年表で読み解く、アウトドアファッションの歴史とブランド。【④2000~2010年代】

野外活動や局地など特定のフィールドに向けたアウトドアアパレル。その優れた機能服はいかにしてデイリーユースとなっていったのか? アメリカと日本のシーンを中心にその変遷を追ってみる企画の第4回目はそれまでになかったブラックカラーやミリタリーがアウトドアアパレルに多大なる影響を与えた2000年代から現在への流れをフューチャー!

▼創成期(~1960年代)の軌跡はこちら

年表で読み解く、アウトドアファッションの歴史とブランド。【①創成期~1960年代】

年表で読み解く、アウトドアファッションの歴史とブランド。【①創成期~1960年代】

2025年07月09日

▼アウトドアアパレルが日本上陸した1970~80年代はこちら

年表で読み解く、アウトドアファッションの歴史とブランド。【②1970~1980年代】

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2025年07月09日

▼ストリートでアウトドアファッションが人気を集めた1990年代はこちら

年表で読み解く、アウトドアファッションの歴史とブランド。【③1990年代】

年表で読み解く、アウトドアファッションの歴史とブランド。【③1990年代】

2025年07月09日

【2000年代】アウトドアではタブーとされたブラックや迷彩柄がブレイク。

それまでは視認性の向上をはじめアウトドアというカテゴリーの特性上タブーとされてきた黒を導入するブランドが相次ぎ、デイリーユースでの市民権をさらに獲得していった。また、軍や政府機関に技術を提供していたブランドたちによる一般市場向けラインが続々と登場する。グレゴリーのスピアをはじめ、アークテリクスのリーフ、ミステリーランチの代表的プロダクツなど、ミルスペックに倣ったタフなアウトドアギアやコヨーテ、OD、マルチカムといった本来ミリタリーベースの配色やパターンまでもが一般市場で台頭し始めたのもこの頃だった。

こんなカッコしてました!

アウター7万4800円/アークテリクス (オッシュマンズ新宿店☎03-3353-0584)、シャツ2万5300 円/インディ ビジュアライズドシ ャツ(メイデン・カ ンパニー☎03-5410-9777)、ブー ツ7万4800円/ パラブーツ(パラブーツ青山店☎03-5766-6688)、バッグ7 万7000円/ミステリーランチ(エイアンドエフ☎03-3209-7575)、その他スタイリスト私物

トラッドとテックウエアのミックス! 当時斬新だったブラックカラーの登場でこんなミックスコーデも楽しめるように。足元には革靴ブランドのマウンテンブーツを合わせるのが象徴的だった。

2000年

1998年にデイナデザインを去ったデイナ・グリーソンがミステリーランチを設立。名機[3デイ アサルト]などに代表されるミルスペックに準拠したシステムとデザインが話題となり、アウトドアmeetsミリタリーの波がさらに加速。

グレゴリー スピア、アークテリクス リーフ、ミステリーランチといったアウトドアブランド発ながらもミルスペック準拠なウエアやギアが一般市場へと出回り始め、一部の軍放出品も話題となった。

2000年

東京・町田にアウトドア古着のレジェンドショップ「バックストリート」がオープン。

2002年

エンデューリングフリーダム作戦にてアフガニスタン、ヒンドゥークシュ山脈に展開していた特殊部隊員の要請を受け、ECWCSに変わる新たなレイヤリングシステムとしてPCU(プロテクティブ・コンバット・ユニフォーム)が発表される。このシステム開発前夜には様々なアウトドアブランドが独自のレイヤリングシステムをテストし、中でもパタゴニアによって開発されたMARS(Military Advanced Regulator System)は今なおその放出品が高値で取引されている。

パタゴニアが開発した独自レイヤリングシステムMARSことMilitary Advanced Regulator System。一部特殊部隊などに採用されたものの制式採用には至らなかった。

2003年

ザ・ノース・フェイスの日本代理店も務めるゴールドウイン出身者たちにより、アウトドアアパレルの優れた機能性をタウンユースへと落とし込み、ナナミカがスタート。ザ・ノース・フェイスとのコレボレーションコレクションとしてパープル・レーベルも展開。2008年、ナナミカがゴアテックス素材のステンカラーコートを発売する。最初はパープルレーベル名義で出ていた。

ザ・ノース・フェイスの日本代理店出身者によりアウトドア由来のパフォーマンスを活かした新ブランド「ナナミカ」がスタートし、後にパープル・レーベルの監修も務めていくことに。

2009年にはセカンドでもゴアテックスのコートを大々的に紹介! 紫タグのノースフェイスが街を席巻した。

2007年に2ndがライトニング増刊として創刊。特集は「休日服の定番はアウトドアファッション」。

表紙はシエラのロクヨンパーカ! 誰もが持っている男の定番服としてマウンテンパーカやダウンベストなどのヘビーデューティアイテムをピックアップ。トラディショナルなジャケットスタイルに合わせるなど、当時なりのスタイリングを提案した。

2008年

アウトドアシーンで軽量素材シルナイロンを用いたウルトラライト(UL)ムーブメントが勃発。

【2010年代】アウトドアとデイリーのクロスオーバーが加速。

シーンがクロスオーバーを繰り返し、アウトドアブランド発のハイパフォーマンスなデイリーウエアとファッションブランド発のアウトドアオマージュアパレルがひとつの大きな潮流に。また、’70年代を思わせる空前のキャンプブームが到来し、国内で様々なガレージブランドが乱立した。大量生産により手頃となったシルナイロンの普及とともにUL 装備のマス化に拍車がかかり、多くのブランドが軽量サコッシュをリリースするなどアウトドア由来の素材やギアがより一般層にまで浸透。また、ULダウンインナーの登場でスタイルの多様性が進んだ。

こんなカッコしてました!

アウター7万1500円、カットソー1万2100円、パンツ1万9800円/ナナミカ(ナナミカ 東京☎03-5728-3266)、 ダウン1万780円/ モンベル(モンベル・カスタマー・サー ビス☎06-6536-5740)、シューズ2万900円/ホカオネオネ(デッカーズ ジャパン☎0120- 710-844)、その他 スタイリスト私物

仕事スタイルのカジュアル化もアウトドアアパレル人気を後押し。ワントーンの都会的な装いは、トレンドの穿き心地と美シルエットのトレパンがポイント。極厚ソールのトレラン靴が大ブレイク!

2011年

元イッセイミヤケの池内啓太氏と森美穂子氏により、アンドワンダーが発足。

2013年

カナダグースのリブランディングやモンベルのインナーダウンの登場を機に、ダウンアイテムのスタイリングが多様化。

カナダグースのエクスペディションパーカからモンベルの半袖UL ダウンなどタイドアップにアウトドア由来のダウンウエアを取り入れたスタイルが散見された。

2014年

キーンのイノベーションチームにより、2本のコードとソールだけで編み上げられた画期的なサンダル[ユニーク]を開発。

今やキーンの代名詞となっているオープンエアスニーカーが登場したのは2014年。2020年3月にはユニークボットなる専用の製造ロボットも稼働し始めている。

2014年

街中でもアウドアスタイルを楽しむユーザーへ向け、機能性とデザイン性が融合したスタイルを提唱するザ・ノース・フェイス スタンダードがスタート。

2014年

山井理沙氏がスノーピーク アパレルを立ち上げる。日常とアウトドアとの境界線のない服作りでブランドの幅を広げる。

2014年

女性ファッション誌がマニッシュスタイルをプッシュ。バブアーなどのヘリテージなアウトドア服をスタイリングに取り入れはじめる。

バブアー女子も巷で話題に!

2015年

抜群の穿き心地とスタイリッシュなシルエットでトレッキングパンツが流行。

2018年

ワイルドシングス社が海兵隊向けに生産したレベル7の防寒アウター通称ハッピースーツが大ブレイク。また、PCUのレベル7としてビヨンド社が生産する通称モンスターパーカも人気を集めた。

サイズタグにスマイルマークが描かれたワイルドシングスが製造した個体のみが真のハッピースーツである。

2018年

’90年代スタイルのリバイバルや若年層の古着ブームにより、ヴィンテージパタゴニアの市場価格が高騰。

2018年

アウトドアシーンでのULブームの影響を受けた軽量サコッシュなど、小型バッグが主流に。

シルナイロンの普及とともにサコッシュブーム到来。山と道をはじめとした国内ガレージブランドが画期的なULギアを輩出。販路はインスタのみといったスモールブランドも登場し始めた。

2019年

短丈&多ポケットのフィッシングジャケットが流行。

短い丈に多ポケットを備えたフィッシングジャケットやハンティングジャケットが街着として再燃。往年のヴィンテージからアパレルブランドの現行まで数多くリリースされた。

2019年

’90sアウトドアリバイバルが加熱。ザ・ノース・フェイスからは’90sアイコンでもある[デナリジャケット][ヌプシジャケット]の2モデルが装い新たにリイシューされた。

2020年

ザ・ノース・フェイスを中心に’90年代デッドストックの圧倒的な品ぞろえを誇る吉祥寺のインポートショップ「ジ・アパートメント」が世界中のコレクターから注目される。

ジャパンブランドが世界から注目を集める。

2018年よりメンズファッション最大の見本市「ピッティ・ウオモ」にアウトドアフィーリング溢れるジャパンブランドを多数集めたブースが登場。アンドワンダーやマウンテンリサーチが世界的に高い評価を受けた。

いかがでしたでしょうか? アウトドアアパレルが誕生してから普段着、街着として定着するに至るまで多くのブランドが画期的なアイテムを誕生させてきた技術の歴史とも言えるその歴史。日本のストリートで花開いたアウトドアアパレル、これから先もきっと数々のムーブメントを巻き起こすに違いない。

この記事を書いた人
2nd 編集部
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休日服を楽しむためのマガジン

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