ジーンズの色落ちはここがキモ。経年変化ポイント7選。

ジーンズ(デニム)が好きな人、とくにデニムラバーとも呼ばれる狂信的(良い意味で)な人たちが大事にしているのが穿き込むことで生まれる色落ち。

着用や洗濯を繰り返すことで持ち主のライフスタイルが刻まれるかのような経年変化をするのが「カッコいい」とされるのはデニムやレザーならではの楽しみだ。

そんなデニムならではの経年変化における「見るべき、気にするべき」ポイントを解説。今ではデニム好きたちの専門用語にもなっている7つをピックアップしてみたぞ。

日々変化し色落ちするから、また新たに育てたくなる無限ループ。

本来、衣類の色落ちは工業製品としてはNGだけど、ことジーンズにおいてはインディゴに染められた糸で織られた生地が洗濯や着用によって色落ちしたり生地が洗濯によって縮んだりすることが特徴。

それが着用者のクセでそれぞれのカタチや色落ちになっていくことが、デニム好きたちを熱くさせるひとつの魅力にもなっている。

歴史的には、色落ちしにくいデニムや防縮加工がされた生地というのも生まれたけれど、昔ながらの色落ちだったり、縮んだりするスタイル(シュリンク・トゥ・フィット)が「自分らしく育てる」という楽しみを教えてくれる。

それはレザーアイテムにも似ていて、自分だけの1着へと変化していくことは、まるでRPGゲームで自分の名前を付けた主人公が育っていくかのように楽しい作業だったりするのだ。

もちろんかつてはそんな育てる楽しみや色落ちの良い、悪いなんていうものさしは無かったわけで、近年になって色落ちが美しい昔ながらのジーンズが世の中に出てきたことで「色落ち」がコアなデニム愛好家にとってキーワードになった。まさに現代になって生まれたジーンズの新たな価値なのだ。

そもそもインディゴ染料は、染料そのものの堅牢度が低く、さらに生地を構成する糸の芯まで染料に染まっていないことから起こる現象。

他の衣類が激しい色落ちをしないのは、糸の芯まで染料によって染まっているからで、逆にデニム生地は、もともと安価なワークウエアとしての需要によって生まれたため、見た目よりも、ハードワークに耐える丈夫な衣類であることが最優先。

使用するごとに褪色していくことは問題ではなかったため、当時から安価だったインディゴ染料が使われ、多少色落ちしても誰も文句を言わなかったんだろうと推測される。

つまり糸の芯までインディゴでしっかりと染めてしまえば、逆にメリハリのある美しい色落ちはしないというこれまた皮肉な話。つまりは技術が未熟だった時代の副産物だったってわけだ。

その色落ちがヴィンテージと呼ばれる旧いジーンズほどメリハリがあって美しく、それが雰囲気があってカッコ良いんじゃない? と多くの人が思い始める。実際に紡績や染色技術、それに生地を織る織機のなどの進化で、現代のジーンズはメリハリのある色落ちがしなくなっていたことでその違いが知られるようになっていった。

そこで生まれたのが現代のブランドも美しい色落ちを楽しめる昔風のジーンズを再現して、ファッションアイテムながら「育てる楽しさ」という新たな価値をジーンズに見出したってわけだ。

つまり色落ちに定評のあるデニムは、昔と同じようにインディゴに染めるタテ糸は芯まで染まっていないというわけ。

せっかく穿くなら、穿き込んだ後もカッコいいものがうれしいのは当然。今ではいかに自分の好みに色落ちさせるかを研究している愛好家までいるようになった。

最近では日本ならではの近年のデニム文化が世界中に広まり、同じように色落ちにこだわるデニムラバーは世界中に存在している。

いわゆるヴィンテージジーンズやヴィンテージスタイルのジーンズを育てたい人には、以下のポイントを知っておくと、そんな「好き者」な人たちとのジーンズ談義に花が咲くこと間違いなし。

Keyword_01 タテ落ち

通常のインディゴデニムはタテ糸がインディゴ染料で染まっていて、ヨコ糸は白いまま。さらにタテ糸が芯までインディゴに染まっていないので、着用と洗濯を繰り返すと、タテ糸の染まっている部分が褪色したり削れたりして、中の白い部分がところどころ見えてくる。このタテ状に白い点が連なったように見えてくるのがタテ落ち。元々はヴィンテージデニム特有の色落ちだったもので、現在でも色落ちにこだわるデニムは、ヴィンテージさながらの独自のレシピで生地を織っているので、タテ落ちしてくれる生地が多い。メリハリのあるタテ落ちがカッコイイと表現するデニムラバーは多い。

Keyword_02 ヒゲ

股の内側にヨコや斜めに線状に色落ちする様子がヒゲと呼ばれる色落ち。立ったり座ったりを繰り返すことでできた生地が盛り上がるようなクセができた部分が高い頻度でこすれることで、周りの部分よりも先に色落ちし、このような線状の色落ちが表れてくる。腰周りや腿周りがタイトなモデルであるほどたくさんのヒゲが出やすいので、ヒゲをたくさん出したい人はジャストサイズでタイトなシルエットを穿き込むなんていう話を聞いたことがあるほど。フロントからジーンズを見たとき表情豊かにしてくれる経年変化。ヒゲがたくさん出た状態を「鬼ヒゲ」と表現する人もいる。

Keyword_03 ハチノス

パンツでは膝裏、デニムジャケットでは肘の内側の可動部分にこのような色落ちが見えてくる。いわゆる曲がりジワがそのまま生地の凹凸になって色落ちすることで、蜂の巣状の濃淡が出てくることからいつしかハチノスと呼ばれるようになった。写真のように激しくハチノスを出したいなら、タイトなシルエットや、ノンウォッシュで糊を落とさない状態でしばらく着用するなんていう人もいる。ただ、あまりわざとらしい色落ちは逆効果。あくまで自然にできたハチノスが雰囲気あり。

Keyword_04 裾のチェーンステッチ仕上げ

デニムの経年変化にこだわりたい人に大事な部分が裾のチェーンステッチ。ほとんどのデニムが最初から裾はチェーンステッチ仕上げになっているけれど、アメリカのミシンであるユニオン・スペシャルによるチェーンステッチで縫われ、縫製糸が綿糸だと、より経年変化が楽しめると言われている。ミシンのパワーで生地がねじれるだけでなく、縫製糸の綿糸も洗濯で縮んだり、綿糸ならではの糸自体の色落ちもあるため、波状の凹凸が生まれ、それが雰囲気に。シングルステッチ縫製だとここまで凹凸が出ないので、裾もヴィンテージさながらの雰囲気にしたいなら、綿糸によるチェーンステッチ仕上げがおすすめだ。ただ、綿糸は切れやすいので、激しい使用によって糸が切れてしまうことも織り込み済みでこだわっていただきたい。

Keyword_05 アタリ

ヴィンテージ(リーバイスであれば1980年代以前)やヴィンテージスタイルのデニムは、旧式の力織機を使って織られたセルビッジ(生地のミミ)付きの生地を使っていることがほとんど。パンツの場合、セルビッジ部分を外側のサイドシームに使っているので、最初はフラットだった生地が、着用と洗濯を繰り返すと裏側にあるセルビッジの凹凸部分がアタリとなって、表面に独特な経年変化を生み出してくれる。これをサイドのアタリと表現する。これがキレイに出てくるとヴィンテージデニムさながらの表情に見えてくる。セルビッジの無い生地の場合はサイドシームの端がロックミシンで縫われているだけなので、セルビッジデニムほどアタリが激しく出なかったりする。

Keyword_06 パッカリング

ヴィンテージ(1950年代ごろまで)やヴィンテージスタイルのデニムは縫製糸に綿糸を使っているので、縫製糸そのものもが褪色したり、洗濯によって縮むことによって生地が引っ張られたり、昔のミシンで縫製することで、縫製部分に波打つような凹凸(縫い縮み)ができる。これが着用を繰り返すと強調されて独特の経年変化に。これがパッカリングと呼ばれる部分。現代のポリエステル素材の縫製糸だと、色落ちや糸自体が縮むことはないので激しくパッカリングが出ることはない。ちょっとしたディテールが全体の雰囲気をカッコ良くしてくれる、デニム愛好家はけっこう気にする重要な部分。

Keyword_07番外編 ビーフジャーキー

ヴィンテージデニムにも見られるレザーパッチが縮んで乾燥した状態。レザーの素材や乾燥機に入れるなど、特定の条件がそろったときに起きる現象で、雰囲気はヴィンテージっぽくなるけれど、腰周りの生地が波打ってしまうので穿きやすさは損なわれてしまう場合もある。ヴィンテージジーンズではビーフジャーキー状になったパッチは外されることが多かった。そんな性質があったため、後年のジーンズは素材が安定している紙パッチになったという説もある。経年変化のひとつではあるが、すべてのレザーパッチがこうなるわけではないし、色落ちとは関係ないので番外編として紹介。

この記事を書いた人
ラーメン小池
この記事を書いた人

ラーメン小池

アメリカンカルチャー仕事人

Lightning編集部、CLUTCH magazine編集部などを渡り歩いて雑誌編集者歴も30年近く。アメリカンカルチャーに精通し、渡米歴は100回以上。とくに旧きよきアメリカ文化が大好物。愛車はアメリカ旧車をこよなく愛し、洋服から雑貨にも食らいつくオールドアメリカンカルチャー評論家。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

気鋭のアイウエアブランド「CUBITTS」が描く、クラシックとモダンの共鳴

  • 2026.10.19

18世紀から20世紀にかけて眼鏡産業の世界的な中心地であったものの戦後、衰退の一途を辿ったロンドン。この地で2013年に創業した「キュービッツ」は当時を彷彿とさせるクラシックスタイルをモダンに昇華させた独自の世界観を築く気鋭のブランドだ。 伝統と現代とを繋ぐアイウエアの研究所 「キュービッツ」は伝統...

金子ノブアキが着る【REDKAP × FREAK’S STORE】

  • 2026.10.21

長い歴史を持つワークウエアブランド〈レッドキャップ〉と〈フリークス ストア〉のコラボアイテムを金子ノブアキが今の感覚で着こなす。年齢を重ねたからこそ楽しめる服のこと、ブランドが持つ哲学のこと、そしてこれから大切にしていきたいこと。45歳を迎えた金子さんに、ファッションと生き方について話を聞いた。 タ...

メイド・イン・ノーサンプトンを貫く英国靴の筆頭「Crockett & Jones」のモノづくり

  • 2026.10.21

革靴の聖地であるノーサンプトンにて1879年に初声をあげた〈クロケット&ジョーンズ〉。英国靴を語る上で欠かすことのできない同ブランドのモノづくりの現場に足を運んだ。 一足の革靴に宿る147年の歴史と誇り 革靴産業の一大拠点として名を馳せる英国・ノーサンプトン。中世から靴職人が集まり、17世紀には軍用...

HISTORY OF B.V.D. 着心地を追求した150年

  • 2026.10.20

1876年、ニューヨークで誕生したB.V.D.。風を通すゆったりとした肌着から、水着、街や休日を彩るシャツまで。その歩みを貫くのは、日々を心地よく過ごすための工夫だ。時代ごとの広告や製品を手がかりに、着心地を追求してきた150年をたどる。 HISTORY OF B.V.D. 1876年 ニューヨーク...

ガレージ、インテリア、リフォームまで! 趣味人のための、物件案内。

  • 2020.01.20

好きなものと暮らす、理想の城を手に入れよう。 家は、ただ暮らすためだけの場所じゃない。 どこに住むか、どんな空間にするか、そこで何を楽しむか。 ガレージハウスやアメリカンハウス、趣味部屋、インテリア、リノベーションまで、 「Lightning」ならではの視点で趣味人の理想の住まいを紹介する。

#PR

Pick Up おすすめ記事

「BEORMA」140年の伝統を受け継ぐ、英国屈指のレザークラフト

  • 2026.10.21

英国トラッドを語るうえで欠かすことのできない存在がレザークラフトだ。140年の歴史とクラフトマンシップを受け継ぎ、現代のスタイルにも馴染む唯一無二のプロダクトを生み出す〈べオーマ〉は、その筆頭となりうる存在だ。 熟練職人の魂宿る伝統のレザークラフト 英国中部の小さな町・ウォルソール。革加工・馬具産業...

東京・入谷にできた靴づくりの新聖地「THE ZINE FOOTWEAR CLUB.」にメディア初潜入!

  • 2026.10.18

「ブラザーブリッジ」や「シュアブーツ」を手がける「ザ ジン フットウェア」。店舗と企画・縫製工場がひとつになったいわば“本拠地”を入谷に新設した。メディア初公開となる、その全貌に迫る。 メーカーでもあり店舗でもある新拠点 弊誌の読者であれば、おそらく「ブラザーブリッジ」という革靴ブランドはご存知であ...

東洋エンタープライズが手がける「ゴールド」。高品質な素材選びに一切の妥協なし。

  • 2026.10.20

1965年に創業した日本屈指の老舗メーカー東洋エンタープライズ社が手がける〈ゴールド〉。同社が得意とするヴィンテージへの膨大な知見と技術力の高さを活かしつつも上質にモダナイズしたものづくりに定評がある。着用時のシルエットはもちろん、高品質な素材選びに一切の妥協をしないこと。それこそがシンプルな服に深...

気鋭のアイウエアブランド「CUBITTS」が描く、クラシックとモダンの共鳴

  • 2026.10.19

18世紀から20世紀にかけて眼鏡産業の世界的な中心地であったものの戦後、衰退の一途を辿ったロンドン。この地で2013年に創業した「キュービッツ」は当時を彷彿とさせるクラシックスタイルをモダンに昇華させた独自の世界観を築く気鋭のブランドだ。 伝統と現代とを繋ぐアイウエアの研究所 「キュービッツ」は伝統...

世界最高峰のニットメーカー「JOHN SMEDLEY」が編むもの。

  • 2026.10.20

イングランド中部、リーミルズの自社工場で240年以上前からニットウエアを作り続ける〈ジョン スメドレー〉。1784年に創業した同ブランドが編んできた歴史と伝統が息づく場所で彼らが編むものとは。 240年の伝統と魂が息づくファクトリー 英国のトラッドブランドとして群を抜く歴史を持つのが〈ジョン スメド...