1.ブレスト
シングルブレストは貴族の執務服が、ダブルブレストは軍士官の制服が起源とされる。
シングル
フロントボタンを縦一列に留めるデザイン。ボタン数に正式な決まりはなく、国や時代によって傾向が分かれる。
2つボタン
アンボタンマナー(上のボタンのみ留める)で着用するのをお忘れなく!
3つボタン
アメトラジャケットの基本ディテールとされるのは、段返りの3つボタン。
ダブル
屋外で着用する際に風の吹き込む方向によって左右の合わせを変えられるように仕立てた軍士官の制服から発展。
4つボタン
威風がありつつ、すっきりと着られるのが4つボタン1つがけのダブル。
6つボタン
英国海軍の制服は8つボタンだったりする。ボタンが多いほど貫禄も上昇。
2.ポケット
その作りやデザインよって様々なタイプがあるが、ジャケットに使われる代表例を集めた。
【チェスト】ウエルトポケット
ウエルトとは縁飾りのこと。スリット(切り込み)ポケットの上部に飾りの布が施されたデザイン。
【チェスト】バルカポケット
ポケット口が箱型ではなくカーブ形状。視覚的には、胸の厚みをきれいに見せる効果がある。
【サイド】チェンジポケット
チェンジ(小銭)を入れるための小さいポケット。着丈の長い英国仕様のジャケットと相性良し。
【サイド】スラントポケット
スラントは、「斜め」「傾斜」という意味。その言葉のとおり、斜めに付けられたポケット。
【サイド】フラップポケット
ポケットの上部にフラップ(雨蓋)が付く。フォーマルな席ではフラップはポケットにしまいたい。
【共通】パッチポケット
ジャケットにパッチ(継ぎ布)を当てるかのように縫い付けられたポケットは、カジュアルな印象。
3.ゴージライン
上襟と下襟が接ぎ合わさった部分の縫い目のライン。この位置の高さや角度が時代の気分・流行を反映する。
4.ノッチ
ノッチとは、「切り目」や「くぼみ」のこと。上襟と下襟の組み合わせから生まれるV字型の切り目を指す。
5.ラペル
日本においては上襟と下襟を包括してラペルと称しているが、本来はカラー(上襟)とラペル(下襟)は区別されるもの。
ノッチドラペル
最もポピュラーな襟型。ゴージラインが水平に近く、ノッチの角度が80度~90度ほどのものを指す。
ピークドラペル
下襟の先端が鋭角に尖った意匠で、ダブルブレストに多い。ピークは「山頂」「尖った先端」の意だ。
ショールカラー
上襟と下襟で切り替えず、肩掛け(ショール)のようにつながったデザイン。タキシードに見られる。
6.ショルダー
袖付けの仕様によって違いが生み出されるショルダーラインもジャケットの印象を大きく左右する要素のひとつだ。
ナチュラル
ナチュラルという言葉のとおり、肩から袖にかけてのラインが誇張されていなくて自然なシルエットを描くデザイン。
ビルドアップ
芯地を入れた袖パーツを肩にかぶせて、高くビルドアップしたショルダーデザイン。構築的で男らしい印象を放つ。
7.背裏
ジャケットの背中の部分に付く裏地のこと。基本は背抜き仕様と総裏仕様の2種類。生地や着用する季節で使い分ける。
背抜き
肩や背中の上部を除いて裏地が省かれている仕様。裏地がない分だけ通気性がアップするので、春夏仕様の生地とともに採用されることが多い。
総裏
背中のみならず全面的に裏地が付く。秋冬の生地は総裏が基本で、ジャケットの耐久性と保温性が増す。色や柄にこだわればビスポーク玄人だ。
台裏仕様
ジャケットの表地が見返し(裏側)につながり、さらには内ポケットの周りにまで伸びた仕様。内ポケットを補強すると同時に、美しく見せる。
8.ベント
ベントとはラテン語で「裂け目」の意。英国人が乗馬の際に便利なようにハンティングジャケットの裾を割ったのが起源。
センターベント
背中の中央の縫い目に沿って裾の部分が開いているベント。サイドベントよりもポピュラーである。
フックベント
センターベントの上部がフックのように折れ曲がったデザイン。アイビー調のジャケットに多い。
サイドベンツ
裾の両サイドを割ったベント。複数形のためベンツと表記。英国のジャケットに多く見られる意匠。
9.フロントダーツ
人の胸から腰のシルエットに自然に沿うようにパターンワークの工夫のひとつとしてジャケット前部に入る。
10.袖ボタン
袖にあしらわれるボタンおよびボタンホールにも作り手や持ち主のこだわりが表れる。
ボタンの数
ボタンの数に決まりはない。既製品ではブランドの、ビスポークでは注文する人間の美学で決まる。
開き見せ
ボタンホールがダミーのため、実際には袖口を開くことができない。安価なジャケットに多い仕様。
本切羽
ボタンに対応するボタンホールがダミーではなく実際に空いていて、袖口を開くことが可能な仕様。
重ねボタン
ボタン同士がキスしているように見えることからキッシングボタンとも。元来はビスポークの意匠。
※情報は取材当時のものです。現在取り扱っていない場合があります。
(出典/「2nd 2024年5月号 Vol.204」)
Photo/Yuco Nakamura, Yoshika Amino Text/Kiyoto Kuniryo, 2nd Magazine
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