どちらにも共通しているのは、ミリタリーユースに要求される堅牢な作りと高い走破性が評価され、一般に販売されると、オフロードビークルとして高い人気を誇ったという点だ。そしてどちらもその姿をあまり変えることなく今日まで伝統を受け継いできた。そんな2台を比較する。
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軍用にも使用可能な高い堅牢性と道なき道を走破できるごつい足回りを持つ米英の四輪駆動車を比較する!
決して有名デザイナーが設計した美しいボディを持つわけでも、快適装備が充実しているわけでもない。むしろ現代車にくらべれば、装備は最低限。しかしどちらのクルマも道なき道を走ることに長け、必要な装備は全て備えている。直線で構成された四角いボディからは無骨さゆえのカッコ良さが滲み出ているのだ。
快適な舗装道があるのに、あえて林道を進みたくなったり、寒い日なのに革ジャンを着て窓全開で走りたくなる。ディフェンダーとジープにはそんな男の冒険心をくすぐる何かを持っている。ディフェンダーの生産終了のため、2台の新車が並ぶのはこれが最後の機会になるかもしれない。それぞれの特徴を見ていこう。
米軍の要請で作られた、小さな働き者【2016 Jeep® Wrangler Unlimited 75th Anniversary Edition】
- 2016 Jeep® Wrangler Unlimited 75th Anniversary Edition /全長4705㎜/全幅1880㎜/全高1845㎜/ホイールベース2945㎜/車両重量2040㎏/乗車定員5名/エンジンV型6気筒DOHC /排気量3604㏄/最高出力209kW(284ps)/6350rpm /最大トルク347Nm(35.4kgm)/4300rpm /トランスミッション電子制御式5速AT /タイヤサイズ255/70R-18 /価格443万8800円
第二次大戦中にアメリカ陸軍の要請により誕生したJeep®。当初ウィリス・オーバーランド社の他、フォード社やバンタム社も試作車を開発。最終的にウィリス社の案が採用されたが、生産能力を補うべくフォードにも生産を委託された。’41年にウィリスMB、フォードGPWとして同一仕様の車両を生産開始。戦時中におよそ60万台以上が生産されたのだ。
ウィリスMBは、戦後民間向けに、CJ(Civilian Jeep の意)シリーズとしてほとんど姿を変えず販売された。戦中の試作車CJ-1、プリプロダクションモデルCJ-2を経て、戦後’45年にCJ-2Aを発売する。MBと最も大きな違いは、ヘッドライトの直径が大きくなり、それに伴いグリル周りの意匠が変更となった点、MBでは9スリットだったグリルも、後に有名となる7スロットグリルとなる。
その後ウィリス社は’53年にカイザー社に買収され、続けてカイザーも’70年にAMCに買収されてしまう。その後AMCはルノー傘下となるが、’87年にクライスラーに吸収され、そんなクライスラーも’98年にダイムラーと合併、’07年に合併を解消すると、今度は’09年にフィアットの傘下となり、現在のJeep®ラングラーは、フィアットクライスラーの車両として現行のJK型へと進化を遂げている。車格もふた回りほど大きくなり、内装も洗練されたが、7スロットグリルは健在だ。
ルーツとなった第二次大戦の最中にウィリスが製造した軍用車MB型は、戦後M38としてアメリカ軍に正式採用される後継モデルと、これを民間用にモディファイしたCJシリーズに別れ、それぞれ進化を続けてきた。やがて軍用モデルはフォード社製の後継モデルM181の登場とともに生産台数を減少。一方のCJシリーズは、幾度ものモデルチェンジを経て現在のJK型へと続いている。
日本で発売されている正規輸入車は、右ハンドルとなる。グローブなどをしていても操作がしやすいよう、スイッチ類は大きめに設計されているといわれている。
エンジンは3.6リッターV6のガソリン仕様で、284馬力を発生。電子制御の5速ATの組み合わせで、高速走行も快適にこなせる。
ドアなどのヒンジはボディの外に剥き出しとなっている。これは被弾などのダメージを受けた際に簡単に脱着できるように工夫されていたMB型の名残りだ。
基本的にオープンボディにハードトップを搭載した構造となるため、屋根は簡単に脱着可能。特にフロント部分は工具不要で簡単に外すことができる。
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第二次大戦中のジープに影響を受けて自国で製作【2015 Land Rover Defender 110】
- 2015 Land Rover Defender 110 /全長4599㎜/全幅1790㎜/全高2070㎜/ホイールベース2794㎜/車両重量2055㎏/乗車定員7名/エンジン直列4気筒ディーゼル/排気量2198cc /最高出力90kW(122ps)/3500rpm /最大トルク360Nm(35.4kgm)/2000rpm / トランスミッション6速MT /タイヤサイズ235/85-16 /価格920万円
第二次大戦中にアメリカ製Jeep®の活躍を受けて、英国のローバー社によって四輪駆動の多目的車を開発。’48年にランドローバー・シリーズIとしてデビューし、この車両が現在のディフェンダーのルーツとなる。シリーズIは、すぐに英国陸軍などに正式採用されるが、中でも有名なのが、SAS向けに砂漠で目立たないようにピンクに塗装されたピンクパンサーだ。
現在ディフェンダーと呼ばれるクルマは、’83年にシリーズIIIのマイナーチェンジ版として登場。当時はディフェンダーとは呼ばれず、110インチ(2794㎜)というホイールベースから、単にランドローバー110と呼ばれていた。その後’84年にショートホイールベース版の90(WB93インチ)が、’85年にロングホイールベース版の127(WB127インチ)が登場。現在まで続くラインナップの基本が完成する。
長らく車名はなく、90、110、127と呼ばれていたが、’89年にランドローバーからディスカバリーが登場することで車名が必要となり、ディフェンダーという名称に変更となった。またこのタイミングで127はキリの良い130へと変更となっている。その後も大きな外観の変更もなく、生産されつづけていたディフェンダーだったが、’15年末をもって生産を終了。長い歴史に幕を閉じることとなったのだ。
ローバー社によって’48年に製造されたランドローバー・シリーズ1は、すぐに英国陸軍に採用され、軍用車として活躍した。特に特殊部隊SASが砂漠で使用するために、全体をピンクにカモフラージュ塗装した通称PINK PANTHERはあまりにも有名。写真は今年(2017年)にランドローバーが世界限定25台でシリーズ1をレストアした個体。
通常は塗装前にキレイに処理されるボディ表面はスポット溶接の跡や、リベット留めの突起がそのまま残る。これもまた無骨なディフェンダーならでは。
エンジンは2.2リッターのディーゼルターボで、122馬力を発生する。直列5気筒やV8の設定もあった広いエンジンルームの後方に搭載されている。
英国車ゆえに本国仕様も右ハンドルとなる。ジープとダッシュの意匠が似ているのは偶然ではなく、質実剛健な設計の結果、必然的に似てしまったのだろう。
110モデルはセカンドシート後方に格納式のサードシートが備わり、合計で7名が乗車可能。ご覧のように格納してしまえばラゲッジスペースはかなり広い。
いかがだったろうか。惜しくもディフェンダーは今後見かけることが少なくなっていくことになるが、英国とアメリカを代表するヘビーデューティな2台の4WDの姿を目に焼き付けておきたい。
(出典/「Lightning 2017年6月号 Vol.278」)
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