ディグナクラシックに学ぶ、美しきアイウエアディテール事典。

その小ぶりなサイズ感に反して、とてつもなく奥が深いメガネの世界。使われているパーツや製法も多く、メタルフレームに関しては、その製作工程はなんと200以上にも及ぶという。

メガネ職人や業界人たちの間では我々が聞いたこともない不思議な言葉がたくさん飛び交い、メガネに対する造詣が深くない限り何を言っているか分からない。逆に言えばこれらの用語を少しでも理解できるようになると、より正確なメガネ選びができるようになるし、単純にもっとメガネというプロダクトを楽しめるようになる。

そんな奥深きメガネの世界を少しでも味わってもらうべく、「ディテール事典」を製作した。

協力を仰いだのは、2009年にパリミキのオリジナルブランドとしてスタートしたディグナクラシック。旧きよきヴィンテージに対する圧倒的な愛情と熱量は、かなり細かなディテールにまで及ぶ。この企画の協力相手としてぴったりだ。

さあ、美しくて奥が深い、アイウエアディテールの世界へようこそ。

Daki-cho【抱き蝶】

ネジを使うことなく鼻パッドを固定する、かつては主流だったクラシックな手法。見た目どおり抱き込むようなその形から名付けられた。

Torx Screw 【トルクスネジ】

プラスでもマイナスでもなく、花びらのような形をしたネジ穴が特徴。ドライバーとの噛み合わせがよく、穴が潰れづらい。もちろんパーツ代はそのぶん高価である。

Teardrop【ティアドロップ】

総称してパイロットグラスと呼ばれ、飛行士が上空で日光を遮ることができるように大きくしたレンズシェイプが特徴。当時はテンプルが直線だったが、これもヘルメットを装着した状態でメガネの着脱をしやすいよう考慮してのデザイン。[941E]3万9600円

Rimless 【リムレス】

日本語では、縁なし、ツーポイントなどとも言う。1930〜50年代からメジャー化したデザインで、90年代後半〜2000年代にかけて一度大ブームを巻き起こした。現在では比較的ツウ好みのディテールとなっている。

Inner Ring 【インナーリング】

別名ソフトリムやプラわっぱとも言う。切れ込みが一周ぐるっと入ったセルパーツを、メタルフレームに挟み込んだもの。

Hinge 【丁番】

英語名をそのまま読んで、ヒンジと言うことも。メガネの基礎知識として必ず覚えておくべき用語。かなり細かい話だが、画像はディグナクラシックで多用されている“7枚丁番”。フロント側が奇数(3枚)、テンプル側が偶数(4枚)で構成されている。

Wellington【ウエリントン】

台形を逆にしたようなレンズシェイプのフレーム。1950年代から存在するクラシックの定番スタイル。[955 Jimmy]3万3000円

Key Hole Bridge【キーホールブリッジ】

ブリッジデザインのひとつで、鍵穴のように見えることからこの名がついた。ちなみに、ブリッジの上部が角を立てたフォルムになっているものを天角と言い、「天角キーホールのブリッジ」のように組み合わせて使われることも。

Brow【ブロー】

メタルフレームの眉部分にのみセルフレームを取り付けたデザイン。その昔、とある将校が眉を濃く見せて威厳を出そうとしたことから生まれたとされている。[905E]3万3000円

Flip-Up【 跳ね上げ】

単式と複式があり、跳ね上げしていないほうにレンズが入っていないものを単式、レンズが入っているものを複式と言う。複式においては片方は度付きレンズで、片方はサングラスを入れるなどといった使い分けが可能。

Rhombus End Piece【ロンバスエンドピース】

その英語名のとおり、カシメの菱形モチーフを総称してこう呼ぶ。クラシックなメガネにも見られた意匠。

Saddle Pad【サドルパッド】

日本語ではイチヤマと呼ばれることが多い。鼻パッドが付いていないシンプルなブリッジのことで、1920 年代ごろから存在。

Eagle Line【 イーグルライン】

ディグナクラシック特有のカシメデザイン。[905]というモデルから始まったあしらいで、その名の通り鷲の羽をイメージしている。

Ornament【オーナメント】

単純に「装飾」のことを指す。ディグナクラシックでは、ブランド初期からテンプルエンドのデザインとして、カブトマークが採用されている。

Two Bridge【ツーブリッジ】

ブリッジが1本のワンブリッジに対して、2本のものはツーブリッジ。さらにディグナクラシックでは、世にも珍しい一体型ツーブリッジ(二本のブリッジをひとつのパーツで構成しているもの)も展開している。

Caulking Rivet 【カシメリベット】

現代においては、熱を用いてセルに丁番を埋め込むのが一般的だが、カシメリベットは、裏から貫通させてフロントでカシメる手法。手間がかかることもあり、80〜90年代にかけて少なくなっていったクラシックな手法。最近はクラシックブームによって復活した。

Cable Temples【ケーブルテンプル】

ナワテ、ケーブルモダン、ワイヤーテンプルなど多数の呼び方が存在。1800年代後半の量販初期からあった最古のディテール。

Clip-On【クリップオン】

フレームに脱着可能なサングラスレンズ。50〜60年代ごろにはすでに存在していた。最近はマグネットタイプも展開されているが、画像のように引っ掛ける作りのものがクラシック。

Giza【ギザ】

テンプルに付いている蛇腹の加工。クラシックな意匠で、滑り止めの役割を果たす。

One Endpiece 【一個智】

細いリムの場合、リムの一部分に切れ込みを入れてレンズをはめ込み、切れ込み部分はリムロックというパーツで固定する。このリムロックを智の中に内包する作り方を一個智という。

Bowl Endpiece【椀智(わんち)】

テンプルを切削して丁番と一体化させる「スパルタ丁番」のなかでも、テンプルのフロント側の端がお椀の形をしているもの。より複雑な切削が必要となる。

Spartan Endpiece【スパルタ丁番】

通常はフロントとテンプルそれぞれにロウ付けして丁番を取り付けるが、この製法では、テンプルを切削することによって、テンプルがそもそも丁番の役割を果たしている。そのため、ロウ付けの必要がなく、ロウが離れてしまう心配ももちろんない。見た目にもシンプルで美しく仕上がる。ただし、かなり難易度が高く職人泣かせの製法のため、“スパルタ”と言う名がついた。

Daruma Rim 【ダルマリム】

リムの飾りの一種。側面をよく見ると凸型になっている。

Millgrain 【ミル打ち】

細かなドット柄をフレームに打ち込む装飾。間隔が細かければ細かいほど難易度が高く、0.3mmがディグナクラシックでは最小。旧きよきアメリカンアイウエアの黄金期である1950年代ごろのメガネには、現代の機械式では見られないほど異常に細かなミル打ちが手製であしらわれていることも。

Gummetal【ゴムメタル】

鯖江の工場でも4社しか作れるところがないという、ぐにゃりと曲がるほど柔らかなメタル素材。チタンの10倍ほど高価な素材で、元々は車のパーツとして使われる予定で開発されたものなのだとか。

Titanium Pads【チタンパッド】

アレルギー性のないチタンを使用した、近年主流のディテール。メッキはせずに、剥がれる可能性が少ない素地で製作している。ディグナクラシックでは、レーザー加工でカブトマークを入れている。

Manray Bridge【マンレイブリッジ】

通常ブリッジとクリングスは、それぞれでリムにロウ付けされていることがほとんどだが、マンレイはその両者が一体化したもの。最初にパーツを製作してから、のちに曲げているのでばらつきが出やすく難しいテクニック。

Covered Temples 【被せテンプル】

テンプルが、フロントの智を覆うように作られたもの。フロントフレームにぶつからないように、柔軟性のある素材を左右均等に曲げるのは超至難の技。ヴィンテージではあまり見られず、80〜90年代ごろから見られるようになったディテール。

Television Cut 【TVカット】

1950年代よりメジャー化した、英国やフランスなど、ヨーロッパ的な印象の強いディテール。ブラウン管のテレビのように、フロントからレンズに向かってフレームに傾斜がついている。

Record Rim 【レコードリム】

リムの飾りの一種。レコードの盤面の溝のように見えることから、この名が付いた。

Parisian 【パリジャン】

フレンチヴィンテージにルーツをもつデザイン。ウエリントンと比較すると、かなり微妙な違いではあるが、パリジャンのほうが正方形に近い。パリジャンと言う呼称自体は昔から存在していたが、近年のフレンチヴィンテージブームでより広く使われるようになった。[983]3万7400円

Cloisonne 【七宝】

注射針のような道具を使って、一つひとつ職人の手仕事で仕上げる色付けの手法。手間がかかるうえに、これを専門とする工場も少なくなってきている。

Clings 【クリングス】

鼻パッドを固定しているメタルの細いパーツ。鯖江では「メタル足」と呼ぶことも。

Temple Tip 【先セル】

モダンと呼ぶことも。その名の通り、テンプルのエンド側のみセル素材のパーツが付いているもの。

【問い合わせ】
ディグナハウス
TEL03-5843-1612

(出典/「2nd 2023年9・10月合併号 Vol.198」)

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パピー高野
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パピー高野

断然革靴派

長崎県出身、シティーボーイに憧れ上京。編集部に入ってから服好き精神に火がつき、たまの散財が生きがいに。いろんなスタイルに挑戦したい雑食タイプで、ヨーロッパからアメリカものまで幅広く好む。家の近所にある大盛カレーショップの名を、あだ名として拝借。
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