ネイティブアメリカンジュエリーの装飾に魅了された。

ヴィンテージという概念が存在する世界には、必ずコレクターが存在する。そのカテゴリーは細分化されており、デニムのようにメジャーなものから知る人ぞ知るニッチなものまで、奥深い世界が広がっている。ネイティブアメリカンジュエリーの世界に魅せられ、独自に研究してブランドまで立ち上げた荻田修平もそんなコレクターのひとり。その貴重なコレクションを見せてもらった。

独自追求でブランドを立ち上げたスペシャリスト。

荻田修平。1980年生まれ。三重県出身。米国留学、ドメスティックブランドスタッフを経て、アメリカンジュエリーブランドTah’Bah TRADERSを立ち上げる。www.tahbah.com

幼少期からアメリカンカルチャーに触れ、米国へ留学した荻田さん。帰国後に有名ドメスティックブランドのスタッフとして活躍。それと平行して独自にネイティブアメリカンジュエリーの世界を追求し、Tah’Bah TRADERSを立ち上げる。

ネイティブアメリカンジュエリーの黎明期にあたる1800年代から1950年代頃までのアンティークを主軸としており、日本屈指のスペシャリストとしても有名。今も年に数度はアメリカに渡り、買い付けやその研究を行っている。

その博識ぶりと人柄の良さから多くのファンを持っており、定期的に全国でポップアップショップを開催。ホームページの商品詳細や時代背景などの解説にも定評があり、その文面からネイティブアメリカンジュエリーへの愛とリスペクトを感じ取れることができる。今年はオープンして10周年で、そのアニバーサリーアイテムを展開する。

そんな荻田さんのネイティブアメリカンジュエリーコレクションの一部をご紹介。

1.1910s~30s NAVAJO

1910年代頃~30年代のバングルで、インゴットシルバー製法や力強いスタンプ、リポーズなどナバホの伝統的な技術が詰まったアンティーク作品となっている。

2.1920s NAVAJO

ウィービングログやアローなどの印象的なスタンプ使いが光る1920年代前後に作られた作品。荻田氏が十数年前に出逢った思い入れのあるアンティークのひとつである。

3.1910s~20s Hubbell Trading Post

ハッベルトレーディングポストが、ベネチアやチェコスロバキアにオーダーしたガラス製のイミテーションターコイズである『ハッベルグラス』がマウントされたバングル。ヒストリックなピースだ。

4.1930s~40s HOPI

ホピ族が得意とするオーバーレイの初期作品。かなり厚いシルバーを用いているのがおもしろい。GI Bill(復員軍人援護法)などの彫金クラスで教材として作られた可能性も。

5.1890s NAVAJO

ネイティブアメリカンジュエリーの黎明期に作られたプリミティブな作品。多くのナバホ族の現代作家が、リバイバル作品を制作しているスペシャルピースのひとつである。

6.1910s~20s NAVAJO

今も多くの作家がベースとするトライアングルシェイプの作品。ただ現行とは違い、インゴットシルバーから形成された力作であり、シンプルなスタンプワークが叙情的である。

7.1950s Sam Roanhorse

ナバホの巨匠アンブローズ・ローアンホース(1904-1982) を兄に持つ作家サム・ローアンホース(1915or1916-1983)の作品。ペトリファイドウッドを用いた個性的なリングである。

8.1920s~30s NAVAJO

大胆なターコイズ使いが光るリングは、現行作品では定番となっているインナースタンプが施されている。この手の意匠は、アンティークでは滅多に見られず、スペシャリティなピース。

9.1950s~60s Ambrose Lincoln

サンドキャストで成形された造形の美しいクロストップと、ハンドメイドのナバホパールで構成されたネックレスは、ナバホの巨匠を兄に持つアンブローズ・リンカーン(1917-1989)の作品。

10.1930s~50s NAVAJO

ネイティブアメリカンの神聖なモチーフのひとつであるサンダーバードのピンズ。アローヘッドをモチーフとしたホールマークが入るが作者は不明。この作家による作品を他にも確認。

11.1930s~40s Benny Apachito

このシルバートレイは、多くの有名作家を輩出したガーデン・オブ・ザ・ゴッズ トレーディングポストに所属した作家であるベニー・アパチート。彼のホールマークが裏に刻印されている。

12.1920s~30s NAVAJO

当時、懐中時計に装着していたウォッチフォブの希少なデッドストック。インゴットシルバーから形成されたサンダーバードは、伝統的なスタンプワークで個性的に仕上げた。

13.1890s NAVAJO

ナバホジュエリーの古典期にあたるコンチョ。プリミティブながらも重厚感のあるデザインで、今も受け継がれている伝統的な技法が駆使されている、歴史的価値のある作品と言えるだろう。

14.1930s~50s NAVAJO

ナバホの巨匠であるアイク・ウィルソンまたは、その妻であるキャサリン・ウィルソンによる作品。立体的な半球体のコンチョをフェイスにしたユニークなデザインが個性的だ。

(出典/「CLUTCH2023年6月号 Vol.91」)

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