エンジンルームで輝く赤ヘッドのエンジン。
日本初の国民大衆車として知られるスバル360は、中島飛行機を前身にもつ富士重工業、後のスバルで生産された同社初の4輪自動車だ。リアエンジン、リアドライブのフルモノコック構造とし、サスペンションは日本初採用となるトーションバースプリングによる四輪独立懸架という当時としては画期的な自動車。’58年から’70年まで12年に渡って生産された、日本の自動車史に輝く名車だ。
ここに紹介するのは、モデル後期に若者向けにチューニングを施し、36馬力エンジンを搭載した’67年式のヤングSS。オーナーである田中さんが今から10年前に購入した個体だ。購入当初はそのまま乗っていたが、奥様がメインで乗ることもあって力不足と乗りづらさをなんとかしたいと考えるようになった。
そこでダディモーターワークスの尾頭さんのところに持ち込まれ、よりパワフルで信頼性の高いエンジンにスワップすることとなった。スワップドナーに選ばれたのは、同じスバルの直系の子孫にあたるサンバーのドライブトレインだ。
そんなサンバーの中でも赤帽専用車に搭載されるエンジンは、各部にチューニングエンジンのような高効率、高耐久のパーツが組み込まれているスペシャルユニット。そこでこの赤帽サンバーのEN07型ユニットをトランスミッションごと搭載することとなった。
ドナーが軽自動車とはいえ、驚くほどコンパクトな360の車体にサンバーのエンジンを押し込めるのは並大抵のことではないはず。事前のリサーチの結果、発展車種のR2にサンバーエンジンをスワップした前例があったため、いけると判断して 作業を進めたそうが、尾頭さんも「これだけは二度とやりたくない」というほど、作業は大変だったそうだ。
次に大きな問題となったのが冷却系。空冷の360にはラジエターグリルが存在しない。そこでまずはエンジンルーム内に電動ファンを装着したアルミラジエターを設置し、フロントフード内にもセカンドラジエターを設置している。
ちなみにサンバーはリアエンジン、リアドライブなので、エンジンとトランスミッションをゴッソリと移殖している。そのためリアホイールは一般的な4穴ホイールに純正キャップを装着することで、見た目はノーマル風のまま、若干のワイドリム化も果たしている。
こうしてスワップ作業は無事完成。見た目はそのままに、エアコンも効き快適なドライブが可能なコンパクトクルーザーが誕生した。
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