世界最高のデニム生地を探して。オーベルジュが辿り着いた「最高の生地」の答え

綿100%で最高の穿き心地。これをデニムで目指す場合、原綿は何を選べばいいのか。オーベルジュの小林さんは、かつてパリで穿いていた極上の1本を再現するべく、様々な試行錯誤を経てカリビアンシーアイランドコットンに辿り着いた。

始まりは50年代製のリーバイス[501]だった

「オーベルジュ」デザイナー・小林学さん|文化服装学院で服飾の基礎を学んだ後の3年間、フランスに渡ってパリとニースで古着と骨董、最新モードを浴びる。オーベルジュは、2018年に始動させた

オーベルジュの小林さんは、かつて文化服装学院を卒業後の1988年、21歳でフランスへ遊学している。現地で最初に手に入れたヴィンテージがリーバイス[501]だった。

「渡仏してすぐにパリで知り合ったかっこいい連中が〝アメリカ好きなフランス人〟ばっかりで。彼らがアメリカのヴィンテージを上手に着こなしていたんです。そこから自分も買いまくり、着まくるようになりました。そうした生活の起点になったのが、現地で初めて手に入れた1951年製の[501XX]です。

これをパリで穿いていた当時から、大戦直後のXXは肌触りがしなやかでとても柔らかいと感じていました。その思いはいまでも変わっていなくて、〝この時代のXXこそが歴代のデニムのなかでも最高に穿き心地がいい〟というのが周囲のヴィンテージ好きの間でも定説になっています」

渡仏した1988年にパリのクリニャンクールにて小林さんが70フラン(当時の為替レートで1400円)で購入し、穿き続けてきた1951年製XXの実物

オーベルジュが辿り着いた「最高の生地」の答え

フレンチを軸とした欧州、そしてアメリカ。世界の旧きよきヴィンテージに触発されて、その生地や型紙、縫製、付属品に見られる贅沢・偶然・計算・粗野といった愛すべき要素を独自解釈した後、いま着られるワードローブとして再定義する。それが、オーベルジュの服創りである。

日本の服飾業界を代表する最強粋狂人・小林学さんは、自身の内部でたぎる理想と情熱のおもむくままに、2年前から「シーアイランドコットンデニムプロジェクト」に挑んできた。それは、小林さんがパリで手に入れて寵愛してきた1951年製[501XX]の柔らかい穿き心地を自身のブランドにおいて再現するための挑戦だ。

「シーアイランドコットンの特長は、繊維が長くて、細くて、強いこと。いわゆる超長綿のなかでもシーアイランドコットンのスペックこそ最強と言えるのではないでしょうか。このスペックがあれば、あの穿き心地に並び、超えていくことも可能なのではないかと考えました。

現在、この綿の産地はアメリカとジャマイカの2カ国です。シーアイランドコットンの原種が超長綿に進化したのは、ジャマイカ島を含む西インド諸島でした。すなわち、カリブ海域こそがシーアイランドコットンにとって母なる海なのです。それどころか、地球上に現存するすべての超長綿の源流がシーアイランドコットンだとされています。だから、今回のプロジェクトにおいては、母なるカリビアンシーアイランドコットンを使うことに、全力でこだわりました」

ワークウエアとしての頑強さが求められるデニム生地には、当然ながら太番手の糸が使われる。それに対し、シーアイランドコットンは、その特長からシャツやカットソーなどに使われる細番手の糸が重用されてきた。

「だから、シーアイランドコットンの既製の糸にはデニムに使えるような太い番手のものが存在していないのです。そのため、糸をオリジナルで紡ぎ出すところからスタートするしかなかった。今回のプロジェクトは、日本におけるシーアイランドコットンの原綿輸入から糸の生産・販売までを手がけているシーアイランドクラブとの共創なくして成立しませんでした。

また、岡山にてデニムを主軸に様々なテキスタイルの開発を行っているワン・エニーとの共創があって初めて、カリビアンシーアイランドコットンを使った前代未聞なデニム生地を生み出すことが可能になりました。1951年当時のXXのネップ感を再現するためにカリビアンシーアイランドコットンの落ち綿も混ぜ込むなど、柔らかさと粗野感のリアリティを追求して、『これは突き抜けたな!』と胸を張れる仕上がりになりました」

セットアップで着用してみると、極上の柔らかさに身体が覆われる

バンドカラーシャツ2万3100円/ア ボンタージ(ブリックレイヤーTEL03-5734-1098)、シューズ9万6800円/パラブーツ(パラブーツ青山店TEL03-5766-6688)、メガネ5万9400円/アイヴァン 7285(アイヴァン 7285 トウキョウTEL03-3409-7285)、スカーフ1万2100円/ヴィンセンツォ ミオッツァ(真下商事TEL03-6412-7081)

CARIB WW

今回のプロジェクトでは1stタイプのGジャンも製作。フランス人がよく行うセルフカスタムに倣い、左身頃内側にデッドストックのリネン生地を使ったスレーキを配す。13万2000円(スロウガンTEL03-3770-5931)

ヴィンテージの1stや2ndと同様に生機の状態で縫製。そのため、洗うと生地が縮み、織り目が縦横で交差する胸部にはギャザーが現れる。この風格も持ち味!

CARIB XX

4つの糸番手を駆使した綿糸による飾りステッチ、鉄製のタックボタン、銅無垢製のリベットは、鈍く燻された質感へと変化する。型紙の妙でシルエットは現代的に洗練。8万4700円(スロウガンTEL03-3770-5931)

生機から半年ほど小林さんが穿き込んだサンプルがこちら。股の周囲には美しいヒゲが現れ始めている。染色のこだわりが効いて、エイジングまで万全な1本に!

※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。

(出典/「2nd 2024年6月号 Vol.205」)

この記事を書いた人
2nd 編集部
この記事を書いた人

2nd 編集部

休日服を楽しむためのマガジン

もっと休日服を楽しみたい! そんなコンセプトをもとに身近でリアルなオトナのファッションを提案しています。トラッド、アイビー、アメカジ、ミリタリー、古着にアウトドア、カジュアルスタイルの楽しみ方をウンチクたっぷりにお届けします。
SHARE:

Pick Up おすすめ記事

革とデニムの境界線を越える! デニムのように見えるけど実はコレ、革なんです。

  • 2026.07.02

前号でもお伝えしたが、天神ワークスの開発していた新しい革「リジットレザー」が完成し、この度、遂にレザージャケットとなって登場した。まずはこの写真を見てほしい。これは、天神ワークス代表の髙木さんが1カ月着込んだもの。このエイジング、まさにデニムじゃね? でも、レザーらしいエイジングも見え隠れする、唯一...

王道のデニムセットアップはボトムスで差をつけろ!

  • 2026.06.30

昨今のアメカジブームのなかで、注目度が高まっている“デニムオンデニム”のセットアップスタイル。王道ももちろん良いが、一歩先を行きたいアメカジラバーはボトムスで差を付けてみるのはいかがだろうか。気鋭のブランド「アンバースレッズ」が展開するデニムセットアップはそんな望みを叶えてくれるに違いない。 Amb...

初夏は、泥と大戦で。「STUDIO D’ARTISAN」2026SSの新作を紹介!

  • 2026.07.03

選ぶのは「泥染の開襟シャツ」か、「大戦モデル」か──。この初夏、気になるのは対照的な表情を持つ二つの新作だ。そのどちらにもステュディオ・ダ・ルチザンならではの、丁寧な作りと遊び心が息づいている。 奄美大島の伝統技法が生む、泥染ならではの深い表情に注目 奄美大島に古くから伝わる泥染は、テーチ木(シャリ...

夏の余白に、存在感を。大人メンズの夏スタイルに個性と奥行きを添えてくれるアイテムを紹介!

  • 2026.06.30

シンプルな装いだからこそ、アクセサリーや小物が着こなしの印象を大きく左右する夏。そんな季節にチャコールグリーンが提案するのは、物語とクラフトマンシップを宿した逸品たち。夏のスタイルに個性と奥行きを添えてくれるアイテムを紹介する。 手仕事が生む、本物の存在感 2002年に誕生したアティースは、「REL...

「ファーストアローズ」創業30周年記念! 「JELADO」「RE-BUILT」とのコラボによる銀で彩った、贅沢なデニム。

  • 2026.06.29

日本屈指のシルバーアクセサリーブランド「ファーストアローズ」が創業30周年を記念して、これまでの集大成かつファンへの感謝の気持ちを込めて、「JELADO」と「RE-BUILT」とコラボしたスペシャルなデニムを制作。限定100本。節目の年に相応しいこだわりに満ちたデニムの詳細を大解剖! First A...

Pick Up おすすめ記事

夏の余白に、存在感を。大人メンズの夏スタイルに個性と奥行きを添えてくれるアイテムを紹介!

  • 2026.06.30

シンプルな装いだからこそ、アクセサリーや小物が着こなしの印象を大きく左右する夏。そんな季節にチャコールグリーンが提案するのは、物語とクラフトマンシップを宿した逸品たち。夏のスタイルに個性と奥行きを添えてくれるアイテムを紹介する。 手仕事が生む、本物の存在感 2002年に誕生したアティースは、「REL...

上品に纏うちょうどいい季節。大人の夏にちょうどいい「ORGUEIL」のシャツ

  • 2026.06.30

気温の上昇とともに、装いは軽く簡素になる。だからこそ求めたいのは、肩肘張らない大人の品格だ。クラシックをモダンに再構築したORGUEILのシャツが、大人の夏にちょうどいい存在感を放ってくれるはずだ。 Shawl Collar Denim Work Shirt 1930 年代に現存したアメリカンワーク...

初夏は、泥と大戦で。「STUDIO D’ARTISAN」2026SSの新作を紹介!

  • 2026.07.03

選ぶのは「泥染の開襟シャツ」か、「大戦モデル」か──。この初夏、気になるのは対照的な表情を持つ二つの新作だ。そのどちらにもステュディオ・ダ・ルチザンならではの、丁寧な作りと遊び心が息づいている。 奄美大島の伝統技法が生む、泥染ならではの深い表情に注目 奄美大島に古くから伝わる泥染は、テーチ木(シャリ...

時とエイジングを刻む。VAGUE WATCH&Co. × CONSIGLIERE THE 1ST SPECIAL WATCH

  • 2026.07.02

時計は時間を刻むもの。本来の目的はそれで十分だが、「エイジングするものに囲まれて暮らしたい」という自称革ジャンの伝道師・モヒカン小川はベルトにもこだわる。そんな彼が愛用するヴァーグウォッチとシルバージュエリーブランド「コンシリエーレ」のコラボウォッチには毎日身につけた分のエイジングが刻まれている。 ...

【連載】ビートルズのことを考えない日は一日もなかった

  • 2024.02.05

80年代、私的ビートルズ物語。 ビートルズ研究と収集に勤しむビートルデイズを始めて早44年(Since1980)。 なにをするにもビートルズが基準だった『昭和40年男』編集長のビートルズ史を、 当時の出来事とともに振り返ります。