まずは知っておきたい元祖ジャケット【ブルックスブラザーズ/No.1 サックスーツ】
ルックス ブラザーズが1901年に完成させた№1サックスーツこそが、アメリカンな現代的スーツの源流たる一着である。
Brooks Brothers/No.1 Suck Suit
それまで本格仕立てのスーツは、テーラーなどに赴きオーダーにて仕立てるのが一般的だった。しかし「ブルックス ブラザーズ」は、米国という大衆社会のニーズに応えるべく、ドレッシーなスーツを既成にてつくりだすノウハウをどこよりも早く確立。
当時すでに顧客は貴族などの富裕層にとどまらず、一般市民の多様な体型を有しているという現実があった。そこで編みだされたのが“動きやすいナチュラルショルダー”“ミシンで縫い上げやすい工程”“フロントダーツを入れない”等の革新的な仕立て方だった。
また、№1サックスーツの特徴である“段返りの3ボタン”にはユニークな逸話がある。
19世紀後半に流行った2ボタンジャケットのトレンドに対し、買い替えの余裕のない当時の学生達は、旧来の3
ボタンジャケットのラペルを深めに折り返し“疑似2ボタン”を楽しんだという。ブルックス ブラザーズはその発
想をアレンジして“段返り”という仕様を作りだした。
No.1 サックスーツのディテールをチェック!
ナチュラルショルダー
旧来のジャケットには男性的な威厳を引き立てるため、厚手のパッドが仕込まれた。一方サックスーツには動きやすく控えめな印象となる薄手パッドを採用。自然な丸みも大きなポイント。
段返り3つボタン
当時のトレンドに憧れた学生の発想を元に生みだされた“中ひとつ掛け” スタイル。時代によって折り返しの幅も変遷し、昨今は正面から僅かにボタンホールが見えるくらいの返しが基本。
フロントダーツなし
腰のくびれを表現するために付けられるフロントダーツ。しかし多様な体型、幅広い年齢層にマッチさせるため、あえてフロントダーツを排除。そのためサック(袋)状のフォルムが完成。
袖の2つボタン
本来の英国的ジャケットにおける袖ボタンは4つが定番。スポーティな仕様になるほどボタン数は減らされる。サックスーツに関してはアメリカの合理性から2つになったとの説がある。
センターベント
ドレススーツはサイドベンツが伝統的。サックスーツは乗馬用の上着にも見られる後方中央に切れ込みを入れたセンターベント仕様。軽快かつ合理的な配慮から生みだされたと考えられる。
カジュアルジャケット、基本の6型。
1.段返り3つボタンジャケット
第一ボタンがラペルの裏側に隠れたつくりになっていて、中一つ掛けで着る。ブルックス ブラザーズの【No.1 サック スーツ】が起源。アメトラジャケットの基本。
2.2つボタンジャケット
3つボタン段返りに対抗するコンテンポラリー型として、“ロウ・ツー” と称するボタン位置の低い2つボタンジャケットが1960年代初期から中期にかけて西海岸で流行。
3.ショールカラージャケット
カラー(襟)が上下で分かれておらず、首にショールを掛けたようにひと続きになっているデザインを指す。形が似ていることから別名「ヘチマ・カラー」とも。
4.ブレザー
アイビーリーグ校のスポーツクラブに属する選手のユニフォームとして着用され、日本においてもアイビールックのマストアイテムとして愛されてきたのがブレザー。
5.ダブルブレストジャケット
フロントのボタンがダブル(2列)で並んだジャケットのこと。ボタンが1列で並ぶシングルブレストとの比較で言えば、着こなしに重厚感が生まれて落ち着いた雰囲気に。
6.クラブハウスジャケット
アイビーリーグの卒業生には、クラブハウスと称される場所に集まって会食やスポーツを楽しむ習わしが。そこでまとうのが、母校のスクールカラーに染まったジャケット。
知っておきたい各部名称。
1.ラペル
テーラードカラーの下襟部分。一方、上襟部はカラーと呼ばれ、ノッチやピークなど数種のスタイルが存在。ラペルの種類には下記のようなものがある。
ナチュラルショルダー
通称背広襟。上襟と下襟の間隔が開いたオーソドックスなスタイル。シングルジャケットの大半に用いられる。
ピークドラペル
上襟と下襟の間隔が狭く、ラペルの先端が上向きに尖ったスタイル。ダブルジャケットによく見られる。
ショールカラー
ゴージラインがなく、上襟と下襟が一体となった通称“へちま襟”。タキシードや夜間礼服に用いられる。
2.ベント
ジャケット裾の切れ込みを指し、本来は乗馬しやすいようにデザインされたものだと言われている。ベントの種類には下記のようなものがある。
センターベント
かつて乗馬をする際、裾が突っ張らないよう考案されたことから日本のテーラーでは「馬乗り」とも呼ばれる仕様。
サイドベンツ
馬上で剣を抜きやすいよう設計されたという説もあり、日本のテーラーでは「剣吊り」とも呼ばれる2本の切れ込み。
ノーベント
乗馬などアクティブなシーンではなく、タキシードなど礼服に用いられる最もフォーマルなスタイル。
3.ゴージライン
襟の中央にあるラインを指し、ここを起点に上襟をカラー、下襟をラペルと呼ぶ。それが下がるほどカジュアルな印象。
4.ラペルホール
19世紀の英国上流階級の間で花を差すことが流行したことから[フラワーホール]とも呼ばれる下襟の穴。
5.チェストポケット
胸ポケットの総称でもあり、紳士服では「ブレストポケット」とも呼ばれる。チーフを差すために用意された。
6.フロンダーツ
身体のラインに沿わせるための縫い込み。アメリカントラッドではダーツを使用しないボックスシルエットが一般的。
押さえておきたい内側のディテールの呼称。
背抜き
通気性の向上とボリュームの軽減を図り、ジャケットのライニングを背面のみカットした裏仕立て。
総裏
背抜きとは対照的に背面全体にライニングを備えたスタイル。型崩れしづらく、重厚な印象に仕上がる。
ポケット縁のD管仕様
D 型のステッチ形状から「D管止め」とも言われるカンヌキ部分の仕上げ。安価な量販品では「I管止め」が一般的。
台場仕様
内ポケットの縁部分を表地で囲むように仕立てたスタイル。角の形状により「三角台場」など派生系もある。
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