メガネ選びの基本はトラディショナル。
メガネ選びの基本は、トラディショナルであること。アメリカ東海岸の有名エリート校の学生たち(アイビーリーガー)が愛用したことから、その地にちなんだ名称が付いた「ボストン」や、角張った存在感ある肉厚フレームで英国ジェントルマンたちに人気のあった「ウェリントン」など、フレームデザインや使用される素材の大枠は1950年代頃から変わっておらず。そんなクラシカルフレームが近年再びメガネトレンドの中心となっている。
達人が解説! いまどきメガネは”ライト気分”がポイント。
メガネの流行は時代とともに大きく変遷してきた。2000年代の太セルの流行から、徐々に素材感が軽くなり、いまはメタルフレームや細セルのメガネが人気なのだとか。そんなイマドキメガネの選択肢を、メガネ専門のセレクトショップ「G.B.ガファス」の漆畑さんに教わった。
漆畑さんがいま掛けるべきメガネの型として注目するのは、金属製のフレームで作られたメタル(上)、セルフレームを細く仕上げた細セル(中)、フチなしのリムレス(下)の3タイプ。
「繊細な”メタル”フレームを掛ければ、上品な印象になりますよ」
「メガネの流行は、景気と連動して変化するんです」と語る漆畑さんが掛けているのは、繊細な雰囲気と品の良さが特徴のメタルフレーム。
「セルフレームが流行した2000年代後半、日本は不景気の真っただ中で、低コストで量産可能なプラスチック枠が流行しました。近年は徐々に景気も回復してきているようで、メタルフレームの需要が増加していますね」
漆畑さんが着用しているのは、トリップの[ツータック]。「時間を遡ってアイウエアを探求する旅」をコンセプトとするブランド、トリップが生み出したラウンドタイプのメタルフレーム。近年リバイバルを果たしたタック入りパンツにちなみ、ブリッジに入る二本のラインが個性的だ。2万円+税
「カジュアルさは”細セル”で演出しましょう」
「メタルフレームよりも、もっとカジュアルにメガネを楽しみたい、という方にはセルフレームの中でも透け感のあるものや、フレームが比較的細めの、太セルならぬ“細セル” がおすすめです。派手すぎない適度な主張が、コーディネイトにも落とし込みやすく、トラッドスタイルとも相性ばっちり。フォーマルな装いのハズしにも使えて便利ですよ」
創業以来、数々の名作ウェリントンを生んできた英国ブランドのカトラー アンド グロス。ベーシックなべっ甲フレームで飽きのこないデザインが魅力だ。スーツと合わせれば遊び心のあるオトナの雰囲気にもしっくり。3万8000円+税
「一歩先をいくなら、フチなしがおすすめです」
最後に漆畑さんが教えてくれたのは、”ライト気分”なメガネの究極形とも言えるフチなしのメガネ。
「クラシカルな雰囲気でありながらも、現在は着用している人がそこまで多くないため、”個性を出したい”、”流行を先取りしたい”という人には、ぜひチェックして欲しいですね。トレンドの流れとして、今後フチなしメガネの時代が来てもおかしくはないですね」
“上質の様式美” をコンセプトに掲げ、海外でも高い評価を得ている国産ブランドのイエローズプラス。レンズ上部の裏側に沿うよう配されたリムが、より知的でアダルトな印象を与える。3万4000円+税
取材協力/G.B.ガファス https://gbgafas-co.jp/
参考にしよう! ファッションアイコンが愛した基本の6タイプ。
それぞれの時代を彩ってきたファッションアイコンには、象徴的なメガネをかけている人物がとても多い。それほどにメンズファッションの限られた手数の中で、メガネというアクセントは重要なのである。ファッションアイコンが愛した基本の6タイプこそ、まさにメガネでおしゃれするための最短ルートである。
1.BOSTON[ボストン]
逆おむすび型を基本とした縦長の丸みのあるフォルム。テンプルがやや下がった位置から出てくるのが特徴で上辺のラウンド感が柔らかな印象を与えるシェイプだ。
ヨーロッパでは“パントゥ” と呼ばれており、「ボストン」の由来は定かではないが、一説には、ハーバードやマサチューセッツ工科大があるアメリカ・ボストン市で流行したからとも言われている。所謂、アイビーリーガーが愛用していた印象が強いアメリカントラッドの絶対的定番と言って間違いないだろう。
ボストン型を代表するモデルといえばオリバーピープルズ[505]。1987年の1st コレクションより登場したブランドの大定番であり、ボストン型の代表的モデル。べっ甲柄フレームとメタルブリッジがクラシカル。
グレゴリー・ペックが映画『アラバマ物語』で弁護士役を演じる際にべっ甲柄のボストン型メガネを着用していた。メガネの知的なイメージとシアサッカー素材のスリーピースを合わせた装いが正統派サマートラッドのお手本となった。
2.WELLINGTON[ウェリントン]
シルエットはスクエアシェイプを基本として、上辺より下辺が短い逆台形。テンプルは最上部から出ているのが一般的であり、凛々しさや知性といった印象を与える他に、肉厚なプラスチック素材を使用するモデルが多いことから力強さを感じさせるシェイプとしても心得ておきたい。
そのため、固いスーツスタイルには抜群の相性をみせる。もちろんカジュアルスタイルにおいても清潔感を演出したい場合にひと役買ってくれる。レイバンを筆頭とするサングラスでも定番の型だ。
英国アイウエアを代表する老舗ブランド、オリバー ゴールドスミスの[CONSUL-s]はまさにウェリントンを代表する傑作。8mm厚の重厚なプラスチックフレームながら極めて顔馴染みがよく、スタイリッシュな印象を与える名フォルムだ。
英国を代表する名俳優マイケル・ケインが映画『国際諜報局』で着用していたモデルがオリバーゴールドスミスのウェリントン型[CONSUL-s]。プライベートでもこのモデルを愛用していたと言われている。
サングラスの代表的モデルといえばレイバン[ウェイファーラー]
サングラスといえばレイバンの[ウェイファーラー]。これこそがウェリントン型のマスターピースと捉える愛好家も多いと思うが、残念ながらメガネとしての生産は休止の予定。今後はぜひサングラスで楽しみたい。
3.BOSTON WELLINGTON[ボストンウェリントン]
近年分類された型で、ボストンとウェリントンの中間のようなシェイプであり、いまのトレンドの中心的存在だ。
レンズはスクエア気味でも丸みがあり柔らかさがある曖昧な型。ウェリントンは最上部からテンプルが出ているのに対してこの型はやや下がった位置から出てくるため、マイルドな印象になり、着ける人を選ばないところも人気の理由だろう。どんなカジュアルスタイルにもハマるが、生地が厚いものになるほどにクラシックな印象が強まる。
ウディ・アレンやジョニー・デップが愛用したジュリアス・タート・オプティカルの[AR]。1950年代初頭創業の米国アイウエアの名門だが長らくブランド自体休止しており、近年念願の復活を果たした
人気の火付け役となったのは紛れもなくジョニー・デップだが、トラディショナル愛好家にはウディ・アレンの影響の方が絶大。彼の変わることのないスタイルはこの型なしじゃ語れない
4.SIRMONT[サーモント]
フロント上部がプラスチック製で、ブリッジと下リムがメタル製のものをサーモント型と呼ぶ。また、ブリッジがプラスチックで繋がっているものをブロー型と分類することもある。
眉の辺りが強調されるスタイルは、知性や意志の強さを象徴する型として政界や金融業で活躍するエリートたちに好まれた。また日本ではDC ブランド全盛の1980年代半ば頃に多くの著名人が着用して人気を博した。
1986年登場とレイバンの中でも歴史が浅いながら、[ウェイファーラー]と人気を二分する代表的モデルといえば[CLUBMASTER]。米国のクラシックスタイルであるサーモント型の筆頭として君臨する
サーモント型のアイコンとしてあまりにも有名なマルコムX が愛用したのは米国3大オプティカルメーカーのひとつ、シューロン社製。意志の強さを感じさせる一本が彼には不可欠だった
5.ROUND[ラウンド]
その名の通り、正円もしくはそれに限りなく近い丸型をラウンドと呼ぶ。楕円はオーバル型に分類されるためここには属さない。別名ロイド眼鏡。アメリカの喜劇役者ハロルド・ロイドが掛けていたことに由来している。装いを綺麗にまとめすぎないためのハズシとして、もしくは最もクラシックな型をルーツに持つため時代やトレンドに左右されない確固たるスタイルというイメージも醸し出す。
ラウンドの代表的モデルといえば白山眼鏡店[Round]。1930年代のスタイルを想起させるプラスチック製の正円型は、明るい色味を選ぶことでポップでチャーミングなアクセントになる
知的さと滑稽さを併せ持った希有な型は才能あるアーティストが逆説的にあえて掛けることも。画家のデイビッド・ホックニーも真ん丸メガネで独自のトラディショナルスタイルを確立した
6.CROWN PANTO[クラウンパント]
主にフランスを中心としたヨーロッパヴィンテージによく見られるシェイプ。欧米では“パント” と呼ばれるボストン型やラウンド型をベースに、上部を角張らせた形が、王冠(クラウン)を被せたように見えることからこの名が付けられた。
一見、個性的ながらスタイリングの幅は広くアメリカントラッドやアイビースタイルとの相性は抜群。王道を少しハズした次なる一手として大推薦だ。
20世紀初頭からメガネの産地として知られるフランス南部のジュラ地方発祥のレスカ・ルネティエ。アーカイブを基に作られる肉厚のフレーム[PICA]は、クラウンパントの代表モデル
フランスで活躍した著名人に愛用者は多く、世界的な建築家であるル・コルビュジエもクラウンパントの美しい造形美に惚れ込んだひとり。彼はパリの老舗べっ甲屋と組んで、メガネブランドのレスカで同じタイプのメガネを作っていた
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