アメリカを超越して日本が辿り着いた“ジャパントラッドデニム”の現在地

  • 2024.06.11

「宇宙一美しいデニム」。星の数ほどのデニムを見てきたであろうファッション ライフスタイル コンサルタント・大坪洋介氏が「コールマイン ギャランティード」のデニムを指してこう言った。「サンタセッ」のデザイナー・大貫達正氏と手掛ける同ブランドの作品に秘められた、美しさの秘密をふたりで語り合ってもらった。

日本が積み重ねてきた「匠」の技を継承する

日本デニム界の両雄がタッグを組んで始動した「コールマイン ギャランティード」(以下、コールマイン)。「日本でしか作れない世界最高のデニムを作った」と語るふたりも、かつてはアメリカに夢中だったはず。なぜいま「日本製」にこだわるのか。

「COALMINE GUARANTEED」|炭鉱期の1800年代後半から、ファッションが多様化する70年代まで。各年代のデニムをもとにした、6型のパンツを展開

大貫 確かに始まりはアメリカ製で、小学校3年生のころに[501]を買ったのがきっかけでしたね。

「サンタセッ」デザイナー・大貫達正さん|自身のブランド「ウエストオーバーオールズ」をはじめ、様々なブランドにフリーデザイナーとして関わる。今回は、予約制・住所非公開の「サンタセッ ムニ」が舞台

大坪 僕は60年代、中学生のころ。ジーンズ店のお兄さんお姉さんがかっこよくて通い始めて、色々教えてもらうなかで[501]を知った。というか、まだ日本製っていう概念がなかったよね?

ファッション ライフスタイル コンサルタント・大坪洋介さん|1970年代に渡米。29年にわたり、ロサンジェルスを拠点に服飾全般の業務において活躍。「リーバイス」のアジア統括を務めていた経験もある、デニム界の生き字引

大貫 なかったですね。むしろアメリカ製しかなかった。でも、ちょうどこのころ、60年代から80年代ごろにかけて、日本でも「いいデニムを作ろう」っていう考え方が生まれ始めてましたよね。

大坪 90年代に入ると、空前のヴィンテージブームで。そのころから旧きよきアメリカのジーンズを再現しようと試みる日本のブランドが出てきた。どのブランドも、ものすごい研究熱心でしたよ。

大貫 それでも僕にはアメリカ古着が一番だったので、日本の新品はあまり通らなかったんです。ただ、60年代ごろから徐々に高まっていった日本のものづくりに対する意識とか、90年代に爆発したヴィンテージ研究へのこだわりとか、それに伴う生産背景の進化とか。そうやって積み重ねられてきたものが、日本のものづくりの文化なんですよ。

大坪 「コールマイン」は、ただ消費されるためのデニムではなくて、そういう日本の「匠」としての文化を継承していくための伝統工芸品になっていかなくてはいけない。

大貫 むしろ普通のものを作ろうと思ったら、工賃も縫製も高いし、いま日本はどこの国にも勝てません。日本でものづくりをする意味は、その「匠」だけにある、と言っても過言ではない。僕らもヴィンテージは好きだけど、それを「再現しよう」という気はなくて、いまや「匠」になった日本の文化を継承していくために始めました。

ジャケットも展開。フロントプリーツのステッチが上から下まで繋がっており、糸がどのように縫われているか、その手順が分かる。デザインであり、文化継承の一貫

「匠」としての日本製であり、それ以外に意味はない

大坪 「芸術」と「匠」の間と言えば伝わるでしょうか。作家さんが作る器みたいな感覚で作っているというか。

大貫 でもヴィンテージのいいディテールは取り入れたいと思っているので、デニムがもっとも美しかったころと同じ背景で作っています。デニムが良質な時代を、1900年代初頭から1970年代までと捉えているんですが、その期間「リーバイス」が持っていたものと同じ鉄製ミシンを、15台使って縫っています。

製作に使用している鉄製のオールドミシン
15台の鉄製オールドミシンを有する鴨川陽介氏の工場は岡山県にある。人里離れた何もない場所に佇む一軒家。この場所で「コールマイン」は作られている

大坪 しかもそのミシンを使う職人がこれまたすごい人なんだよね。

大貫 そうですね。ものづくりに携わる人なら、知っている人は知っている鴨川陽介という職人で、「コールマイン」は、裁断、縫製、リベット打ち、彼がひとりで手掛けていています。とにかく彼のステッチワークは見惚れるほど美しい。「コールマイン」が求めるクオリティは、彼の力なくしてはあり得ませんでした。超頑固だけど(笑)。

大坪 大貫さんもすごい気を使ってるよね(笑)

鴨川陽介氏が鉄製のオールドミシンを使って縫い上げるステッチ。大貫氏は「彼がステッチを入れると、1ピッチも狂わず、ただの縫製が芸術になる」と評する

大貫 とにかく僕らは、「ヴィンテージデニムを超える」ということをやっていかなきゃいけない。越えられないこともあるけど、ヴィンテージを完全に理解して、設備を最高の状態に整えて、それを美しいデザインやディテールで昇華させるってことをやってるから、いままでなかったものにはなってると思います。

大坪 「文化継承」というこれ以上ない美しい価値観で作っています。こんなこと、日本じゃないとできないよね。

パンツ全6型のうち、炭鉱期の1800年代後半から1920年代までのデニムパンツをイメージして作った1本。サイドシームがなく、超長綿で作られたデニム生地が描き出すシルエットがなんとも美しい

(出典/「2nd 2024年6月号 Vol.205」)

LiLiCo

昭和45年女

人生を自分から楽しくするプロフェッショナル

LiLiCo

松島親方

CLUTCH Magazine, Lightning, 2nd(セカンド)

買い物番長

松島親方

モヒカン小川

Lightning, CLUTCH Magazine

革ジャンの伝道師

モヒカン小川

ランボルギーニ三浦

Lightning, CLUTCH Magazine

ヴィンテージ古着の目利き

ランボルギーニ三浦

ラーメン小池

Lightning

アメリカンカルチャー仕事人

ラーメン小池

上田カズキ

2nd(セカンド)

アメリカントラッド命

上田カズキ

パピー高野

2nd(セカンド)

断然革靴派

パピー高野

村上タクタ

ThunderVolt

おせっかいデジタル案内人

村上タクタ

竹部吉晃

昭和40年男, 昭和45年女

ビートルデイズな編集長

竹部吉晃

清水茂樹

趣味の文具箱

編集長兼文具バカ

清水茂樹

中川原 勝也

Dig-it

民俗と地域文化の案内人

中川原 勝也

金丸公貴

昭和50年男

スタンダードな昭和49年男

金丸公貴

岡部隆志

英国在住ファッション特派員

岡部隆志

おすぎ村

2nd(セカンド), Lightning, CLUTCH Magazine

ブランドディレクター

おすぎ村

2nd 編集部

2nd(セカンド)

休日服を楽しむためのマガジン

2nd 編集部

CLUTCH Magazine 編集部

CLUTCH Magazine

世界基準のカルチャーマガジン

CLUTCH Magazine 編集部

趣味の文具箱 編集部

趣味の文具箱

文房具の魅力を伝える季刊誌

趣味の文具箱 編集部

タンデムスタイル編集部

Dig-it

初心者にも優しいバイクの指南書

タンデムスタイル編集部

CLUB HARLEY 編集部

Dig-it, CLUB HARLEY

ハーレー好きのためのマガジン

CLUB HARLEY 編集部

昭和40年男 編集部

昭和40年男

1965年生まれの男たちのバイブル

昭和40年男 編集部

昭和45年女 編集部

昭和45年女

“昭和カルチャー”偏愛雑誌女子版

昭和45年女 編集部

昭和50年男 編集部

昭和50年男

昭和50年生まれの男性向け年齢限定マガジン

昭和50年男 編集部