高級SUVのルーツとなった、ジープの名作4ドアワゴン「ワゴニア」。

この写真のワゴニアのオーナーは日本屈指のワゴニア専門店であるバディオートの水野氏。17年前ショップのオープン準備で初めてアメリカに買い付けに行った際に出会ったという代物なんだそう。それ以来、乗っていて、バディオートの看板となっている一台だ。

ワゴニアといえば、30年ぶりに復活することもあり再び注目を浴びている。高級SUVの先駆けともいえる不朽の名作をディテールまで細かく見ていこう。

▼復活するワゴニアはこちらをチェック!

ずいぶん立派になった30年ぶりの「ただいま」。 2021 ジープ・グランドワゴニア・コンセプト

ずいぶん立派になった30年ぶりの「ただいま」。 2021 ジープ・グランドワゴニア・コンセプト

2023年07月04日

JEEP WAGONEER(ジープワゴニア)とは?

アメリカ軍に軍用車を納入していたカイザー・ジープ・コーポレーションが1961年にリリースしたワゴニア。発表は1962年10月。このときはWillys Motorであったが63年の発売時には社名をkaiser Jeep Corporation
に変更。

それまではスパルタンな乗り味であったジープに高級セダン顔負けの快適性をコンバーションするという発想は、現代の高級SUVの原点と言っても過言ではないはず。以後、AMCクライスラーと3社に渡って製造が続けられ、生産終了となった1991年まで基本コンセプトを変えなかった稀有なクルマとして知られている。

とは言え大きな節目は何度かあり、1966年の上級グレードスーパーワゴニアの登場、1970年のAMCへの移行、1979年の角目になったフロントマスク、1983年のグランドワゴニアの登場、1989年のクライスラーへの製造権譲渡。

この車両は、AMCに移行して間もない1972年のもの。随所にカイザー社の名残がある移行期らしいディテールが見受けられるマニア垂涎の1台だ。

1972 AMC JEEP WAGONEER(エーエムシー/ジープワゴニア)のディテールをチェック!

ノスタルジックなデザインのラジオは、インパネ中央にレイアウト。両サイドに灰皿が配置され、ツマミまでキッチリとクロームパーツ。下にはグローブボックスが付き、シンプルながらも十分なもちろんワーキングコンディション。

移行期らしいディテールのひとつが、ハンドルに付いたジープのロゴ。AMC のコーポレートカラーはトリコロールカラーであるが、カイザー時代から使われているオレンジとゴールドのカラーリングを継承しているのがおもしろい。

インパネのデザインも時代によって異なっている。まだカイザー時代のデザインを継続していて、’60年代のテイストを強く匂わせる。その後はデザインが更新され最終のグランドワゴニアでは3分割されたレイアウトに。

ライトまわりなどの作りやデザインも旧きよきアメリカを感じさせる手の込んだ意匠。トランクスペースは思っている以上に大きく、リアゲートはウインドーを下げてから、手前に開ける。開いた部分に大人が座っても大丈夫。

1972年の大きな特徴が迫力のあるフロントマスク。一つ目の丸いライトからコーナーに続いていくクロームメッキのデザインパーツが施されているため、ワイドに見える。フロントのグリルは3年から5年で変更される。

オプションであった純正のキャリアは、クロームメッキを使用。台座の部分などが凝った作りとなっており、現在では考えられないような手間暇が掛かっている。富裕層に向けた実用車であったので、キャンプなどで必要不可欠だったはず。

シルバーとブラックで塗り分けられたリアのパネルもこの年代しか使われていないレアな仕様。AMCになってもジープブランドのエンブレムは数多く見られ、いかにブランド力のあるクルマだったことがわかる。

移行期ならではのエンブレムがおもしろい!

リアに付いたオリジナルのエンブレム。360はAMCを代表するV8エンジンの標記で排気量(5.9ℓ)を表す。この世界初の4WDとなり、当時としては画期的な仕様だった。

アメリカン・モーターズのエンブレムも並行してつけられている点も、この車両の面白いところ。移行期なので、この年代にしかないディテールが豊富。

随所にジープのロゴが入ることからも、ジープ社が威信をかけて世に送り出したモデルだったのだろう。年代によって書体のデザインが異なるのもヴィンテージフリークの心をくすぐるポイントである。

純正ホワイトリボンタイヤを合わせて、オフロードカーとの差別化を図っている。センターにあるジープのロゴは、カイザー時代のカラーリングを採用。この後に、AMC のコーポレートカラーであるトリコロールのデザインに変更される。

1972 AMC JEEP WAGONEER

  • サイズ:全長4735㎜×全幅1900㎜×全高1687㎜
  • エンジン:V型8気筒/ OHV
  • 総排気量:5890㏄
  • ミッション:3AT
  • 車両重量:2048㎏
  • 所有:BUDDY AUTO 横浜市港北区新羽町1218-1 TEL045-534-0030 http://www.lucent-jp.com/buddy/

(出典/「別冊Lightning Vol.165 VINTAGE CARS」)

この記事を書いた人
Lightning 編集部
この記事を書いた人

Lightning 編集部

アメリカンカルチャーマガジン

ファッション、クルマ、遊びなど、こだわる大人たちに向けたアメリカンカルチャーマガジン。縦横無尽なアンテナでピックアップしたスタイルを、遊び心あるページでお届けする。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

革ジャン職人が手掛ける、経年変化するレザーハット気にならない?

  • 2025.10.31

気鋭のレザーブランド「KLOOTCH」のレザーハットラインとしてスタートした「Brunel & Co.」独学のレザージャケット作りで磨いた革の感覚を、“帽子”という舞台で表現する──。自らの手仕事で理想の革を探求する職人が辿り着いた、新たなレザークラフトの到達点。 革ジャン職人の手が導く、生...

【Punctuation × 2nd別注】手刺繍のぬくもり感じるロングビルキャップ発売!

  • 2025.10.29

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【Punctuation × 2nd】ロングビルキャップ[トラウト] 温もりのある手仕事が特徴の帽子ブランド「パンク...

【土井縫工所×2nd別注】日本屈指のシャツファクトリーが作る、アメトラ王道のボタンダウンシャツ発売!

  • 2025.10.07

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! トラッド派には欠かせない6つボタンのBDシャツ「6ボタン アイビーズB.D.シャツ」 アメリカントラッドを象徴するア...

渋谷、銀座に続き、ブーツの聖地「スタンプタウン」が東北初の仙台にオープン!

  • 2025.10.30

時代を超えて銘品として愛されてきた堅牢なアメリカンワークブーツが一堂に会するブーツ専門店、スタンプタウンが宮城県仙台市に2025年9月20日オープン! 東北初となる仙台店は北のワークブーツ好きたちにとって待望の出店となった。 珠玉の銘品たちがココに揃う。 ブーツファンが待ち焦がれた東北エリア初となる...

生きたレザーの表情を活かす。これまでになかった唯一無二の革ジャン、「ストラム」の流儀。

  • 2025.10.30

生きたレザーの質感にフォーカスし、“バーニングダイ”をはじめとする唯一無二のレザースタイルを提案するストラム。我流を貫き、その意思を思うがままにかき鳴らすことで、オリジナリティを磨き上げる孤高のレザーブランドだ。デザイナー桑原和生がレザーで表現するストラムのモノ作りの哲学、彼が革ジャンを通して描き出...

Pick Up おすすめ記事

進化したSchottの定番、冬のレザースタイルはこれで決まり!

  • 2025.10.30

アメリカンライダースの象徴であるSchottが、原点回帰とも言える姿勢で“本気”を見せた。伝統のディテールに、現代的な技術と素材を融合。武骨でありながらも軽快、クラシカルでありながらも新しい。進化したSchottの定番が、冬のレザースタイルを再定義する。 668US SPECIAL HORSEHID...

革ジャンの新機軸がここに。アメリカンでありながら細身でスタイリッシュな「FountainHead Leather」

  • 2025.10.31

群雄割拠の革ジャン業界において、カルト的な人気を誇り、独自のスタイルを貫くファウンテンヘッドレザー。アメリカンヘリテージをベースとしながらも、細身でスタイリッシュ、現代的な佇まいを見せる彼らのレザージャケットは、どこのカテゴリーにも属さない、まさに“唯我独尊”の存在感を放っている。 XI|シンプルな...

“黒のコロンビア”って知ってる? オンオフ自在に着回せる、アップデートされたコロンビアの名品を紹介!

  • 2025.10.21

電車や車といった快適な空間から、暑さや寒さにさらされる屋外へ。都市生活は日々、急激な気温差や天候の変化に直面している。実はその環境こそ、自然で磨かれた「コロンビア」の技術が生きる場だ。撥水性や通気性といったアウトドア由来の機能を街に最適化し「コロンビア ブラックレーベル」は、都市生活者の毎日を快適に...

渋谷、銀座に続き、ブーツの聖地「スタンプタウン」が東北初の仙台にオープン!

  • 2025.10.30

時代を超えて銘品として愛されてきた堅牢なアメリカンワークブーツが一堂に会するブーツ専門店、スタンプタウンが宮城県仙台市に2025年9月20日オープン! 東北初となる仙台店は北のワークブーツ好きたちにとって待望の出店となった。 珠玉の銘品たちがココに揃う。 ブーツファンが待ち焦がれた東北エリア初となる...

革ジャン職人が手掛ける、経年変化するレザーハット気にならない?

  • 2025.10.31

気鋭のレザーブランド「KLOOTCH」のレザーハットラインとしてスタートした「Brunel & Co.」独学のレザージャケット作りで磨いた革の感覚を、“帽子”という舞台で表現する──。自らの手仕事で理想の革を探求する職人が辿り着いた、新たなレザークラフトの到達点。 革ジャン職人の手が導く、生...