無類のマンガ好き、声優・手塚ヒロミチ。「捨てられるわけがない、マンガこそ我が人生」

  • 2024.04.08

少年期は死ぬほどマンガを読み、マンガ家を夢見ていたと言う、手塚ヒロミチ。今は声優として好きな作品に関わりながらも、ずっと変わらずにファンであり続けるマンガ愛の源泉を聞いた。

本を捨てるという発想がない

手塚ヒロミチ(てづかひろみち)|茨城県出身。2011年に声優デビューし、アニメや吹替え、ナレーションなどで活躍中。テレビアニメ『EDENS ZERO』(第2期)では、メインキャラクターの一人、ワイズ・シュタイナーを演じている

「実家に帰省したら本棚を両親が作り並べていてくれた」というコメントともに、おびただしい数のマンガ雑誌が整然と並ぶ 本棚の画像をツイッター(現X)に投稿し、声優ファン、マンガファンを巻き込んで注目を集めた手塚ヒロミチ。彼は数多くのアニメのキャラクターや映画の吹き替えを手がけるプロの声優である。そんな彼のルーツは、やはりマンガであった。

「小中高と死ぬほどマンガを読んでいましたね。本を捨てるという発想がなくて、ずっとため込んでいました」

手塚がツイッターで公開した、実家の本棚。マンガ雑誌がぎっしり!(写真提供:手塚ヒロミチ)

生まれは関東の片田舎で、マンガしか娯楽がなかった。手塚は、学生時代を通じて『週刊少年マガジン』、『週刊少年ジャンプ』、『月刊コロコロコミック』、『月刊コミックボンボン』、『月刊少年ガンガン』、『月刊Gファンタジー』、『月刊ギャグ王』、『ドラゴンマガジン』と、最も多い時で8誌もの雑誌を毎月購読していた。そのなかでも特にお気に入りだったのが『マガジン』と『ボンボン』だった。

「90年代は『ジャンプ』黄金期で、父がジャンプ派、僕がマガジン派で、2冊とも家にあるという環境でした。どちらも読んでいましたが、なぜかマガジン派でしたね。ジャンプよりも若干大人っぽいというか、恋愛マンガやエッチな作品が多かったからかな」

そんな彼が特に印象に残っている作品は伝説的恋愛マンガ『BOYS BE…』だという。

「今回の取材を受けるにあたって、思春期にいちばん刺さった作品ってなんだろうと考えた時に、まず頭に浮かんだのが『BOYS BE…』でした。学生時代、恋愛とか女の子とつき合うということに本当に縁がなかったんです。バレンタインにチョコをもらうなんて、一大事みたいなノリでした。そんな環境において『BOYS BE…』は幻想の世界の話というか、恋愛とはこういうものだと教えてくれた作品です。大人になると、またそれは違うということがわかるんですが、あの頃は学校が休みの日に家にいたら、女の子が遊びにくるシチュエーションが世の中にはあるんだと思っていましたね(笑)」

もう一方の『ボンボン』にも、思い出がたくさん詰まっている。

「『ボンボン』だと『スーパーバーコードウォリアーズ』(※1)っていう、バーコードを読み取るオモチャのマンガをやってい たんですけど、『俺たちの戦いはこれからだ!』で終わってしまって、本当にこういう風な終わり方をするマンガがあるんだって衝撃を受けました。あとはガンダムが好きだったこともあり、騎士ガンダムや武者ガンダムのマンガも読んでました。

当時は プラモデルを作ることにもはまっていて、小3くらいから小学校卒業まで、毎週親に1個SDガンダムのプラモを買ってもらって、最終的に200個くらい作りました。特に思い出深いのがスペリオルドラゴン(※2)で、当時、都市部に遠足に行った際に、周りの友達がお土産とかキーホルダーを買うなか、スペリオルドラゴンのプラモを買っていました。キラキラしてカッコよかったなぁ…」

好きなアーティストの作品は手元に置きたい

冒頭で実家の自室には大量の蔵書が並んでいることを紹介した。驚くことに、今も帰省した際は本棚から思い出のマンガを取り出し読み直しているという。

「帰省する時は、『今回は実家でこれを読もう』と決めたりもしています。昔読んでいたマンガも、久々に読むと新鮮な気持ちで楽しめるので、おもしろいですよね」

非常に物持ちのいい手塚だが、先述のように本を捨てることができない性分だという。

「東京に出てからも、変わらず週刊誌を買い続けていたんです。でも、やっぱり最初はお金がないのでワンルームにしか住めなく、そうなると雑誌の置き場所がなくなって、しばらくは段ボール箱に詰めて実家に送ってました。そうしたら、親からもう買うのをやめろと言われまして。確かに毎回それだけの本を送っていたら実家でも置き場所を取るし、本って結構重たいので配達員の方も運ぶのが大変だったそうです。これ以上迷惑をかけられないと思って雑誌を買うのを一旦やめて、代わりにコミックスを買い始めたら、今度はコミックスがたまり始めまして…。ただスパンとしては雑誌よりも間が空くので、まだマシでしたね」

もともと雑誌と並行してコミックスも集めていた手塚は、一人暮らしを機にコミックス中心にマンガを楽しむようになった。

「電子書籍でもマンガを購入するんですが、基本的に紙媒体が好きなので、コミックスという形で手元に置いておきたいんです。今も昔のマンガで読んでなかった作品は全巻追いかけて買いますし、1巻をジャケ買いした作品でおもしろかったら続きもまとめて買っています。今は音楽なんかもサブスクで、手元にジャケットとかCDがなくても聴ける時代じゃないですか。でも自分は好きなアーティストの作品は、ずっと手元に置いておきたいんですよ。

たぶん自分がアナログな世代だからなのかもしれませんが、形として残っていることに意義があると思うんですよね。愛着や思い出みたいなものって、便利さと反比例するというか。便利なものってイージーに手を出せるけど、思い入れもそこまで生まれないと思うんです。古くさくて、ちょっと面倒くさいけど、ひと手間をかける方が、後々残るものがあるんじゃないかな」

夢はマンガ家から声優へ…

小学校時代の将来の夢は「マンガ家になること」だったそうだが、そんな手塚に転機が訪れる。それが『月刊少年ガンガン』との出会いである。

「『ガンガン』に連載されていた『突撃!パッパラ隊』(※3)で、結構オタク脳にされた感があります。他にも『Z MAN』や『ハーメルンのバイオリン弾き』も全巻コミックスを買っていました。あと、『ドブゲロサマ』って知ってます? ジョージ秋山先生のマンガなのですが、青年誌のイメージがあったので、いきなり少年誌の『ガンガン』で連載をスタートした時はとても衝撃的でした。トラウマシーンだらけで…」

ますますディープなマンガの 世界にのめり込んでいく手塚少年。やがて彼は、マンガとライトノベルを掲載する『ドラゴンマガジン』(※4)を手に取るようにもなる。

「『ドラマガ』に連載されていた『スレイヤーズ』(※5)で、がっつりオタクになりました。あとは、あかほりさとる先生(※ 6)の作品にもハマって、特にのめり込んだのがゲームの『サクラ大戦』でした。そこからキャラクターデザインの藤島康介先生を知って、『ああっ女神さまっ』を読むようになって…」

マンガ好きからアニメ、ゲームを横断して楽しむオタクへと一段ステップアップした手塚は、自然な流れでゲームやアニメの名作群にも没頭するようになり、小学6年生の頃にはなりたい職業がマンガ家から声優へと変わっていたという。その後、高校を卒業と同時に上京。今や声優として第一線で活躍するまでになった。

「真島ヒロ先生の作品は『RAVE』(99年)の頃から知っていて、先生の最新作のアニメで自分がメインの一人をやらせていただいているというのは感慨深いというか、夢があるなと思います。やはり声優を長く続けていても、そういう思い入れのある作品に出ることができる人ってそう多くはないと思います。そう考えると、自分は幸せ者です」

その一方で、マンガを読む時は「このアニメに出たい」といった気持ちを、不必要に抱かないようにしているという。

「それは好きな作品に出たい、オーディションを受けたいという気持ちはありますけど、そこは変に仕事に結びつけたりはしませんね。純粋にマンガファンとして、おもしろかったなと。シンプルにそう思いつつ、変な邪念はなく楽しんでいます」

そういうピュアなマンガ愛が、キャラクターとの一期一会の縁を運んでくるのかもしれない。ちなみに最近楽しんでいるタイトルを聞いたところ…。

「『死役所』『満州アヘンスクワッド』『九条の大罪』『東京卍リベンジャーズ』、少し前の作品ですが『タコピーの原罪』。あとは『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』です。浅野いにお先生の作品が好きなんです。それと『闇金ウシジマくん』も最近読み返しました。新旧問わず、おもしろいと思ったらなんでも読んでいます」

やはりなかなか通なチョイスである。ここで、一つ聞いてみたいことがあったので、思い切ってたずねてみた。それは「エッチなマンガ」も読んでたんですか、ということだ。手塚は、自身のツイッターにて、親が作ってくれた本棚には、一般のマンガ雑誌とともに成人向けマンガ雑誌『コミック阿呍』(※7)もきれいにそろえられていたことを明かしている。そんな、下世話な質問にも「あぁ、読んでいましたよ」とあっけらかんと答えてくれた。流石、根っからのマンガ好き! マンガ作品に貴賤なし、だ。

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