書類、名刺、レシートなどすべてデータ化 リモートワークの必需品 ScanSnap iX2500

Illustratorの性能向上について、アドビのデザインプロダクトマネージャー、カレン・ブリューワー氏単独インタビュー【Adobe MAX Japan 2025】

Adobe MAXに際して、デザイン製品のプロダクトマネージャーであるカレン・ブリューワー氏に単独でインタビューする機会を得た。彼女は、17年間に渡って所属したAutodeskでマーケティング・エグゼクティブを務めていたほか、いくつかの企業で上級マーケティングリーダーを務め、eコマースの新興企業でCMOとして大きな成功を収めた経験も持っている。アドビには1年半前に参画し、現在Illustrator、InDesign、Substance 3D Collectionほか、新興製品のマーケティング戦略を推進している。

Illustratorの大幅な速度向上について

まず、最初に、今回アップデートされた製品について、説明いただけますか?

カレン 私はプロデザイン製品と3Dの製品を担当しています。まず、Illustratorについては、お知らせしたいニュースは3つあります。

ひとつはIllustratorのパフォーマンスの向上。ふたつ目は、特に日本語の組み版について20年ぶりに内部のプログラムを刷新したこと。3つ目は日本語のフォントをさらに追加し、合計1600ものフォントを使えるようになったこと、そしてバリアブルフォントである百千鳥のローンチです。

これらの機能強化の多くは、お客様からのフィードバックを得て、それを取り入れて行っています。私たちは常にお客様の声を慎重に拝聴するようにしています。それはオンラインのコメントなどの情報だったり、フォーラムや1on1のインタビューだったり……さまざまな方法でお客様の要望を取り入れるようにしています。

私の重要な仕事のひとつは、実際にIllustratorを使っている現場を見せていただいて、どういうところに苦労しているか? どういうところを機能として求めているか? をうかがっています。あるいはIllustratorデザインサミットというカタチでイベントを開いて、グループでお話を聞くこともあります。

今回、実現したIllustratorの処理速度向上も、6ヶ月前にお客様からいただいたご意見を「今後の機能強化のロードマップに入れよう」ということで実現したものです。MacやWindows、新しいマシンや古いマシンと、お客さまは色々なマシンを使っていらっしゃいますが、お客さまの全体像として質的量的調査も行った上で、今回の性能向上を発表させていただいています。

たとえば、リンクファイル埋め込みのパフォーマンス。以前は、ファイルが大容量だったり、重かったりすると、時間がかかっていたのですが、今回、だいたい10倍ぐらいの速度向上を実現しています。

それに加えて、画像のアートボードへの取り込みも5倍ぐらい性能向上しています。

特殊効果、エフェクトも、さまざまなユーザーの方々のグループでお話しをうかがって、よく使われるベスト5の機能の性能向上を図りました。ドロップシャドウ、インナーグロー、アウターグロー、そしてラスタライズなどの機能が5倍ぐらい速くなっています。

それから、複数のレイヤー、大量のレイヤーを扱った時も、スムーズに扱えるように機能強化しました。レイヤーのバインド、アンバインドの機能も組み合わせることで、たくさんのレイヤーをスムーズに扱えるようになっています。

日本語フォントについての数多くのアップデート

フォントについても、数多くのアップデートが発表されました。

カレン タイポグラフィも強化しました。昨年、日本語組み版のエンジンを20年ぶりに刷新し、古く複雑になっていたコードを、新しくシンプルでパワフルなものにしました。

今回は、日本語フォントを新たに加え、合計で約1600の日本語フォントをお使いいただけるようにしました。日本市場というのは、我々にとって非常に重要な市場でありますから、日本市場を強く意識して投資を行っております。今回、日本語について200項目以上の改善を行っています。

そして、なんといっても、バリアブルフォント『百千鳥』のローンチですね。これは日本でデザインされたものです。そう、西塚さんたちのチームがデザインしました。

また、Retypeも日本語で機能するようになりました。古くてもう使われなくなったフォントを使ったドキュメントをアップデートしたい時に便利です。可能な限り近いフォントを検索して提案してくれます。そういった、みなさんの効率を上げ、生産性を向上させるような機能を数多く搭載しています。

生成AIを使った機能としては、最初にAdobe Fireflyを使ったジェネレーティブ リカラーが実現しています。細かいベクターデータの塗りカラーを手作業で変更しなくても、新しいカラーパレットを生成AIが提案してくれます。この機能も多くの方に使っていただき、かなり利用率が高まっているフィーチャーです。

シンプルな形状のベクターデータを入力すると、ディテールを自動生成してくれるGen Shape fillも便利です。大変使い勝手のいい、作業効率を高めてくれる機能です。

モックアップも便利ですね。ベクターデータでロゴやラベルをデザインして、無地の箱やボトルなどパッケージの写真を用意すると、その画像に写っているものの表面に沿ったようにロゴやラベルのデザインが配置されます。パッケージデザインにおいては、非常に便利な機能ですし、提案に具体性を加えることができるはずです。

Illustratorの手法で、立体的なグラフィックを作成するProject Neo

Project Neoもこれからが楽しみな製品です。

カレン これまで2Dでデザインされてきた方に、3D的デザインを簡単にしてもらえるようにと進めているのが、Project Neoです(ちなみに、発音は、プロジェクト・ニィーオという感じ)。

最初のデータはIllustratorで作れるので、これまでの作業スキルが活かせます。ショートカットやUXはIllustratorと共通です。テキストエンジンもIllustratorと共通のものを使っていますから、ロゴを立体的にしたりするのにも使えます。

今回初めて日本語にローカライズしました。中国語、韓国語、それからヨーロッパの各言語にも対応しています。

新たに、特に日本語に関して多くの機能が増強されたIllustratorを、ぜひ日本のみなさんに使っていただきたいと思います。そして、またフィードバックをお寄せいただけば幸いです。

政治体制に関係なく、世界のクリエイティブプロフェッショナルをサポートする

最後にひとつ、質問です。今回、日本語に対応した機能が数多く公開されましたが、トランプ大統領になったことで今後の施策に影響はありますか?

カレン 私たちのやることに変わりはありません。私たちは、世界のクリエイティブプロフェッショナルを支援することにフォーカスし続けています。私たちの会社の憲章は、最初からすべての人にクリエイティビティを提供し、クリエイティブプロフェッショナルをインスパイアすることです。政治体制がどうなるかとか、社会の状況がどうなるかということに関係なく、私たちは革新的な技術によって生産性を向上させ、顧客のみなさんの成功をサポートしていきます。

アメリカファーストではなくて?

カレン 私たちは、グローバルカンパニーですから(笑)

(村上タクタ)

シャンタヌ・ナラヤンCEO来日、AI関連多数新機能発表【Adobe MAX Japan 2025レポート・前編 】

シャンタヌ・ナラヤンCEO来日、AI関連多数新機能発表【Adobe MAX Japan 2025レポート・前編 】

2025年10月27日

アドビの生成AIのさらなる充実を発表【Adobe MAX Japan 2025レポート・後編 】

アドビの生成AIのさらなる充実を発表【Adobe MAX Japan 2025レポート・後編 】

2025年10月27日

アドビ、初の2軸日本語バリアブルフォント『百千鳥』の開発を発表

アドビ、初の2軸日本語バリアブルフォント『百千鳥』の開発を発表

2025年10月27日

マイアミで開催される、クリエイティブの祭典Adobe MAXの取材に行ってきます

マイアミで開催される、クリエイティブの祭典Adobe MAXの取材に行ってきます

2025年10月27日

Adobe MAX 2024フロリダ州マイアミで開催。多数の機能を発表

Adobe MAX 2024フロリダ州マイアミで開催。多数の機能を発表

2025年10月27日

Adobe MAX 2024発表のキモ!【非クリエイターにも分かる!】

Adobe MAX 2024発表のキモ!【非クリエイターにも分かる!】

2025年10月27日

なぜPremiere Proの生成拡張は2秒だけなのか?——他社とのスタンスの違い【Adobe MAX】

なぜPremiere Proの生成拡張は2秒だけなのか?——他社とのスタンスの違い【Adobe MAX】

2025年10月27日

『撮り鉄さん、生成AI使ってみません?』アドビが相鉄とコラボイベント

『撮り鉄さん、生成AI使ってみません?』アドビが相鉄とコラボイベント

2025年10月27日

この記事を書いた人
村上タクタ
この記事を書いた人

村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

【Punctuation × 2nd別注】手刺繍のぬくもり感じるロングビルキャップ発売!

  • 2025.10.29

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【Punctuation × 2nd】ロングビルキャップ[トラウト] 温もりのある手仕事が特徴の帽子ブランド「パンク...

いつものトラッドがこんなにも新鮮に!ジャパンデニムの雄エドウインが提案する、クラシックな黒

  • 2025.10.18

“黒”という色はモードファッションとの結びつきが強い。故にトラッドスタイルとの親和性は低いように思われる。しかし、エドウインの提案する“黒”は実にクラシックである。 クラシックなトラウザーズが黒とトラッドを身近にする ブレザー、ボタンダウンシャツ、スラックス……。アメリカントラッドを象徴するアイテム...

【土井縫工所×2nd別注】日本屈指のシャツファクトリーが作る、アメトラ王道のボタンダウンシャツ発売!

  • 2025.10.07

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! トラッド派には欠かせない6つボタンのBDシャツ「6ボタン アイビーズB.D.シャツ」 アメリカントラッドを象徴するア...

2nd

良質な素材感とシルエットが美しい、東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。

  • 2025.10.17

東洋エンタープライズが展開する「ゴールド」。白黒の世界で際立つ良質な素材感とシルエットをご堪能あれ。 質感、シルエット、美しいミリタリー&ワークウエア 米軍同様のへビーナイロンツイルを使ったMA-1。軽量性・保温性・防寒性を備えたクライマシールドの中綿でスペックは現代的だが、エイジング加工によってヴ...

“黒のコロンビア”って知ってる? オンオフ自在に着回せる、アップデートされたコロンビアの名品を紹介!

  • 2025.10.21

電車や車といった快適な空間から、暑さや寒さにさらされる屋外へ。都市生活は日々、急激な気温差や天候の変化に直面している。実はその環境こそ、自然で磨かれた「コロンビア」の技術が生きる場だ。撥水性や通気性といったアウトドア由来の機能を街に最適化し「コロンビア ブラックレーベル」は、都市生活者の毎日を快適に...

Pick Up おすすめ記事

【J.PRESS×2nd別注】こんなイラスト、二度と出会えない。 著名イラストレーターとのコラボスウェット。

  • 2025.10.21

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 【J.PRESS×2nd】プリントスウェットシャツ【AaronChang】 アメリカにある優秀な8つの大学を総称して...

いつものトラッドがこんなにも新鮮に!ジャパンデニムの雄エドウインが提案する、クラシックな黒

  • 2025.10.18

“黒”という色はモードファッションとの結びつきが強い。故にトラッドスタイルとの親和性は低いように思われる。しかし、エドウインの提案する“黒”は実にクラシックである。 クラシックなトラウザーズが黒とトラッドを身近にする ブレザー、ボタンダウンシャツ、スラックス……。アメリカントラッドを象徴するアイテム...

進化と伝統、どちらもここに。「L.L.Bean」のアウトドアと日常の垣根を超える名品たち。

  • 2025.10.17

100年以上にわたり、アウトドアと日常の垣根を越える名品を生み続けてきた「エル・エル・ビーン」。誠実なモノづくりと顧客への真摯な姿勢は、現代まで脈々と受け継がれている。伝統を守りながらも進化を恐れない、その精神こそが、今も世界中の人々を魅了し続ける理由だ。 愛される理由は機能美とその誠実さ 100年...

“黒のコロンビア”って知ってる? オンオフ自在に着回せる、アップデートされたコロンビアの名品を紹介!

  • 2025.10.21

電車や車といった快適な空間から、暑さや寒さにさらされる屋外へ。都市生活は日々、急激な気温差や天候の変化に直面している。実はその環境こそ、自然で磨かれた「コロンビア」の技術が生きる場だ。撥水性や通気性といったアウトドア由来の機能を街に最適化し「コロンビア ブラックレーベル」は、都市生活者の毎日を快適に...

【土井縫工所×2nd別注】日本屈指のシャツファクトリーが作る、アメトラ王道のボタンダウンシャツ発売!

  • 2025.10.07

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! トラッド派には欠かせない6つボタンのBDシャツ「6ボタン アイビーズB.D.シャツ」 アメリカントラッドを象徴するア...