「ビームス フェニカ」が、浅草の気鋭シューメーカーRENDOとつくりあげる「泥染めレザー」の靴。

ビームス フェニカとレンドがレザーにも泥染めというユニークな3タイプのシューズを新提案。鞣し、染色、製作までが国内熟練工によって紡ぎ出される純国産グッドイヤー靴の経緯を、仕掛け人である「ビームス フェニカ」バイヤー・渡辺翼さんと「レンド」デザイナー・吉見鉄平さんのおふたりに伺う。

右)「ビームス フェニカ」バイヤー・渡辺翼さん|長年にわたりフェニカの屋台骨を支えてきた渡辺さんが、昨年よりバイヤーに就任。アメリカンヴィンテージから和装、民芸まで幅広い知識と確かな審美眼を併せ持つ 左)「レンド」デザイナー・吉見鉄平さん|本場の靴作りを学ぶために渡英。帰国後は国内靴メーカーにて経験を積み、2007年に独立。自身でパターンから起こすオリジナルブランドとショップ「レンド」をスタート

泥染めの文様がアクセントとなる柔らかなツートーン。

世界でも最も知られた観光名所にして東京クラフトシーンの中心地としても有名な下町・浅草。明治時代より軍靴の一大産地として栄えた、この街に拠点を構えるレンドの吉見鉄平さんは、かつてオーストリアの名門〈ロサモサ〉にてシューパタンナーとしても活躍した今日のジャパンシューメーカーを代表する気鋭作家のひとりでもある。

そんな吉見さんにフェニカが立てた白羽の矢は、「泥染めレザーを用いたオリジナルシューズ」というお題目。今季コレクションのなかでも、ひときわ異彩を放つ別注レザーシューズが生まれ出るまでを、それぞれの立場から振り返っていただいた。

渡辺翼さん 吉見さんとのコラボレートは今回で3シーズン目となります。前任のディレクターがレンドの靴作りに惚れ込み、コンフォートシューズをメインとする新レーベル(テップ)の立ち上げとほぼ同時期にフェニカでもセレクトさせていただくようになりました。今回の泥染めレザーを用いた企画では、奄美の工房に同じ染色法でレザーを扱っている職人さんをご紹介いただいたことがきっかけで、まず革ありきでのスタートとなったため、早速、オーダーシューズを得意とする吉見さんに相談させていただきました。

——そもそも泥染めレザーの存在はご存知でしたか?

吉見鉄平さん そうですね。あること自体は薄っすら聞いていましたけど、まさか自分が扱うことになるとは思っていませんでした。基本的には革小物やバッグなどに使われている革のひとつで、我々靴職人にはなかなか縁遠いものだと考えていましたし。

——実際に泥染めレザーを手にして、どのように思われましたか?

吉見さん ぼくらが普段扱う革とは厚さや性質も全く異なるものでした。例えば、強めにテンションをかけて吊り込むアッパー部分に使うのは若干難しいのかなと。それに、かなり個性的な表情ですから、どうやって靴に落とし込むかを結構悩みましたね。

渡辺さん 今回使用した泥染めのレザーは、鞣しから染色まで、すべて奄美の職人さんによるものなのですが、レザーに染料を定着させる工程が何より難しいと伺っています。染色することで硬くなってしまったり、逆に硬くならないように染めを甘くすると色抜けを起こしてしまうようで、職人さんからも定着工程だけはトップシークレットと釘を刺されたりも。

吉見さん 革がパリパリになってしまったりするみたいですね。

——テーチ木染めや泥染めレザーでは絞り染めのような、タイダイ柄が一般的なのでしょうか?

渡辺さん もちろん絞り染めだけでなく、革を全体的に染めることも可能だと聞いていますが、今回は天然染めのニュアンスや醍醐味がより伝わるよう、タイダイ柄のものをセレクトしました。

テーチ木染めと泥染めを施したレザーはあえてムラ感を出した、他にない表情に

伝統と遊び心の静かでさりげない存在感。

羽根部分を泥染めレザーで切り替えた、つまみモカ縫いのVチップモデルは渡辺さんの個人オーダーだが、イベント限定でオーダーも可能

——ベースとなるモデルの選定はどのように?

渡辺さん まずは私の方からVチップのモデルでオーダーさせていただきました。というのも、自分自身で履くことを想定した場合、吉見さんの作ったVチップはまだ持っていませんでしたし、どういった化学反応を起こすかにも興味があったので。そこから次第にコンビシューズのようなデザインに落とし込む方向へ話が進むなかで、ラスト(木型)を選定しました。

フェニカではワークジャケットやミリタリーパンツといったアイテムを定番として展開しているので、まずはそれらとの相性を考え、ややボリューム感のあるラストを用いたUチップモデルと、それまでオーダーをメインで作られていた、やや細身でエレガントな趣きのあるVチップをセレクトさせてもらいました。確かに、個性的な表情ですからエキゾチックに振り過ぎないように、各ディテールにアイデアを出し合いましたね。

——この靴には、どういったシーンや装いを想定されていますか?

渡辺さん なるべくシーンは特定せず、ドレスにもカジュアルにも振り幅を持つユーティリティな靴を目指しました。日本の伝統や職人技、さらには遊び心を程よく表現しつつ、普段使いにも無理なく溶け込む靴だと思っています。

吉見さん 個人的には、かなりチャレンジングな企画でもありました。自分のブランドだったらまず取り扱うことのない素材でしたし。というのも、職人ってどうも保守的になってしまう傾向があるようで、今回の企画を通じて自分のブランドだけでは気づけなかった、新しい発見やトライもできました。こういったユニークなコンビシューズを決してかしこまったスタイルではなく、デイリーユースとして提案できることも、こういったコラボレートならではの利点のひとつですね。

ヒールカウンターを排除して踵を潰しても履けるレンドのカジュアルライン「テップ」への別注モデル。モンクストラップを採用しつつ、ベルト裏にスナップボタンを忍ばせることで容易な脱着を可能にした。3万8500円

この革靴が手に入るのはカスタムオーダー会だけ!

上)インラインでは基本的にオーダーのみの展開だったVチップモデル。タフかつノーブルな印象のあるカウハイドのアッパーを泥染めレザーの外羽根で切り替え、ショルダーレザー使用のインソールにはフェニカのロゴも加えられる。9万2246円(オーダー価格)

中)ドレスラインとは異なるオリジナルラストを採用し、レンドのカジュアルドレスラインを代表するモデルとなった外羽根式のUチップ。アッパーのエプロン部とキルトにムラ感のある泥染めレザーでポップなアクセントを加えている。8万1840円(オーダー価格)

下)同じくブラウンベースの外羽根式Uチップでは、素朴な褐色が特徴的なテーチ木染色のレザーをツートーンで配置。グッドイヤーの魅力でもある堅牢さと長時間履いても疲れにくい利点を活かし、デイリーユースにも最適な一足に。8万1840円(オーダー価格)

RENDO CUSTOM ORDER FAIR

開催期間: 4月28日(金)〜5月7日(日)
開催店舗: fennica STUDIO
新宿区新宿3-32-6 ビームス ジャパン5F
TEL03-5368-7300
営業:11時〜20時
休み:不定休

泥染め、テーチ木染めを施した上記のスペシャルモデルを中心に、レンドが選び抜いたこだわりの素材から選ぶことができる、ここだけの特別なオーダー会をお見逃しなく(数量限定のため、無くなり次第終了となります)

【問い合わせ】
ビームス ジャパン
TEL03-5368-7300
www.beams.co.jp/fennica/

※情報は取材当時のものです。

(出典/「2nd 2023年6月号 Vol.195」)

この記事を書いた人
2nd 編集部
この記事を書いた人

2nd 編集部

休日服を楽しむためのマガジン

もっと休日服を楽しみたい! そんなコンセプトをもとに身近でリアルなオトナのファッションを提案しています。トラッド、アイビー、アメカジ、ミリタリー、古着にアウトドア、カジュアルスタイルの楽しみ方をウンチクたっぷりにお届けします。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

「FIRST ARROW’s」秋の銀祭り。

  • 2026.10.10

ようやく暑さも和らいでオシャレが楽しめる秋の到来とともに、ファーストアローズから届いたこの秋にオススメのアイテムがコチラ。稲妻を模した「ライトニング」シリーズから定番品まで、お気に入りのアイテムとともに更なるスタイルアップを目指せ! Pendant メインとなるモチーフのチョイスはもちろん、単品なの...

今季ワードローブに加えたいアイテムを厳選紹介! 「EIGHT-G」で秋支度。

  • 2026.10.04

秋の装いが楽しくなる季節。ミリタリーやワークといったアメリカ由来の実用服をベースに、素材やディテールへこだわりを詰め込んだエイトジーの新作から今季のワードローブに加えたいアイテムをピックアップ。 (右)ジャケット110,000円(TMJ2615)、シャツ23,100円(8LS-81)、ジーンズ24,...

労働者やアウトドアマンに愛された実用服。「ウエアハウス」のフランネルシャツ

  • 2026.10.02

ミクロレベルまで研究し、古着と見間違うほどのプロダクツを現代に蘇らせるウエアハウス。当時の生産技術や時代背景までも丁寧に掘り下げられて完成した服は、限りなくヴィンテージに近い存在だ。そんな彼らが生み出す服こそ、オーセンティックと呼ぶにふさわしい。 糸そのものから再現し旧式の織り機を用いて製作 フラン...

全16色! 10年以上のロングセラーを誇る「HEATH」の名作ネルシャツが超人気なワケ

  • 2026.09.30

秋冬のアメカジ服の定番、ネルシャツ。横浜のセレクトショップHEATHが手がけるオリジナルブランドBLUE PORTのネルシャツが10年以上のロングセラーを誇るとのことで、その人気の秘密に迫る。 【理由①】優れたコストパフォーマンス ディテールやシルエットにもこだわった高いクオリティに対して、なんと税...

Pick Up おすすめ記事

無垢の金属、輝く伝統。純金や純プラチナを使った「市松」の究極の逸品

  • 2026.09.25

純金や純プラチナなど、純度100%の軟らかい金属をアクセサリーにするためには非常に高い技術が必要だ。それを可能にするのが「市松」。約30年にわたって培った“叩く”技術が可能にする唯一無二のリングの輝きに迫る。 熟練の技なくしては完成しない究極の逸品 原材料高騰の影響もあって、希少性が高まっている純金...

憧れのアメリカンハウスに住む! 「SUNNY SPOT」の家づくりを徹底解剖

  • 2026.10.09

福岡・沖縄を拠点にアメリカンな家を作り続ける「サニースポット」。住む人のライフスタイル考慮しつつイメージする憧れの生活を実現する、そんなこだわりの家を手に入れたお宅を訪問! 広い土地を贅沢に使う、カリフォルニア風の平屋[ 石川邸 ] もともとアメリカンなものが好きだったという石川さん。家を作るに当た...

【連載】ビートルズのことを考えない日は一日もなかった

  • 2024.02.05

80年代、私的ビートルズ物語。 ビートルズ研究と収集に勤しむビートルデイズを始めて早44年(Since1980)。 なにをするにもビートルズが基準だった『昭和40年男』編集長のビートルズ史を、 当時の出来事とともに振り返ります。

TRUE SWEATWEAR, MADE IN JAPAN. “未来のヴィンテージ”となる究極のスウェット。

  • 2026.09.29

スウェットやTシャツを中心に、高品質なプロダクトを創り続けるジャパンブランド「RIDING HIGH」。生地や糸より前の“綿”から開発するなど、徹底的なモノづくりの姿勢は国内外で高い評価を獲得している。そんな彼らが生み出すプロダクトは、すべてメイド・イン・ジャパンである。 [caption id="...

時間を重ねて、ヴィンテージになる。「RAGGY CLOTHING」の何年先も、格好いいと思える服

  • 2026.10.02

時代が変わっても、色褪せない格好よさがある。「ラギークロージング」が大切にするのは、流行に左右されない普遍的さ。アメリカンカジュアルの王道を、いまの時代に自然に着られる1着へと仕立てる。 旧きよき服を現代の日常に アメリカンカジュアルの王道を見つめながら、現代の日常に馴染む服を作る「ラギークロージン...