独自追求でブランドを立ち上げたスペシャリスト。
幼少期からアメリカンカルチャーに触れ、米国へ留学した荻田さん。帰国後に有名ドメスティックブランドのスタッフとして活躍。それと平行して独自にネイティブアメリカンジュエリーの世界を追求し、Tah’Bah TRADERSを立ち上げる。
ネイティブアメリカンジュエリーの黎明期にあたる1800年代から1950年代頃までのアンティークを主軸としており、日本屈指のスペシャリストとしても有名。今も年に数度はアメリカに渡り、買い付けやその研究を行っている。
その博識ぶりと人柄の良さから多くのファンを持っており、定期的に全国でポップアップショップを開催。ホームページの商品詳細や時代背景などの解説にも定評があり、その文面からネイティブアメリカンジュエリーへの愛とリスペクトを感じ取れることができる。今年はオープンして10周年で、そのアニバーサリーアイテムを展開する。
そんな荻田さんのネイティブアメリカンジュエリーコレクションの一部をご紹介。
1.1910s~30s NAVAJO
1910年代頃~30年代のバングルで、インゴットシルバー製法や力強いスタンプ、リポーズなどナバホの伝統的な技術が詰まったアンティーク作品となっている。
2.1920s NAVAJO
ウィービングログやアローなどの印象的なスタンプ使いが光る1920年代前後に作られた作品。荻田氏が十数年前に出逢った思い入れのあるアンティークのひとつである。
3.1910s~20s Hubbell Trading Post
ハッベルトレーディングポストが、ベネチアやチェコスロバキアにオーダーしたガラス製のイミテーションターコイズである『ハッベルグラス』がマウントされたバングル。ヒストリックなピースだ。
4.1930s~40s HOPI
ホピ族が得意とするオーバーレイの初期作品。かなり厚いシルバーを用いているのがおもしろい。GI Bill(復員軍人援護法)などの彫金クラスで教材として作られた可能性も。
5.1890s NAVAJO
ネイティブアメリカンジュエリーの黎明期に作られたプリミティブな作品。多くのナバホ族の現代作家が、リバイバル作品を制作しているスペシャルピースのひとつである。
6.1910s~20s NAVAJO
今も多くの作家がベースとするトライアングルシェイプの作品。ただ現行とは違い、インゴットシルバーから形成された力作であり、シンプルなスタンプワークが叙情的である。
7.1950s Sam Roanhorse
ナバホの巨匠アンブローズ・ローアンホース(1904-1982) を兄に持つ作家サム・ローアンホース(1915or1916-1983)の作品。ペトリファイドウッドを用いた個性的なリングである。
8.1920s~30s NAVAJO
大胆なターコイズ使いが光るリングは、現行作品では定番となっているインナースタンプが施されている。この手の意匠は、アンティークでは滅多に見られず、スペシャリティなピース。
9.1950s~60s Ambrose Lincoln
サンドキャストで成形された造形の美しいクロストップと、ハンドメイドのナバホパールで構成されたネックレスは、ナバホの巨匠を兄に持つアンブローズ・リンカーン(1917-1989)の作品。
10.1930s~50s NAVAJO
ネイティブアメリカンの神聖なモチーフのひとつであるサンダーバードのピンズ。アローヘッドをモチーフとしたホールマークが入るが作者は不明。この作家による作品を他にも確認。
11.1930s~40s Benny Apachito
このシルバートレイは、多くの有名作家を輩出したガーデン・オブ・ザ・ゴッズ トレーディングポストに所属した作家であるベニー・アパチート。彼のホールマークが裏に刻印されている。
12.1920s~30s NAVAJO
当時、懐中時計に装着していたウォッチフォブの希少なデッドストック。インゴットシルバーから形成されたサンダーバードは、伝統的なスタンプワークで個性的に仕上げた。
13.1890s NAVAJO
ナバホジュエリーの古典期にあたるコンチョ。プリミティブながらも重厚感のあるデザインで、今も受け継がれている伝統的な技法が駆使されている、歴史的価値のある作品と言えるだろう。
14.1930s~50s NAVAJO
ナバホの巨匠であるアイク・ウィルソンまたは、その妻であるキャサリン・ウィルソンによる作品。立体的な半球体のコンチョをフェイスにしたユニークなデザインが個性的だ。
(出典/「CLUTCH2023年6月号 Vol.91」)
Photo by Kazuya Hayashi 林和也 Text by Shuhei Sato 佐藤周平
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