ドラゴンや白鷺をモチーフとした初出し作品。
中野喜啓さん(以下/中)こちらの作品、実は過去に一度もリリースしたことがない初出しとなります。
松島親方(以下/松)おぉ、本邦初公開ですね。
中/抜染でトロピカルな雰囲気もあるんですけど。
松/そうですね、カラフルだし。これは何の柄なんですか?
中/ここを見ていただくとドラゴンの顔があります。
松/あ、顔いた! これ植物かと思ったら鱗なんですね。
中/抜染で植物風に描かれていますが、ドラゴンが飛び回るような躍動感のあるデザインになっています。
松/当然この柄もヴィンテージで存在していたんですよね?
中/はい、1940年代後期の作品です。ドラゴンというモチーフは、割とアロハシャツの中でも定番的な存在なんですが、こちらは中華風な雰囲気の珍しいデザインなんです。
松/和柄らしいドラゴンの雰囲気はあまりないですね。
中/この作品のルーツですが中国系移民の文化にあります。彼らは旧くからハワイへ入植して寺院などを作り、様々な中華系の文化をハワイにもたらしました。その後、日本人の移民がハワイに渡りアロハシャツを作るようになり、その影響で中国系移民のテーラーたちもオリエンタルなデザインを手掛けていったんです。
松/色彩が鮮やかでいいですね!
中/オリエンタルな雰囲気なんですがトロピカルな色使いもあり、和の要素も少し入っています。ハワイとアジア、日本、中国の文化が程よく混ざった、見応えのあるデザインになっていると思います。
中/実はこちらの作品も初出しなんですよ。
松/綺麗な鳥が描かれていますね。何の鳥なんですか?
中/モチーフは白鷺となっています。鶴や燕など様々な鳥のデザインがアロハシャツには存在をしていまして。生地が縮緬素材なので当時、日本の京都にある染工場「アロハ貿易」でプリントされて、その生地をハワイに送り現地でアロハシャツに仕立てられた作品ですね。数ある和柄の中でも非常に珍しいのがモチーフである白鷺の周りを縁取るように少しぼかして、白鷺を強調させた部分なんです。
松/白鷺の部分ですか?
中/よく見ると白鷺の縁取りに少し色が入っているんですよ。
松/本当だ!
中/一般的な抜染だとモチーフとグラウンド(地)の部分がスパッと綺麗に色が分かれているんです。また通常の和柄に関してもあまり重色をさせないように、グラウンドの色とモチーフのデザインの色にメリハリをつけてプリントするんですが、このアロハシャツは白鷺の身体を縁取るようにグラデーションをかけて、よりモチーフが強調されるようにしているんです。
松/当然、くどいようですけど、これもヴィンテージを所有されていて復刻していると。
中/もちろんです。このアロハシャツも旧く、1950年代後期の作品となっています。モチーフとして白鷺が使われるのは珍しく、そのモチーフを強調するような描かれ方を手に取って見ていただけたら嬉しいですね!
オーキッドや孔雀など、アロハ定番の柄も充実のラインナップ。
松/今季のサンサーフも凄く充実していますね。
中/いろいろと素敵なアロハシャツを用意してありますよ(笑)。
松/これはハワイらしいトロピカルな植物が描かれていますね。
中/カトレア・オーキッドという植物になります。私が着ているのがブラウンの配色になるんですが、カトレア・オーキッドはハワイでは有名な植物なんです。例えばオアフ島・ワイキキの有名ホテル「ハレクラニ」のシンボルにもなっています。
松/そういえばハレクラニにオーキッズっていうレストランがありますね。
中/そうなんですよ、あとハレクラニのプールの底の部分にカトレア・オーキッドの花が大きく描かれていたり。ハワイではやはりカトレア・オーキッドというのはすごく有名な植物として昔から親しまれてきたので、アロハシャツのモチーフとしても多くのブランドが好んだデザインになっています。このアロハシャツもサンサーフでは初出しとなります。
松/おぉ、これも初出し。なんかこういう植物の柄って見たことある感じするじゃないですか。ハイビスカスだったりモンステラだったり。だから前にもあったかなと思っていました(笑)。
中/元々のヴィンテージの配色を見ても少し柔らかめの配色となっていて、色味がフェードしたような柔らかい雰囲気のデザインとなっています。なのでとても着やすくて僕は大好きなんです。
松/中野さんは花柄が大好物ですもんね!
松/今季の新作は欲しくなるものがいっぱいで困ります(笑)。これもまたインパクトのあるデザインですね。孔雀は存在感あるなぁ。
中/ありがとうございます! 実はアロハシャツのモチーフで孔雀に関わるデザインは多いんですよ。
松/ほう、それはなぜなんですか?
中/それはハワイ王家の方たちが好んで孔雀を飼っていたからなんです。特にですね、その当時のハワイの人たちから絶大な人気を誇っていたカイウラニという王女がおりまして。
松/カイウラニ王女ですね。
中/そのカイウラニ王女が特に孔雀を大事にされていたんです。ちなみにこのアロハシャツには“ピカケ”という名称がついているんですが、これは英語のピーコックが転じたものです。また孔雀柄のアロハシャツは当時から市場でもすごく人気だったようです。
松/ちなみにですがこのアロハシャツは何年代ぐらいのものなんですか?
中/これは1950年代初期のものとなります。
松/初見の印象はもの凄く派手だなと思ったのですが、実際に羽織るとすんなり着れてしまう不思議な柄ですね。私の個人的な購入候補として、今ものすごく上位にランキングされていますよ(笑)。
中/嬉しいですね! 読者の皆様にも一度試着していただいて孔雀柄の魅力を味わってもらいたいです。
サンサーフファンおなじみの柄も新たに登場。
中/サンサーフが以前に出したアロハシャツ本にも掲載されているので、昔からのファンの方だと見たことがあるデザインだと思いますが、このテキスタイルを手掛けたのがジョン・メイグスです。
松/アロハシャツ好きの間ではレジェンドである、ジョン・メイグスのデザインなんですね。
中/ジョン・メイグスはポリネシアン・カルチャーを愛した人物なので、この作品には彼のその愛情がふんだんに落とし込まれています。
松/トンガって、あのトンガですよね。ここにはニューギニアって書いてある。あと、どこの地名が入ってますかね?
中/サモアですね。あとフィリピン、フィジーもあります。ポリネシアンなど南洋の島々はジョン・メイグスにとっては本当にかけがえのないデザインソースでしたので、カタマラン・カヌーに乗り込んでハワイへ渡ってきたハワイ先住民たちの歴史がこのデザインに詰まっているんです。
松/ジョン・メイグスの好きなモチーフが全部ここに詰まっているんですね。
中/その想いがデザインで巧みに表現されています。また彼の好きな配色など癖がすごく出ていますので、ジョン・メイグス好きの方にはかなり“沼る”デザインではないでしょうか!
松/あれ? このアロハシャツはどっかで見たことあるぞ。
中/このウクレレやハイビスカスのモチーフですよね? これらを使ったある有名な柄があるんですけれど。
松/あっ、マッキントッシュのメニュー柄!
中/そうです、でもモチーフが一緒なだけであって、このアロハシャツはメニュー柄とは異なるんですよ。
松/なるほど、似ているからメニュー柄に関連しているかと(笑)。
中/この作品についてハワイやアメリカ在住のアロハシャツを集めているコレクターの方々とお会いした時に、メニュー柄に似ているとよく話題になるぐらいです。でもやはり皆さんは、似てるけど多分書いた人が違うと仰るんです。その当時よくあることなんですが、人気のある柄というのはそのモチーフを真似たりアレンジしたりして、別のブランドが販売していたりしていました。
松/まあ、ありがちな話ですね。
中/そんな歴史背景の中から生まれた1枚となっています。
松/そういったちょっと面白いエピソードを知っていると、メニュー柄に似てるなっていう見方ができますね。初見の印象はすごく色鮮やかで、特にハイビスカスの描写が素晴らしい!
中/この柄は6色の抜染で表現していて、モチーフをボーダー・パターンでまとめているのもポイントです。
松/このネイビーの他にブラウンとオフホワイトもあって、どれを選ぶか悩ませる色展開ですね。
中/実際に着てみると色によって雰囲気もだいぶ変わりますので、ぜひお店で実物を見ていただきたいです。
【問い合わせ】
サンサーフ(東洋エンタープライズ)
TEL03-3632-2321
https://www.sunsurf.jp
※情報は取材当時のものです。
(出典/「Lightning 2024年5月号 Vol.361」)
Text/A.Shirasawa 白澤亜動 Photo/M.Watanabe 渡辺昌彦、K.Torii 鳥居健次郎(WandP)
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