「ポータークラシック」会長・吉田克幸氏が選ぶ、想像力を掻き立てるための本9選。

  • 2022.05.10  2020.05.01

読書は人の価値観の形成に大きな影響を与える。本に出てくる言葉や写真が、人生を大きく変えることだってある。日々読書を重ねている人は、考え方もスタイルもカッコいい。

今回選書をお願いしたのは、今まで数々の名作プロダクツを世に輩出し、まだ歴史が浅く、先人のいなかった日本のファッションシーンで道なき道を切り開いてきた「ポータークラシックhttps://porterclassic.com/」会長・田氏。氏が多くの影響を受けたものがフランスのパリと世界各国の民俗学。紹介してくれた本は、そのふたつが基軸となっている。

蔵書に囲まれた空間での想像の旅がモノ作りの根源。

日本の民芸を熟知する田氏らしい発想から生まれたフレンチJKT。 アイコンである「PC KENDO」と「PC SAS HIKO」の生地をパッチワークし特別加工している。¥270,000_

70歳を超え、今なおも「PORTER CLASSIC」のディレクションで手腕を振るう田氏。東京の神田に生まれ、円が固定相場だった’60年代からパリやニューヨークに渡り、世界中を旅してきたホーボーである。1981年には日本人で初めてニューヨークデザイナーズコレクティブに選出されるなど、いち早く世界に認められた日本人クリエーターのひとりだ。

誰よりも世界を見てきてからこそ、日本の伝統的な刺し子や古生地、剣道着の魅力に気付き、それらを「PORTER CLASSIC」のアイコンとして再構築している。そのクリエーションの源は、自身が多くの時間を過ごす自宅の書斎だと語る。

「自宅には書斎があって、自分でも把握できないくらいの数の蔵書に囲まれて過ごしています。そこで1850年頃からの100年間の歴史を調べることを自身のライフワークとしているんです。この100年はまさに激動の時代。世界中で様々なことが起こりました。

英国の産業革命を機に世界中でモノ作りが進化し、大きな戦争が2回ありました。日本は江戸から明治へ変わり、人々のライフスタイルは劇的に変化しました。その流れを知るためには、本が必要不可欠で、今まで買い集めてきた資料を見ながら、この時代にホーボーがいたら、どんな旅をしていただろうっていう想像をするわけです。その中からモノ作りのヒントを得ることが多く、自分の創作の源になっています。

超長綿「スヴィンゴールド」を使用したオリジナル生地「PC KEN DO」のチャイナジャケット。異なる文化を絶妙にミックスするのも得意とするところ。 ¥151,200_

あとは民俗学ですね。世界中に興味深いものがありますし、日本だけでも各地域に根付いた文化がたくさんあります。うちが大きな影響を受けた刺し子もそのひとつですよね。いつか日本各地にある誰も知らないような資料館を回るのが自分の夢。あとお気に入りの本は、一年に一度は必ず読み返していますね。そうすることで必ず新しい発見がある。これは是非とも皆様にもお試し頂きたいこと。

こちらは靴メーカーnakamuraと製作したブーツ。アッパーには庄内刺し子をモチーフに5年を掛けて開発した「PC SASHIKO」ファブリックを使用。 ¥64,800_

実は最近、ものすごく嬉しいことがあったんです。一緒にPORTER CLASSICをやっている息子の玲雄が、寝具メーカーの昭和西川さんと新しいカバンを作ったんです。ショルダーストラップに昭和西川さんの体重圧を分散する敷布団の「muatsu」を使っているから、本をたっぷり入れても肩が痛くならないし、軽く感じる。これは小さな子どもから大人まで多くの人が喜びますよ。

PORTER CLASSICと寝具メーカー昭和西川が共同開発した「ニュートン」。ストラップに体重圧を分散する敷布団「muatsu」を使っており、沢山の本を持ち運ぶ際も軽く感じる。¥40,000_

こういった多くの人を幸せにできるプロダクトを自分の知らないところで、身内が作ったことが本当に嬉しくてね。このカバンみたいに流行ではなく、人から人へ受け継がれていくようなものを作りたいと今も昔もずっと思っています」

創作の源となる創造力を掻き立てるための本9選。

1.マフィア帝国ハバナの夜/T.J.イングリッシュ著 伊藤孝訳/さくら舎

1940年代後半からキューバで暗躍したルチアーノ・ランスキーをはじめとするマフィアにフォーカスも当てたノンフィクション。「歴史を調べていくとマフィアの影を感じることが多々あります」

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2.老いの荷風/川本三郎著/白水社

永井荷風の評論における第一人者、川本三郎氏の著書。第二次大戦前後、世相の混乱期に直面した60~70代を検証しながら、新たな荷風像に迫る。「晩年期の荷風を非常にわかりやすく解説しています」

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3.ムッシュ・クラタ/山崎豊子著/新潮社

新聞社のパリ特派員を勤め、フランス文化をこよなく愛した日本人が主人公の作品。「作者の山崎さんが、実在し
た日本人の新聞記者をベースにした中編作品。こんなおもしろい人がいたのかと感心します」

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4.陸羽茶室歴史回眸/文学ミュージアム編集・発行

香港の飲茶における、最古で最高級店として知られる陸羽茶室。1933年に創業された老舗の歴史がわかる内容。「香港で一番好きなレストラン。イギリスの植民地時代の名残を感じる空間も素晴らしい。ここの制服がものすごくかっこいい」

5.荷風散人傳/小門勝二著/圭文社

航空機のない時代にアメリカやフランスに渡り、帰国後は小説家や文学者として活躍した永井荷風。氏と生前に親交のあった小門勝二による短編集。「今のように情報がない日本人がパリでどのように過ごしていたかがわかる」

6.荷風散人傳/小門勝二著/圭文社

こちらも同じく小門勝二による短編集で、シリーズ化されていた。「’ 60~’70年代にかけて世界中を周りましたが、パリという街も昔も今も大好きです。この街の他文化を受け入れる姿勢が好きで、荷風の逸話にもそれを感じます」

7.OLD SHOES/Ernest Bordoli著

昔の靴の歴史を追ったもので、なんと写真が1枚ずつ貼られた貴重な資料。こちらは価格応談で販売を予定。「おそらく博物館などで蔵書されていた資料なのだと思います。数百年も前の靴が載っていて、見るだけで刺激になりますよ」

8.HOKUSAI AND JAPONISME/北斎とジャポニズム公式図録

上野公園にある国立西洋美術館で今年の1月まで行われていた「北斎とジャポニズム」でリリースされたアートブック。「この視点が素晴らしいエキシビションでした。北斎がヨーロッパのアーティストへ大きな影響を与えたかがわかる内容ですね」

9.炎の人 式場隆三郎/文学ミュージアム編集・発行

精神科医として活躍しながら、芸術家もサポートや民芸運動も積極的に行っていた式場隆三郎。これは氏をテーマにした市川市文学ミュージアムのエキシビションで販売されたもの。「ゴッホ研究科としても有名な方で、その功績がわかる内容です」

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
※古書店でしか手に入らない貴重な書籍もあります。

【DATA】
Porter Classic Ginza
Tel.03-3571-0099
https://porterclassic.com

(出典/「CLUTCH Magazine Vol.60」)

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