名だたるバッグブランドのデザインを手がける「スタンダードサプライ」デザイナー・藤本孝夫さん【アメトラをつくった巨人たち。】

「今回ご紹介するのは、『アーツアンドクラフツ』、『スタンダードサプライ』といったブランドをメインに、バッグ、革小物、ベルトなど、服飾雑貨の企画、製造卸、さらには昨年、二子玉川で直営店を移転増床したエバーグリーンワークスの藤本社長です。90年代の終わり頃、MADE IN U.S.A.にして、こなれた価格で種類も色も豊富に展開していた『WRAPS』というブランドからの長い付き合いになります。それまでは、ぼくもオリジナルでバッグは作っていましたが、さっさと切り替えてオンリーショップまで運営した間柄。今回は都下の某所にある藤本さんの隠れ家的倉庫での取材でした。ぼくも長年、いろいろとこだわってきたつもりですが、藤本さんの旺盛な好奇心、探究心にはあらためて驚きの連続でしたね」

【案内人】「Pt.アルフレッド」・本江浩二さん
「スタンダードサプライ」デザイナー・藤本孝夫さん|1965年生まれ、長崎県出身。桑沢デザイン研究所在学中に、ソックス専業のメーカーでデザイナー(アルバイト)を経験。卒業後にサザビー(現サザビーリーグ)に入社し、バッグデザイナーとしてのキャリアをスタートした後、旧知の仲にあった中川有司氏(現ユニオンゲート代表)とともにバッグをメインとしたOEM事業を展開。2006年にエバーグリーンワークスを設立し、「スタンダードサプライ」など多くの名ブランドを手掛けている

旧知の盟友とともに「ラップス」を設立

日本におけるアメカジムーブメントの礎を築き上げたリビングレジェンドたちの貴重な証言を、Pt.Alfred代表・本江さんのナビゲーションでお届けする本連載。今回ご登場いただくのは、「アーツアンドクラフツ」や「スタンダードサプライ」といったバッグブランドを展開するエバーグリーンワークス代表・藤本孝夫さん。

「高校時代に絵を描いて稼げる仕事に就きたいと考え、デザイン専門学校へ進学し、アパレルデザイナーを目指しました」と語るように、当初はアパレルデザイナー志望として桑沢デザイン研究所に入学。在学中からアルバイトデザイナーとしてソックスなど小物のデザインを手掛けていたという。

「学校の近くに当時サザビーが運営していたインテリアのお店があり、そこのスタッフさんたちから、デザイナーが募集されるという話を聞きつけ、応募したところ見事に在籍が決まり、配属されたのがたまたまバッグ部門だったワケです。半年ほど倉庫番をやった後に本社に呼び戻され、ようやくデザイナーとしてのキャリアをスタートしたのですが、徐々に会社の規模が大きくなるなか、同僚に誘われるかたちで独立。

当初は彼の父親がやっていた履物会社の東京支社として別注系のOEM事業などを中心に展開していました。そんな折、知人からビームスの舘野さん(ビームス プラスのオープニングスタッフでもあった伝説的バイヤー)をご紹介いただき、彼らのリクエストに応えるかたちで本格的にバッグ生産が始まりました」。

藤本さんに独立を勧め、ともに会社を立ち上げた同僚とは、後に「ブリーフィング」などを手掛ける現ユニオンゲート代表取締役社長・中川有司氏であった。ともに“鞄族”としてキャリアを積んだおふたりは、当時はまだ手頃な価格帯で実現可能だったアメリカの生産背景をベースに、自身らのオリジナルブランドとして1997年に「ラップス」を設立する。

「出張を重ねて、アメリカでのものづくりがスタート。中川氏がセールス全般、ぼくが企画全般を担当していましたが、本江さんのお力を借りるかたちで恵比寿に旗艦店をオープンし、徐々に知名度を上げていきました。とはいえ、やはりMADE IN U.S.A.をぼくらの納得のいく価格帯で続けていくのは難しく、さらにぼく自身が自分のやりたいことをもっと違うかたちで表現したいと考え、2004年に会社から籍を抜き、フリーランスデザイナーとして独立していったワケです」。

好奇心を具現化した「アーツアンドクラフツ」

2004年の独立と同時に、藤本さんは自身のルーツでもあるアメリカンヘリテージへと立ち返り、“FUNCTIONAL BEAUTY(用の美)”をコンセプトとした国産バッグブランド「アーツアンドクラフツ」を立ち上げた。

「OEMのお手伝いなどもしていたビームス プラスの世界観が当初のイメージソースでもありました。個人的なルーツでもあり、常に興味の対象でもあったアメリカンヘリテージに現代的な機能性を加えながら、往年の武骨なプロダクトを日本の職人業で蘇らせる。『アーツアンドクラフツ』をそんな思いのもとにスタートし、2006年に自身の屋号としてエバーグリーンワークスを設立しています」。

今回うかがった都下の某所にあるアトリエには、そんなお話を体現するように、数多のコレクションが保存されており、そのどれもが藤本さんのデザイン哲学へと直結する質実剛健かつ合理的なアメリカならではのヘリテージばかりだった。事業が軌道に乗ってもなお、自身がデザイナーとして第一線で活躍し続けるスタイルもまた、多くの試行錯誤の末に結実した往年のヘリテージやその背景を想起させる。

「もちろん細かな図面などは任せているものの、アイデアやデザイン自体はぼく自身が最も表現したい部分でもあります。そのため妥協も当然許されない。スタート当初から展開しているベーシックトートには、ホーウィン社製のクロムエクセルレザーを採用していますが、当時の仕入れ値と比較するといまや2.5倍ほどの価格となっています。一時は国産レザーで再現を試みましたが、やっぱり納得のいくものにはならなかった。ですから、販売価格に転嫁するほかないワケですが、個人的には仕方ないことだと考えています。やるからには質を落とさず、良いものを届けたいですから」。

この記事を書いた人
2nd 編集部
この記事を書いた人

2nd 編集部

休日服を楽しむためのマガジン

もっと休日服を楽しみたい! そんなコンセプトをもとに身近でリアルなオトナのファッションを提案しています。トラッド、アイビー、アメカジ、ミリタリー、古着にアウトドア、カジュアルスタイルの楽しみ方をウンチクたっぷりにお届けします。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

【Tricker’s × 2nd別注】英国の伝統と歴史が宿る質実剛健なカントリーブーツをネイビーで

  • 2026.03.18

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 革靴の名門「トリッカーズ」とのコラボが実現。ストウ ネイビーカーフ 革靴の聖地として名高い英国・ノーサンプトンにて1...

開襟シャツに刺繍入りジャケット……老舗デニムブランドが提案する、春夏のアメカジスタイル。

  • 2026.04.01

老舗デニムブランドであるステュディオ・ダ・ルチザンが提案する、春夏のアメカジスタイル。定番ジーンズからHBTのワークセットアップ、開襟シャツや刺繍入りジャケットまで、軽やかな素材と遊び心あふれるディテールで、春夏の装いを彩る。 [5743]ボーリングシャツ 1950年代のヴィンテージ・ボーリングシャ...

横浜・裏元町に店を構える、元毛皮店がつくる、「H LEATHER」のデイリーウエア。

  • 2026.04.01

2024年に横浜・裏元町に店を構えた『Hレザー』。元毛皮店として長年培った革への知見を背景に、軽く柔らかなシープレザーのウエアを展開。ショップにはレザージャケットやシャツなどの製品が並び、日常で楽しむレザーの魅力を伝えている。 レザーをもっと日常に育てる楽しさを伝えたい [caption id=""...

横浜発アメカジブランド「HEATH」による、定番アメカジのマストアイテム5選はこれだ!

  • 2026.04.03

横浜を拠点に、定番からちょっとアレンジの効いたアメカジを提案するHEATH。人気ブランドのアイテムをセレクトするだけでなく、オリジナルのモノづくりにも注力しており、そのコストパフォーマンスの高さには定評がある。今回はその中から絶対に手に入れておきたいマストアイテム5選を紹介しよう。 【横濱デニム】デ...

福島・郡山にある日本最大級のアメカジショップ「JOB314」はスケールが桁違い!

  • 2026.03.30

日本にアメカジショップは数あれど、ここまで大きなショップは見たことがない。それほどまでに大規模なショップがこちらのJOB314。大きな建物の中には、アメカジファンが泣いて喜ぶブランドがほとんど取り揃えてあり、一日中いても見切れないほど。近県のみならず、全国からファンが集まるアメカジの総本山なのだ。興...

Pick Up おすすめ記事

福島・郡山にある日本最大級のアメカジショップ「JOB314」はスケールが桁違い!

  • 2026.03.30

日本にアメカジショップは数あれど、ここまで大きなショップは見たことがない。それほどまでに大規模なショップがこちらのJOB314。大きな建物の中には、アメカジファンが泣いて喜ぶブランドがほとんど取り揃えてあり、一日中いても見切れないほど。近県のみならず、全国からファンが集まるアメカジの総本山なのだ。興...

【連載】ビートルズのことを考えない日は一日もなかった

  • 2024.02.05

80年代、私的ビートルズ物語。 ビートルズ研究と収集に勤しむビートルデイズを始めて早44年(Since1980)。 なにをするにもビートルズが基準だった『昭和40年男』編集長のビートルズ史を、 当時の出来事とともに振り返ります。

【Tricker’s × 2nd別注】英国の伝統と歴史が宿る質実剛健なカントリーブーツをネイビーで

  • 2026.03.18

これまでに、有名ブランドから新進気鋭ブランドまで幅広いコラボレーションアイテムを完全受注生産で世に送り出してきた「2nd別注」。今回もまた、渾身の別注が完成! >>購入はこちらから! 革靴の名門「トリッカーズ」とのコラボが実現。ストウ ネイビーカーフ 革靴の聖地として名高い英国・ノーサンプトンにて1...

「バンソン」のタフネスを、春夏へ。伝説の映画『EASY RIDER』とのコラボアイテムにも注目だ

  • 2026.04.02

バイカーブランドの代名詞、VANSON。今春は軽やかな布帛アイテムでイージーな装いを提案。そして伝説の映画『EASY RIDER』とのコラボレーションも登場。自由なスピリットを、そのまま服に落とし込んだラインナップを紹介する。週末のライドにも、街の散歩にも、着ることで体感できるフリーダムさを、VAN...

開襟シャツに刺繍入りジャケット……老舗デニムブランドが提案する、春夏のアメカジスタイル。

  • 2026.04.01

老舗デニムブランドであるステュディオ・ダ・ルチザンが提案する、春夏のアメカジスタイル。定番ジーンズからHBTのワークセットアップ、開襟シャツや刺繍入りジャケットまで、軽やかな素材と遊び心あふれるディテールで、春夏の装いを彩る。 [5743]ボーリングシャツ 1950年代のヴィンテージ・ボーリングシャ...