100年後の伝統工芸を目指す、スケートボードのアート作品。

使っていくうちにどうしても傷だらけになり、本来の使い方ができなくなってしまうスケートボードの板。それをアクセサリーやアートに加工しているのが「RE:BOARD(リボード)」のオーナー、 山﨑元弥さんだ。山崎さんはどのようなきっかけでスケートボードの板で作品を作ろうと思ったのか、生い立ちと経緯を取材した。

「RE:BOARD(リボード)」オーナー・ 山﨑元弥さん|1984年横浜生まれ。中学3年でスケートボードに出会い、技を磨く。大学卒業後に訪れたオーストラリアで現地の人たちの生き方に影響を受け、独立を目指す。バーテンダーなどを経て2018年、古くなった自分のスケートボードを加工して家具やアクセサリーを作り始め、今の『RE:BOARD』を起ち上げる

デッキには映らない 美しさがある。

メイプルなどの木材を何枚も積層して作られるスケートボード。山﨑元弥さんは、そのカラフルな断面を使いアート作品やプロダクツをつくる『RE:BOARD』(リボード)を展開する。スケーターやアート好きに加え、エシカルな姿勢に魅かれる人も

デッキと呼ばれるスケートボードの板、それはたいていキズだらけだ。レールに乗るたび表面が削れ、お気に入りのグラフィックははがれる。オーリーをしくじれば板の端がカケて、Supremeのステッカーもはげるからだ。

「キズはキズでかっこいいし、味にもなる。でもボロボロになりすぎると、板がしならなくなり、使い物にならなくなるんですよね」

湘南の住宅街。その庭に建てた一坪ほどの工房で、山﨑元弥さんはキズだらけにヤレたスケートデッキの表面を見せながら、言う。

「ただね、コレを切ると、また違うかっこよさがあるんですよ」

ギュンと電ノコを走らせる。すると隠された美しい断面が現れた。茶、赤、黄、青、緑。やんちゃでワイルドなデッキの表面からは想像がつかないほどスケートデッキは、まぶしいくらいに鮮やかな美しさを隠しているのだ。

山﨑さんはこうしたデッキを再利用してアートや家具や雑貨を作る、風変わりなアーティストだ。屋号は『RE:BOARD(リボード)』。環境にやさしい、サステイナブルでエシカルなプロダクツとして注目されはじめている。

「エコとかを狙ったわけじゃなく、カルチャーにひかれたんですけどね。あとは二面性。スケートでも何でもそういうの、好きなんです」

シンプルに削り出したスケートデッキ製ハンガー。傷ついた表面がヴィンテージ感を醸し出す。2000円
ピアスやホテルキーホルダーといったアイテムは、エシカルマルシェなどで大人気。「実はスケートボードで……」と教えたくなる。1000円〜

野球に見当たらなかった、「自由」があった。

はじまりは中3の夏だった。生まれ育った横浜で続けていた野球部を引退。持て余した体力と時間を、港南台の駅前で出会ったスケートボードに乗せ換えた。

「ダボッとした格好で、アブないトリックを決める。野球に比べると圧倒的に“自由”だったんですよね。ただ同時に練習を積まなきゃうまくならない。アスリート的な面があるのもよくて」

やはり二面性に魅かれたわけだ。だから高校入学後はバッティングの分解写真を真似るようにスケート専門誌の分解写真を賢明にトレースした。大学時代も同様に没頭。遊びはスケート、バイトもスケートショップだった。なんて書くと、そのままプロスケーターになりそうだが、本人は「ただの悪ガキで」と振り返る。

「でも本心からやりたいことだけしていたかった。だから4年になっても就活をしなかったくらい」

金融業や製造業、IT業界と友人たちが進む道を決める一方、山﨑さんは別の道へ。オーストラリアへ、逃げ込んだ。目的はなかった。1年間、パースを中心に大工の見習いをしつつダラダラ過ごした。各地のスケートパークで滑った。ことさら友人がたくさんできたわけでもない。

「孤独な時間が多くてね。日本でスケートや大学の仲間といた時間って貴重だなって南半球で気付いた。そんなだから銀行やメーカーなんかに入ってバラバラになった友達が集まれる場をつくりたい、って強く思ったんですよ」

帰国後、何年か飲食ベンチャーで修行したのち、本当にそんな場をつくる。JR大船駅前の商店街にバー『JAM』を開店させた。

「即興でジャムるように誰かと誰かがバーで盛り上がって、遊べる。名前どおりの店になりましたね」

ただ3年もすると「また別のことがしたくなって」店を売却。湘南のスタイルのある宿泊施設『8ホテル』に引き抜かれ、飲食部門のプロデューサーになった。

「社長から『好きなようにやっていい』と言われたのもぐっときて

こうして30代中頃には安定した収入を得る一方、大船のビルを借り、仲間と酒を飲みながら、バンド演奏を楽しむ「隠れ家」も作った。元悪ガキの仕上がりとしては、なかなかのものだ。

「でもやっぱり会社勤めですからね。本気で好き勝手はできないジレンマはあった。自由に好きなことがやれてるか? と自問すると違うなって思いがいつもあって」

そして『リボード』が生まれる。

自宅の庭にわずか1畳ほどの小屋を自作。そこでスケートデッキを削り、アート作品や家具や雑貨に生まれ変わらせている。
材料はスケートショップに持ち込まれた古い板(デッキ)が中心。「かつては廃棄料を払って捨てていたものを活用しています」

下書きも、線も書かず、頭の中で、自由を形に。

細々続けていたスケートボード。ある夜、滑り込んだ結果、デッキが折れて、あの七色の断面が現れた。「この色を活かして何かできそうだな」とひらめいたという。

試しに壊れた自分の板を削り、貼りつけ、何とか正方形にしてプランターをつくった。ワイルドなスケートデッキの表面の裏にある別の美しいデザイン。自分で作っておきながら「いいな……」と強く感じた。オーストラリアでの大工の経験と、幼少の頃からバイクやクルマをいじってきた親譲りの器用さも役に立ったようだ。何より“自由”に形づくれる。スケートに初めて出会った、あの頃を思い出させ、ワクワクした。

「設計図も描かず、下書きの線もほぼひかずに、頭の中だけで作った形を切り出す。その縛られない感覚がおもしろみなんですよ」

同じおもしろさを感じる仲間も自然に集まった。インスタにアップしはじめると「欲しい」の声があがった。飲食店を通して地域に大勢の仲間がいたことも大きかった。「ディスプレイ用に」「周年のグッズに」とオーダーが入ったからだ。その作品を見た人経由で、さらに知名度があがった。

今はエシカルなマルシェから出店依頼も後を絶たない。コラボも数多。最近はイタリアの某メーカーからオーダーがあったほどだ。

「嬉しいですよね。悪ガキの趣味からはじまったのに。でもスケートボードもまだ生まれてから10
0年も経っていない。デッキのプロダクトも続けていけば、伝統工芸みたいになっていくと思うんですよね。その礎を築けたらかっこいいかなと少しだけ思っている」

二面性か。悪ガキの裏にあるビジョンは、まぶしいほどに輝く。

『RE:BOARD』のオーナーの顔を持つ山﨑さん。加えてもうひとつミュージシャンの顔もある。地元・大船の某所にあるココは、秘密基地のようなスタジオ部屋。「友人たちと飲みながら、ジャムってます」
自ら塗った壁が印象的な秘密基地。そこかしこに『RE:BOARD』の作品が。もちろんこのランプシェードもそれです
藍×左官×スケートデッキのボブ・マーリー。藍左師Art MORIYA氏とのコラボレーションで作り上げたアート作品。「僕がボブ・マーリーの絵を書き、スケートデッキの加工で削り出したあと、藍を入れた左官仕事で仕上げました」。静寂と躍動感が同居する不思議な作品です。価格ASK
Square for what? 「立方体、何のために?」と名付けられたオブジェ。名前通り小物入れなどではなく単に正方形の置物で、ゴロっと部屋の片隅に置くのが正解。1万円

【DATA】
RE:BOARD
https://reboard.theshop.jp/
https://www.gig-lamps.com/

※情報は取材当時のものです。

(出典/「Lightning 2024年2月号 Vol.358」)

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