万年筆の歴史は約200年。その進化を追ってみよう。

  • 最終更新日:2022.02.14 公開日:2022.02.08
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万年筆の歴史は約200年。ペン先やインク吸入機構などは19世紀にさまざまな発明が繰り返され、試行錯誤の中で20世紀になり、ようやく現在のような基本構造が確立された。万年筆の構造はシンプルに見えるがその歴史には先人の知恵と努力が凝縮されているのだ。

200年以上前に万年筆の原型が登場。

インクを使って書く道具は、古代エジプトの時代から存在している。欧州では7世紀頃から鵞鳥の羽根を使った手作りの羽根ペンが使われ始め、18世紀まで1000年以上にわたって使われた。羽根ペンのように、筆記するたびにペン先をインクが入ったボトルに着けて書く筆記具は、携帯しづらいし、すぐ書くこともできない。

インクボトルが不要で、持ち運びしやすい万年筆の原型と呼ばれるペンが登場するのは1781年のこと。フランスの科学者ニコラス・バイオンは「永遠に尽きないペン」の研究をしていた。バイオンのペンは実用的ではなかったものの、軸の内部にインクを貯蔵する仕組みを持っていた。

この頃から、軸の内部にインクを入れて、どこでも携帯でき、いつでもすぐに書けるペンのさまざまなアイデアが生み出され、万年筆へと進化していくことになる。

18世紀のクイルホルダー

クイルホルダーは長い歴史を持つ羽根ペンが進化した形。羽根の根本を短くカットし、装飾した長い軸に差し込んでいる。

18世紀のペンナー

18世紀に登場した、ペンとインクを合体させる工夫のひとつ。真鍮や銀などの金属を使った軸を持つ付けペンの後端と、インクボトルを合体させる仕組みだった。

1900年のレイザードの特許

ドイツで1900年に特許を取得したエデュアード・レイザードのペン。インク貯蔵をする袋の先を細い管状にして、首軸に堰を設け、インクをクリップで止めて小出しにする設計。

金ペン発祥は19世紀。

アメリカ金ペンの父と呼ばれるジョン・ホーランドのペンホルダー(1883年)。軸部分を分割して小さくできるアイデアモデルだった

金属のペン先が登場するのは18世紀末のイギリス。19世紀にはバーミンガム地域を中心にスチールペン先工業が隆盛していく。その後金ペンの試行が繰り返され、1862年に米国のジョン・ホーランドが作った金ペンの完成度が高く、「アメリカ金ペンの父」と呼ばれるようになる。

ペン芯の原型は1883年に登場。

ペン先からインクが流れるように出てきて、書く速度を上げてもインクが切れることなくスラスラ書ける。それでいて長時間使っていても、インクが余計に落ちてくることもない。現代の万年筆にとっては当たり前のようなこの構造になるまでは、多くの試行錯誤と苦難の連続があった。

ペン先に1回だけインクを着けて、できるだけ大量のインクをペン先の周囲に留めるためにペン自体をへこませたり、上側に弧を描いた金属片を取り付けたり、下側にいろいろな形状のポケットを付けたものなどが、1800年代に出回った。また、内部の中空にパイプを固定したような構造を入れたり、インクボトルとペン軸をチューブでつなぎ無理矢理に押し出そうとしたものなど、さまざまな方法が試されたが決定的ではなかった。

現在使われている毛細管現象を活用したペン芯は、1883年に登場したルイス・エドソン・ウォーターマンのフィッシャーフィードが原型となっている。初期のウォーターマンのペン芯は、上部に1本の溝があり、下部に3本の溝があった。上の溝から空気を内部に取り入れ、下の溝からインクが自然に出る画期的なものだった。

ウォーターマンのスプーンフィードの登場を告げる1916年のウォーターマンの広告。画期的なペン芯の開発から約30年後に進化した「ダブルスプーン型」のペン芯が宣伝されている。ペン芯でインクの溜まりを作りボタ落ちを防ぎ、インクフローを潤沢にさせる

ウォーターマンのペン芯はその後も進化を続け、ボタ落ちを防ぐためのくぼみを加えたスプーンフィードなどが開発される。このスプーンはさらに進化し、現代では細かい櫛状の形となってほぼ完璧にボタ落ちを防ぐ構造となっている。

ペンポイントの進化は1800年代前半から。

1950年、シェーファーのトライアンフのペン先の広告。「すべての筆記スタイルに向けたシェーファーの14金ペンポイント」と書かれている。16種類のペンポイントがあり、1950年代の万年筆黄金期を感じさせる

インクの酸に強い金や銀を使ったペン先は19世紀初めごろから作られていたものの、当初はコスト高のため普及しなかった。また金や銀は軟らかく筆記すると先端がすぐに減ってしまう問題もあった。

1800年代前半に金ペンの先にダイヤモンドの粉やルビーを付けるアイデアは、イギリスのジョン・アイザック・ホーキンスによって進められた。オックスフォード大学のウォアラストン教授はホーキンスにプラチナ属の硬い金属イリジウムを装着することを進言。ロシアのウラル山脈から産出した高価なイリジウムを使い、ダイヤモンド粉とオイルを塗りつけた円盤を高速回転してペン先に切り割りを入れることにも成功した。1834年にホーキンスは金ペンの製法を完成させた。

さまざまな吸入機構の発明。

回転吸入式の元祖「ペリカン ファウンテンペン(100)」| 1929年のペリカン第1号モデル。デファレンシャルギアを使った吸入機 構の特許を1927年に取得し、登場した。この機構が現在主流の原型に

現代の万年筆がインクを吸入する主流の方式は、「(ピストン式の)回転吸入式」と「コンバーター/カートリッジ式」の2つ。1900年代前半、軸内部にインクを吸入する方式はレバーやボタンを使うなどの各社が多種多様な方式を考案していた。

1900年代のオノトのプランジャー式|プランジャー式で有名だったオノトの1900年代初期の広告。軸後端を緩めることでインクが流れる道ができる機構があることも特徴だった

パイロット カスタム823のプランジャー式は、真空式とも言われる。ロッドを引いて軸内に真空を作り内部圧の違いで一気にインクを吸入する。これは1906年ごろから使われている長い歴史を持つ方式なのだ。

まだまだあります、さまざまな吸入機構。

ボタンに連動する内部の板バネの動作で吸入する「ボタン式」。

首軸を外してインクを軸内部にスポイトで入れるアイドロッパー式。

クレセント(三日月)形のパーツで吸入する「クレセントフィラー式」。

レバーを押して内部のチューブを圧縮して吸入するレバー式。

参考文献:「万年筆クロニクル(すなみまさみち/古山浩一共著・枻出版社)」

(出典/「趣味の文具箱特別編集 万年筆とインク入門」)

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