およそ100年前に生まれたアスレチックウエアの革新的ディテールを日本の伝統技術である吊り編み製法と掛け合わせて極上の1枚へとアップデートした3モデルを紹介しよう。
アメリカンスポーツの発展とともにある一着
1876年創業のA・G・スポルディング&ブロス(以後、スポルディング)は、スポーツ用品メーカーとして、それまで規格が統一されていなかったアメリカ野球の硬式球を1878年に開発。後の1887年には世界初のアメリカンフットボールを生み出すなど、今ではメジャースポーツとして確立されたアメリカ2大競技の発展に大きく貢献した。
1920年代に入ると選手やコーチたちが着用するアスレチックウエアに目を向けて、各種競技のユニフォームやトレーニングセーターなどの製作に着手する。「ボクシンググローブ型ポケット」や「袖のV字ガゼットスリーブ」などの意匠はスポルディングが元祖であり、ヴィンテージスウェットを象徴するディテールとして、いまでも古着市場では非常に高値で取引がされている。
ここで紹介するのは、そんな100年前の希少なヴィンテージピースを忠実に再現しながらも国産吊り裏毛を使用することで、極上の1枚へとアップデートした3モデル。和歌山の名門ニッターが有する貴重な吊り編み機を稼働させ、弱いテンションでゆっくりと編まれたスウェット生地は柔らかく弾力があり、まるでヴィンテージさながらの風格。紺ブレのインナーに合わせれば、かつてこんなアイビーリーグの学生たちがいたのではないかと、勝手な妄想も膨らむほどだ。
旧きよきスウェットの象徴的ディテールの元祖「SIDE-LINE PARKA」
原型は1930年代に考案された防寒用のベンチウォーマー。ボクシンググローブ型ポケットや端をかがり縫いしたロックフーディ・クロスネックなどの特徴的なディテールは踏襲しつつ、オリジナルではダブルフェイス仕様になるところを、着回しやすい一枚生地にアップデート。旧式吊り編み機でゆっくりと編まれたスウェット生地は弾力があり、ヴィンテージのような風合い。ダブルフェイス仕様もあり。3万800円
手が出し入れしやすく、左右が独立しているため収まりもいい、通称ボクシンググローブ型ポケットはスポルディングのオリジナルであり、古着市場でも人気の高いディテール。
ヴィンテージをチェック!
こちらは1930年代のヴィンテージ。胸と背中にはYALEのステンシルが入ることからも、実際にアイビーリーガーたちが着用していたことがわかる。タグはMade in U.S.A.表記のない、通称カナダタグが付いている。
大きく切れ込みの入った袖リブもスポルディング独自の意匠「TRAINING SHIRTS」
ネック前後にV字ガゼットが施された往年のヴィンテージデザインを持つシンプルなクルーネックだが、袖のリブに注目したい。内側に大きく切れ込みのように入るガゼットは、当時伸縮性が乏しかったリブでも袖を通しやすいように生まれた意匠である。こちらも国産吊り裏毛の高品質スウェットを使用。2万5850円
ヴィンテージをチェック!
この意匠が実際に採用されていた1920年代のヴィンテージ。当時のスウェットはコットンウールの混紡素材で作られていたため、どうしても伸縮性には難があった。
極初期デザインを国産吊り裏毛でモダンにアップデートした「FOOTBALL SHIRTS」
ウール100%で作られていた1920~30年代のスウェットによく見られるディテールを踏襲。首から肩にかけて大きく入ったフライスや脇下のガゼットは、生地自体に伸縮性がなかった時代のアスレチックウエア特有の意匠。生地を上質な吊り裏毛にすることで程よくモダンなルックスに生まれ変わった。2万5850円
ヴィンテージをチェック!
首から肩にかけて入るフライス部分がツートーンで切り替わる1920年代のフットボールセーター。この意匠が後の両Vガゼットに進化したと言われている。
コラボアイテムにも注目!
JELADO別注! ありそうでなかったカラー
今シーズンで2回目のコラボというジェラード代表の後藤さんは、「僕らみたいなヴィンテージ好きなら、スウェットの中でも特別な位置づけにあるブランド。特に僕らもかつてサンプリングしたグローブポケットは、まさに象徴とも言える名ディテールだと思います」という。
「ブランド所有のアーカイブからダブルフェイスのプルオーバーパーカをベースに、ありそうでなかったバーガンディで両色ともにリバーシブルに仕上げました。ざっくりとしたサイジングもダブルフェイスにしっくりハマっています」
特別なダブルネーム。リバーシブル仕様で一面はフードとリブに元色を活かしたバイカラー、もう一面は単色で着回しやすい。4万800円(ジェラードTEL03-3464-0557)
BRIEFING別注は、旅や移動を意識したモダンセットアップ
「ブリーフィングの根底にあるミリタリーなテイストを、いかにモダンに取り入れるかが、まずは大前提としてありました」と、ディレクターの吉本さんも語るように、イメージソースはUSアーミーの現行トレーニングウエア。オリジナルのラフなイメージに対して、風合い豊かな吊り編みスウェットで品良くクリーンな印象にまとめている。
「着想はセットアップですが、トレーニングやアクティビティというよりも旅や移動を意識しています。ラフ過ぎず、タイト過ぎないサイジングにも気を配りました」
アイコンディテールであるボクシンググローブポケットをパンツに取り入れた。トップス、パンツともに2万8600円(ブリーフィング 六本木ヒルズTEL03-6434-5922)
【問い合わせ】
スタンレーインターナショナル
TEL03-3760-6088
http://agspalding.co.jp/
※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
Photo/Ryota Yukitake Stylist/Syun Iizuka Text/Kazuki Ueda, Takehiro Hakusui Hair&Make/Daisuke Yamada
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