ジェット旅客機に乗っての移動も楽に
もちろん、今回の取材も飛行機に乗ってカリフォルニアに向かうわけだが、機内でもAirPods Pro(初代)を耳に入れる。『ポロン』という独特のサウンドと共にジェット機機内の轟音が下がる。慣れるとあまり気にならないが、やはりジェット機の機内は轟音に包まれているのだ。
轟音に包まれているのは、やはり疲れる。AirPods Proがあれば、その疲労度を抑えることができる。
第2世代となる新型AirPods Proは、このノイズキャンセリングの能力が2倍になっているという。
この2倍のノイズキャンセリング能力を支えるのが新しいH2プロセッサー。小さなAirPods Proの中には、11mmのサウンドドライバ、H2チップをはじめ、外部と内部の圧力を均一にするための通気システム、正確に口元の音を捉えるデュアルビームフォーミングマイク、ノイズキャンセリングのための耳の内側に向けられたマイク、肌検出センサー、複数の加速度センサー、タッチコントロール、Bluetooth 5.3のチップ、バッテリー……など非常に多くの精密な部品が詰め込まれている。我々の身の回りにあるものの中で、もっとも精密な製品のひとつといってもいいぐらいだ。
その精密な設計の結果として、誰にでも使える当たり前の性能を実現しているところがAppleの真骨頂だといえるだろう。3万9800円(税込)という値段は安くはないが、内部構造の精密さを考えると止むを得ないとは思ってしまう。
耳を守ってくれるから、ずっと装着していたい
今回、短時間だが試着して驚いたのは、その音質でもなく、ノイズキャンセリングの強さでもなく、『外部音取り込みモード』だ。
AirPods Proの外部音取り込みモードは、単純にノイズキャンセリングをオフにしているのではない。
たしかに『外部と内部の圧力を均一にするための通気システム』はあるのだが、それを通したって、外側と内側の音が同じになるわけではない。
AirPods Proは外部音取り込み時には、外の音をマイクで拾って、耳の中で『音』として再現しているのだ。これは言うほど簡単なことではない。人の耳は人によって形状が違うし、いくらスピーカーで外の音を再現しようとしても、それはやはり『スピーカーの鳴らした音』でしかないはずだ。にもかかわらず、こもりもなく外の音をクリアに再現しているのには驚くほかない。このクリア度合いがAirPods Proではさらに増しており、まったく装着していないように感じるほどなのだ。
さらに第2世代のAirPods Proでは、外部音取り込み時に大きすぎる音は再現しないように設計されている。具体的には85デシベル以上の音はキャンセルされるようになっているのだ。
外の音を聞きつつ、大きすぎる音は抑制し、しかも音楽を聞いたり、通話したりできる……これはもう『拡張された耳』とでも言うべき存在だ。
おそらく、みなさんが、この製品を入手した時に『外部音取り込みモード』にしても、周囲の音が普通に聞こえるから不思議には思わないかもしれない。しかし、その『違和感のなさ』にこそ、アップルの凄まじいテクノロジーが注ぎ込まれているのだ。
空間オーディオも進化し、パーソナライズも可能に
旧型であってもAirPods Proの空間オーディオには驚かされる。
頭を動かしても同じ方向から音がするから、ともすればAirPods Proを着け忘れて、iPhoneから直接音が出ているのではないかと思ってしまうのだ。電車の中で、AirPods ProのBluetoothが切れて、iPhoneから爆音で自分の好きな曲を同じ車両の人に聞かせてしまっているのではないかと不安になったことも一度や二度ではない。
第2世代のAirPods Proでは、この空間オーディオの性能がさらに向上している。デモで聞いた曲が、空間オーディオらしさを強調したものであったことは否めないが、それでもアップルが広告で使ったビジュアルそのままに、音が自分の周囲のさまざまな方向から飛び込んで来る感覚を体験できるのだ。
新しい空間オーディオはさらにパーソナライズ可能。初期設定の段階でiPhoneのTrueDepthカメラを使って、頭の形状、耳の形状などを計測するのだ。
音というのは、人それぞれに違って聞こえているらしい。その人が聞いている音を、耳の中に入れたAirPods Proで再現するということだ。この空間オーディオをダイナミックヘッドトラッキングと一緒に体感できるというのも楽しみだ。
iPhoneを使わなくても、単体でボリューム調整もできる
従来のAirPods Proは単体でボリューム調整ができないのがちょっとした欠点だった。
たとえば、「Hey Siri ! 音量を上げて」などと言えば調整可能だったが、たとえば電車の中でSiriに頼むのはちょっとはばかられる。
筆者はApple Watchでボリューム調整していたが(同じiCloudアカウントでログインしていたら、Apple WatchはiPhoneやiPad、Macのミュージックアプリを操作できる)、誰もがApple Watchを持っているわけではない。
第2世代のAirPods Proは、軸の側面を上下に触ることでボリュームの調整ができるようになっている。
なんとストラップホールまで
ケースにもさまざまな変更が加わっている。外形サイズは筆者が見た限りでは従来のものと同じに見えた(が、同じケースが使えるかどうかというところまでは確認していない)。ちなみに、こっそり初代AirPods Proを入れてみたらハマったし充電も可能だった(これも一瞬のことなので、動作を保証するものではない)。下側には小さなスピーカーが設けられており、『探す』機能を使った時に音を鳴らすことができる。
さらに、ストラップホールが設けられたのも特徴のひとつだ。
iPhoneはもちろん、iPodやAirTagなどを含めて、Appleが自社の製品にストラップホールなどという親切なものを設けた記憶はついぞないのだが、もしかするとよほど紛失する人が多かったのかもしれない。
筆者は、旧モデルを使っている3年間一度も、紛失したことも、落としたことも、壊したこともなく愛用し続けているが、落ち着きのない若い時代だとそうはいかなかっただろう。ストラップホールはそういう人たちがAirPods Proを紛失することを少し防いでくれるに違いない。
(村上タクタ)
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