTとデニムも、加工感が素敵。いい“アジ”を知り尽くすふたりも、どうやら気に入ったご様子です。 「MIA MIA Kuramae」ヴォーンさんは、ピグメントTにオールインワンを着崩して合わす! 色ムラによる古着ラ...

30周年を迎えた「FIRST ARROW’s」がシルバー300個、金30個の限定アイテムを発売。トリプルコラボのデニムにも注目!

  • 2026.05.11

30周年を迎えた「FIRST ARROW’s」からメモリアルな逸品が登場。限定なのでこの機会を見逃すな! また、定番のアイテムも一挙紹介。ハンドメイドならではの美しい細部に注目だ。※価格は全て税抜きです 【NEW ARRIVALS】30th Anniversary Arrow Feather Ser...

夏服選びはエイトジーで完成させる! “ちょうどいい”アメカジアイテムが続々登場

  • 2026.05.01

エイトジーで完成させるお気に入りの夏支度。アロハにショーツ、Tシャツなど、エイトジーらしい“ちょうどいい”アメカジアイテムが今シーズンも徐々に揃い始めているぞ。 生地、グラフィック、色合いがマッチし、まるで着るアートピースのような存在感。|Waikiki Leaf & Fish Lot:8A...