書類、名刺、レシートなどすべてデータ化 リモートワークの必需品 ScanSnap iX2500

フィル・リービン久々の来日。渋谷でスタートアップについて語る

元Evernote CEOのフィル・リービン氏が来日。11月9日の夜18:30から、渋谷のShibuya Bridge B5区画で、『Shibuya-City Fireside Chat Event』として、トークイベントが行われた。

渋谷でのスタートアップ支援の動き

フィル・リービン氏といえば、我々ガジェット系メディアとしては『元Evernote CEO』という側面が一番強く印象に残ってるが、一般論でいえば大成功した起業家であり、投資家。スタートアップ界隈では伝説の人物である。そのフィルと膝を突き合わせて話せるのなら、話を聞きたいという人は、いっぱいいる。

というわけで、今回のイベントは渋谷区のスタートアップ招致関連部署や、All Turtlesが主催となっており、場所はShibuya Startupの新オフィス。ちなみに、この場所は、10年前まで東急東横線の高架があった場所にできたShibuya Bridgeという新しいビルだ。

Evernoteを離れてからフィルは、All Turtlesというスタートアップ支援スタジオを運営している。

All Turtles
https://www.all-turtles.com/

みなさんご存知のmmhmmもここから生まれたプロダクトだし、先日、ご紹介したTellusもそうだ。その他にも数多くのプロジェクトが動いている。

遠隔地の家族を見守るミリ波レーダーの『POM』、クラファン開始

遠隔地の家族を見守るミリ波レーダーの『POM』、クラファン開始

2026年08月28日

ちなみに、今回のイベントの『仕切り』を行っているのは、Shibuya Startup Supportの田坂克郎さん(左)と、All Turtlesの井上健さん(右)。

話を聞きに集まってきたのは、渋谷に拠点を持つさまざまなスタートアップの方々。タイトルカットでお分かりいただけるように、日本はもちろん、さまざまな出自を持つ人が集まっており、イベントは基本的に英語で行われた。

インタビュアーを務めたのは、渋谷スタートアップス代表の渡部志保さん。モルガンスタンレー、Google、メルカリなど、AIスタートアップなどで、ロンドン、カリフォルニアの拠点に勤め、いくつかの企業のマーケティング支援を経て、現職の渋谷でのスタートアップ事業に就いたという豊富な経歴をお持ちの人物だ。

日本の『脱オフィス』、アメリカでの『脱シリコンバレー』

まず、最初に会場で行われたのは、パンデミックは日本の就労文化にとって、良い影響を及ぼしたか? 悪い影響を及ぼしたか? というアンケート。

飲食店や接客業の人にとっては、もちろん大変なことだったとは思うのだが、スタートアップやテック系の人にとっては、『良い影響を及ぼした』と考えている人が多いということだ。

大企業などでは、『出社』『対面ミーティング』の世界に戻りつつあるようだが、オンラインで話が済む人間関係と、情報共有の能力があれば、かならずしも対面でなくてもいい。少なくとも、そういう選択肢ができたのは良いことだということだろう。

ご存知のようにフィルは、mmhmmを作って、オンラインミーティングの利便性を向上させた。

現在、さらにmmhmmが推進しているのは、『非同期』のミーティング。つまり多くの人が同じ時間を費やしてミーティングするのではなく、通達事項などであれば、mmhmmで動画を作って、それを相手に見てもらえばいいという考え方だ。受け止める側は、好きな時間にその動画を見ればいいし、内容によっては1.2倍速、1.5倍速で再生してもいい。空間も時間も制約される必要はない。

現在、フィルは、アメリカ南部のアーカンソー州にあるベントンビルに住んでいる。ベントンビルは地方の小さな都市だが、世界最大の売上高を持つ企業『ウォールマート』の創業の地であり、現在も本社所在地で、美術館をはじめとした文化、教育施設が豊富にある。

これは、彼自身が、『シリコンバレーにいなくてもいい』『大都市にいなくてもいい』という、新しい生き方を体現するためでもある。

ご存知の方も多いと思うが、アメリカでは今、『脱シリコンバレー』の動きが進んでいる。

パンデミックの影響もあるが、サンフランシスコ〜シリコンバレーの家賃高騰など、物価が上がり過ぎて、多くの人にとって暮らしやすい場所ではなくなったのが大きい。さらに、それらの影響で職を失った人が増え、エッセンシャルワーカーがその給料では生活できなくなり、ホームレスが増え、治安が著しく低下しているということだ。

そんな中、テキサスのテクノロジー企業誘致の動きなどもあり、多くの企業がシリコンバレーを離れて、他の都市へと移転している。

フィルは、「ひょんなことから荒廃するサンフランシスコを離れて田舎町に軽い気持ちで一時退避した。しかしそこで、自らの住環境、地域、近所の商店や友人知人の大切さに気付かされた。テクノロジー以外の、人間にとって根源的な実態のある事業領域にも興味が広がった」と、地域コミュニティのある街の魅力について語った。

日本、渋谷での起業には、まだまだ魅力がある

たびたび来日している親日家であるフィルに対して、「日本で起業することについてどう思うか?」という質問があった。質問された方は、円安で、かつチャレンジ厳しい日本で起業するのはメリットが少ないのではないかという意味で、質問されたのだと思う。

しかし、フィルは、日本での起業について、非常にポジティブだった。日本の独自性、狭いエリアに密集して多くの人がいること、清潔で勤勉な人が多く物事が正確に進むこと、そして魅力的な独自の文化など、海外の人にとって魅力的である美点があり、それはまだまだ色あせてはいないとフィルは語った。

また、「日本のスタートアップ界は世界のスタートアップコミュニティに取り残されてしまっているのではないか?」というボヤキに対して、フィルは「コミュニティのメンバーになることは、コミュニティに貢献できていないと実現できない。受け取ることばかりを考えないで、まずは貢献を試みよう」と回答していた。スタートアップコミュニティというものがどういうものなのか、長くそこに属して、貢献してきたフィルならではの回答だ。

そんな渋谷のスタートアップ拠点で行われたこのイベント、フィルの話はもちろん、来場者それぞれのコミュニケーションも大きな価値を産んだようだ。今後も渋谷のスタートアップ支援の動きに注目していきたい。

(村上タクタ)

Shibuya Startup Support
shibuya-startup-support.jp

渋谷スタートアップ株式会社
https://upshibuya.com/ja/

この記事を書いた人
村上タクタ
この記事を書いた人

村上タクタ

おせっかいデジタル案内人

「ThunderVolt」編集長。IT系メディア編集歴12年。USのiPhone発表会に呼ばれる数少ない日本人プレスのひとり。趣味の雑誌ひと筋で編集し続けて30年。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育、園芸など、作った雑誌は600冊以上。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

イタリア・パルマで誕生。世界屈指のベルト「Anderson’s」、その生まれる場所へ

  • 2026.09.17

1966年、イタリア北部に位置する美食の街・パルマで創業したベルトメーカー「アンダーソンズ」。装いを完成させる“名脇役的存在”のベルトをメインとする稀有な存在にして、世界的な評価を獲得する某ブランドのプロダクトはどのように生まれるのか。その魂が宿る自社工場に足を運んだ。 イタリア・パルマの地に宿る6...

トラッドの相棒にドゥニームのジーンズを! ウエアハウスが1988年のクラボウデニムを再現

  • 2026.09.17

1980〜90年代に日本のセルビッジジーンズの先駆けとして一世を風靡したデニムブランド「ドゥニーム」。同ブランドの創業当時のレシピをもとに、再始動を手掛けたのが「ウエアハウス」だ。彼らの徹底的な研究・解析によって生み出された至極の1本は、まさにオーセンティックそのもの。そして、本当の意味での“良い色...

無垢の金属、輝く伝統。純金や純プラチナを使った「市松」の究極の逸品

  • 2026.09.25

純金や純プラチナなど、純度100%の軟らかい金属をアクセサリーにするためには非常に高い技術が必要だ。それを可能にするのが「市松」。約30年にわたって培った“叩く”技術が可能にする唯一無二のリングの輝きに迫る。 熟練の技なくしては完成しない究極の逸品 原材料高騰の影響もあって、希少性が高まっている純金...

ニューヨーク・ブルックリン発! 作業服由来のデイリーウエアはこう着こなす。

  • 2026.09.16

創業1904年、高層ビルの建設が相次ぐ当時のニューヨークでリアルワーカーに向けて、作業服を提供していた「ブルックリンオーバーオール」。そんな確固たる出自に由来する男服は、カジュアルウエアとして現代にDNAを継ぐ。 旧きよきデザインと生地づくりで飽きのこない王道のワークスタイル 40年代の個体をベース...

名作[ハリケーントップ]誕生から40周年! 「CHUMS」の「ハローウェア」が再登場

  • 2026.09.23

「チャムス」の名作[ハリケーントップ]の誕生から40年を迎える今年、「ハローウェア」が再登場する。そのコレクションを紹介する前に、まずはブランドが歩んできた歴史を紐解いていこう。これまでの歩みを知れば、「ハローウェア」をもっと楽しめるはずだ。 ハロー、懐かしくて新しいチャムス サングラスを川に落とさ...

Pick Up おすすめ記事

2ndとEDWIN両チームの世代の異なる4人が集結! EDWINと考えるトラッド学

  • 2026.09.15

本誌でも何度も紹介してきたEDWINのコンセプトショップ限定アイテムは、普遍的なデザインとそのクオリティの高さから2ndが理想とするトラッドスタイルともばっちりハマる。今回は初の試みとして、2ndとEDWIN両チームの世代の異なる4名で“EDWINで作るトラッド”を考えてみた。 20代らしくアクティ...

無垢の金属、輝く伝統。純金や純プラチナを使った「市松」の究極の逸品

  • 2026.09.25

純金や純プラチナなど、純度100%の軟らかい金属をアクセサリーにするためには非常に高い技術が必要だ。それを可能にするのが「市松」。約30年にわたって培った“叩く”技術が可能にする唯一無二のリングの輝きに迫る。 熟練の技なくしては完成しない究極の逸品 原材料高騰の影響もあって、希少性が高まっている純金...

いつもの装いに、頼れる履き心地。この秋は、コートスニーカーとチロリアンシューズがあればいい

  • 2026.09.18

トラッドな装いになら、足元はやっぱり品よくいきたい。でも、履き心地だってこだわりたい。そんな欲張りな気分に応えてくれるのが「ロックポート」。クラシックな佇まいと快適さを両立した2足を紹介する。 品よく履けて、しっかり快適 「お洒落は我慢」とは言うけれど、格好よさも履き心地も譲れない。そんなわがままに...

究極のクラシックを背負う。英国発バッグブランド「Billingham」のカメラバッグ『System-1』

  • 2026.09.24

英国生まれのバッグブランド「ビリンガム」。そして同ブランドを代表するモデル[システム-1]。"用の美"を極めたその実用性とルックスは昔も今も、服好きの心を捉えて離さない。 “機能美”を極めたクラシックバッグの筆頭 創業は1973年。写真を撮るのが大好きだったという創業者のために妻がカメラバッグを手作...

ニューヨーク・ブルックリン発! 作業服由来のデイリーウエアはこう着こなす。

  • 2026.09.16

創業1904年、高層ビルの建設が相次ぐ当時のニューヨークでリアルワーカーに向けて、作業服を提供していた「ブルックリンオーバーオール」。そんな確固たる出自に由来する男服は、カジュアルウエアとして現代にDNAを継ぐ。 旧きよきデザインと生地づくりで飽きのこない王道のワークスタイル 40年代の個体をベース...