1.梶雄太|「いまのブレザースタイルは、あえてこんな感じ?」スタイル
最近ブレザーが流行っていますよね。だからなのかな?結果的にこんなスタイリングになりました(笑)。たとえば1シーズン前だったら、ブレザーはトレンドのアイテムでなかったからこそ王道に合わせるのが良かったんですが、いまは流行の渦の中心にいるからこそ、遊び心のあるスタイリングが良い。
逆に言えば、ブレザーが世間の流行と近い時に、スタイリングも王道をやると、直球ストレートすぎる。ブレザーが流行から離れているときにハズしをやってしまうと、今度は少し分かりづらくなる、ということなんです。TPOにもよりますが、「中心との理想の距離感」というのがあって、そこに落とし込むイメージですね。ここまで感覚的で分かりづらい話になりましたが(笑)、理解するには時間がかかります。
だからこそ僕のスタイリングを見て、表面だけ真似してもらえれば入り口としてはそれでいい。「ブレザーとブラックデニムの合わせいいな」とか。ただ、いつか「距離感」を意識できるようになれば、ファッションはより楽しくなります。そして、その感覚を得るためには「本当に服を好きになること」が大事。
好きになると、背景まで知りたくなって、色々なことを俯瞰して見られるようになっていくと思います。俯瞰しないことには、世間との距離感を冷静に観察なんてできませんから。僕のスタイリングを見て、そういう楽しみ方に辿り着く人が増えればいいなと思います。
【ポイント】
・フーディとビーニーでストリートな合わせ
・ブラックカラーのレイヤード
・あえて足元はマウンテンブーツで
2.シュンサク|「トラッドへのリスペクトを忘れず、世代感を意識しました」スタイル
テーマが「アメトラ」ということで、自分にとってのアメトラスタイルをどう表現すべきかすごく悩みました。ただ、今回一番大事にしたかったのは、トラッドをリスペクトしつつ、「どう崩すか」ではなく「自分たちの世代ならどう表現するか」。
まずリスペクトの部分で言えば自分も昔から着ている〈ブルックス ブラザーズ〉は使いたかった。パープルカラーのニットタイがそれです。世代感の表現に関しては、僕らの世代は良くも悪くも雑食なので、異素材の組み合わせを使ったり、国籍を問わないブランドの組み合わせ方を意識しています。素材はニットタイ、ジャージー素材のシャツ、シャンブレーシャツ、ボンディングパンツなど。これらの組み合わせは、自分らしさがよく出ていると思います。
あとは色。これは僕個人の好みでもあると思うのですが、小物で表現している淡い色味の組み合わせもポイント。ほかにもファッションスナップブログ「ミスターモート」が普段SNSにアップしているような「着飾らない良さ」だったり、パッと見いつの時代のものかわからない無時代性のあるスタイリングだったり、最近僕が1番好きな〈リップラップ〉というブランドを入れていたり。
今回の企画において最年少である自分が、自分の世代らしさを全部入れ込んだうえで、あくまで「トラッド」というところに落とし込めた良いコーディネイトになったと自負しています。
【ポイント】
・ニットやジャージーなど、異素材の組み合わせ
・「着飾らない抜け感のあるトラディショナル」を意識
・淡いペールトーンの色合わせ
3.四方章敬|「これが四方流のブリティッシュアメリカンです」スタイル
これまでブレザーで色々な合わせを試してきました。ただ、「やりすぎた感」があって、そろそろ正統に戻りたいなと。マイブームはブリティッシュアメリカン。少し歴史の話をすると、〈ブルックス ブラザーズ〉のブレザーが市民権を得たあと、「周りと差別化を図りたい」という人が出てきた。30〜50年代ごろのことです。
彼らは英国でブレザーをオーダーするようになるんですが、やはり作りが違うんですよ。構築的でシェイプも効いてて。これが、まさにブリティッシュアメリカンなブレザーで、〈ポールスチュアート〉や〈ラルフ ローレン〉のようなスタイル。
いま「ミックススタイル」が流行っていますが、ブリティッシュアメリカンはこれをいち早くやっていた。だから、僕も今回は英国×アメリカのミックスを試みました。一見、正統派な英国スタイルにも見えるんですが、シャツはアメリカの香りも漂うタブカラー、シューズはアメリカンなローファーを英国的に解釈したルームシューズ、といったようにアメリカに寄せています。
こういうミックスって感覚だけでやってると説明できないし、持続性もない。何も知らずに「ミックスされちゃってる」のと、意識して「している」のでは、雲泥の差があるんです。なので、知識をつけるというのがすごく大事で、僕の理想は「お、今日ブリティッシュアメリカンっぽいね」みたいな会話が世の中に増えることなんです。
【ポイント】
・アメリカの香り漂うタブカラーシャツ
・構築的なブリティッシュアメリカンブレザー
・ルームシューズはローファーの英国的な解釈
※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
(出典/「2nd 2023年12月号 Vol.200」)
Photo/Yoshika Amino Text/Shuhei Takano Illustration/Masashi Yamada