当時のホットロッド文化を追いかける大人の趣味。
アメリカのトラディショナルなスポーツカー文化であるホットロッド。ドライレイクレースに端を発し、世界恐慌や戦争など様々な苦境を乗り越えて発展し、今や世界中のオールドモーター愛好家から支持されている。
ひと口にホットロッドと言っても黎明期から時を経るごとに多様化し、どの時代をイメージするかによってスタイルは様々。ここで紹介する『オイリーボーイズカークラブ』は、トラディショナルホットロッドをリスペクトする仲間たちで結成されたカークラブだ。現在のメンバーは全5人で、その全てが’40〜’50年代の時代感をイメージしたホットロッドに乗っている。さらに全てナンバー付きで、ストリートから草レースまで当時のスポーツカーの乗り味を楽しんでいるというわけだ。
「カークラブと言ってもみんなオヤジなんで、ややこしい縛りもないし誰が上も下もない。肩肘張らず趣味として楽しむクラブです。街乗りできるクルマで草レースに参加する、当時のホットロッダーの遊びを追いかけている感じですかね」
そう語るのは、全車両の整備やモディファイを手がける横浜のホットロッドショップJモータースの瀬法司氏。20年前の日本であればフラットヘッドで走る車両自体がほぼ皆無に近い状態だったと聞くが、大洗で行われたサンビーチサンドフラッツなど、最近はホットロッドやヴィンテージバイクの草レースが各地で行われているため、当時の走りを体感できるホビーとしてホットロッドに乗る人が増えているのだ。
レースの勝敗だけを重要視するのではなく、時代感やスタイルにこだわり本質である走りを堪能する。旧きよきアメリカのモーター文化を愛する大人たちのライフスタイルは実に豊かだ。
唯一のルールであるトラディショナルスタイル&モディファイにこだわったホットロッド。
1931 Ford Model A Roadster/Nuts Art Works
レイトモデルAのクラシカルなフォルムを活かし、本来のポテンシャルを引き出すことをコンセプトとした1台。4バンガーエンジンはマイルドなホップアップが施され、日常的な街乗りでもストレスなく走り、そのままの姿で草レースも楽しめるマシンに仕上げられている。
1929 Ford Model A Roadster/Akira Ohata
Roof 101Cyclone Four portヘッドによってOHVコンバージョンされたスペシャルエンジンを搭載するロードスター。オーナーの大畠氏は街乗りだけでなく全国の草レースに参戦し、今回のサンビーチサンドフラッツでは4バンガークラスの初代チャンピオンに輝いた。
1929 Ford Model A Roadster/Takaharu Yamazaki
アルミのシートメタルからカスタムメイドしたフードが特徴的なロードスター、約50年前にアメリカで当時のオーナーが完成させたスタイルを極力活かし、J-MOTORSによって各部のモディファイが施されている。シーンの先人へのリスペクトを内包するホットロッドだ。
1927 Ford Model T Roadster Pick up/Hideaki Takahashi
Nuts Art Worksのアシスタントである高橋氏が運転する車両はモデルAのシャシーにモデルTのボディを搭載。エンジン/ミッションはオリジナルで、シボレーの19インチワイヤーホイールを加工して装着。ボディやスプラッシュのレタリングはNuts Art Worksの仕事。
(出典/「CLUTCH2023年6月号 Vol.91」)
Photo and Text by Yuta Kinpara 金原悠太