関連して、ワイヤレスイヤフォン、場合によっては予備としてモバイルバッテリーを持たなければならない。今時はマスクも必要だ。スマホを率先して使い始めた我々が、この問題を解決しなければ……ということで、いしたにまさき、矢崎飛鳥、村上タクタの3人のプロジェクトであるサンボル商会ではサコッシュを開発することにした。安っぽいものでなく、普段身に着けていられる上質なもの……ということで、革製にしたいと思った。
2Wayで使える『サンボル革サコッシュ(仮)』のアイデアを封筒で試作
しかし、サコッシュの開発は容易なことではない。
世の中にはサコッシュ的なものは山ほどあるし、なんなら100円ショップにだってある。そんな中で、我々が「便利」「どうしても欲しい」と思えるサコッシュを作らねばならない。邪魔にならなくて、フィットして、一石二鳥、三鳥な便利さが必要だ。さらに、スタイリッシュ、持っていてうれしくなるようなモノにしたい。
そう考えると、議論は何度も暗礁に乗り上げた。世の中にいっぱいあるようなサコッシュを作るんだったら、何も我々が作る必要はない……そういうことである。
そんな中、いろいろ試行錯誤していたいしたにさんが、封筒で試作したのがコレ。
「閉じた状態では、スマホ+αを入れられる。そして、開くとiPadが入る。入れる方向によって、入れるものを変える。入ってる向きが違うから間違えない」
というもの。Dリングをいくつか付けておいて、ストラップを付ける位置によってぶら下げる方向を変えることができるというわけだ。
システム手帳で有名な『アシュフォード』が名乗りを上げてくれた!
しかしながら、サンボル商会の我々が、自分で革製品を作れるわけではないから、ここはまた協力してくれるパートナーを探さねばならない。ヘリテージ(ThunderVoltを運営してる会社)の革製品に詳しい人に聞いてみたが、なかなかフィットする方は見つからなかった。
そこに手を挙げてくれたのが、アシュフォードの東京本社 商品課課長の向井善昭さんだ。ご存知のように、アシュフォードはシステム手帳の老舗。’90年代のシステム手帳ブームで大躍進し、今ではシステム手帳のみならず、さまざまな文具を販売している。
アシュフォード(ASHFORD)
https://www.ashford-style.com/
向井さんには、ヘリテージでは『趣味の文具箱』というメディアでいろいろお世話になっている。今回のミーティングの前に、我々のアイデアをヒアリングして、『0次試作』を作ってきてくれた。
「ミーティングの話を聞いてから作ってもらった方がいいのでは?」
と言ったのだが、
「なんかあった方が、話もしやすいでしょ」
と言って下さったのだ。
いきなり0次試作で驚異の完成度!
そこで、出来上がってきたのが、この2Wayの『サンボル革サコッシュ(仮)0次試作』(商品名はまだ検討していないので、仮称)だ。
「ストラップはそのへんにあったものを仮に付けてきただけです」と向井さん。
革はテロッとした柔らかいもので、サイズ感は、iPhoneとちょっとした小物を入れるのにピッタリサイズ。そして、なんか我々が思っていたより、ずっとスタイリッシュで上質感がある。
「革はラム革を使っています。厚くなると折り畳めないし、硬くなってしまいます」と向井さん。
なるほど、柔らかな質感が、我々のサコッシュのイメージを超えて、使いやすさ、上質感を出してきている。
やっぱり、プロが試作するのってすごい。オンラインでのミーティングの時に、筆者(タクタ)がいしたにさんのアイデアを伝えただけだったのだが、それが見事に具現化されている。
「いきなり、これは欲しい試作になったね!」と一同盛り上がる。
iPhone 15 Proを入れてみたが、もちろんiPhone 15 Pro Maxなど大きいスマホでも全然問題ない。バッグは持ちたくない、でも手ぶらで出られないというシチュエーションにピッタリのサイズ感と質感だ。
たとえば、社内でちょっと動き回ったりする時も、このサコッシュのサイズ感は実にいい。コピー機の前や、休憩室にちょっと立つ時に、スマホと、眼鏡と、社員証……みたいなものを入れて立ち上がるというイメージ。デスクに置いていたものを、いちいちポケットに仕舞わなくても、これひとつ持てばいい。
ストラップの付き方はちょっと工夫されていて、内側に付いている。
「外側に付けるとぶら下げた時に口が開いちゃうんですよ。こうすれば、ファスナーなしでも口が開かない」と向井さん。
「いいですね。うーん、でも大事なものを入れるから、ファスナーはあった方がいいかな」といしたにさん。
ファスナーを付けると、そこの部分が硬くなったり突っ張ったりするので、そのあたりもいろいろ考えなければならないポイントだ。
ジャストなサイズ感。身体にもピッタリとフィット
実際に首から下げてみた。
いい感じ。すでにめっちゃ欲しい。
たしかに、入れるものの大切さを考えるとファスナーは欲しいが、この「スルっ」と入る感じも捨て難い。ストラップの長さもどのぐらいにするか迷うところ。長めにした方が出し入れしやすいが、短めの方が身体にはフィットする。身体から離れない、フィットする感じも大切だ。
開いて横から、iPad Pro 11インチを入れられる!
このサコッシュはここから、さらに変化する。折り込まれている部分を開くとサイズが変わるのだ。
この部分はけっこう凝った加工。マグネットが革の押さえで縫い込まれていて、このマグネット同士がくっついて、折り畳まれているというわけだ。しかし、かなり凝った加工なので、ここはコスト増になりそうなのが心配。
「折り畳まれる部分の内側は布を使っています。ここも革にしてしまうと、きれいに折り畳めないし、分厚くなってしまいます。布といってもラム革にフィットする強度がありながらも柔らかい質感のものを使っています」と向井さん。
なるほど、これもプロならではの工夫。こちらは外側にDリングがついている。
実際にiPad Pro 11インチを入れてみると、こういう感じ。もちろん、ストラップも90°付け替えている。
さっきまで、iPhone 15 Proにピッタリだったサコッシュに、iPad Pro 11インチがすんなり入る! これぞ、我々が求めていたサコッシュだ。
社内で、ミーティングルームに行く時に、サクッとiPad Proを入れていく。そういう利用をイメージしている。
もちろん、iPad Pro 11インチだけをイメージしているわけではないが、あのサイズは身体にフィットするスタンダードなサイズなので、iPad Pro 11が入れば、他のそれに近いサイズ感の持ち運びたいものの多くがすんなりと入るのだ。
なんか、これはいきなり理想の製品が出来上がってしまったのではないか。
ストラップを斜めに付けるという新しいアイデア
「いしたにさんの言ってることを理解するために、自分でも紙を切り貼りして試作をしてみました。どうやったら、実際に使う際に美しくなるか、便利に使えるか。細かい部分で工夫しています」と向井さん。
Dリングや、マグネットの位置なども、こうやって試行錯誤したからこその位置だというわけだ。
とはいえ、サイズは実はギリギリ過ぎて、iPad Pro 11インチにピッタリフィット。これでは出し入れに苦労してしまう。また、iPad Proをケースに入れて使う人もいるだろうし、そういう人が入れられない。あまり無駄に大きくするとスタイリッシュさが損なわれてしまうが、もう少しは大きくした方がいいだろう。
「ストラップを斜め方向に付けると、身体にフィットさせて下げられるし、2つの口をどちらも扱いやすいですね」といしたにさん。
なるほど。これは、実際に試作してみたからこその発見だ。
こうやってみると、いしたにさんが言っていた「ポケットの向きを変えることで、方向が違うから間違えない」という意味が分かってくる。たとえば長辺にふたつのポケットが存在したら、出し入れする時にどちらに入れるか迷う。場合によっては、思惑と違う方に入るかもしれない。ポケットの向きが違うと、ノールックで入れても間違えることはない。
日常的に使う道具は、そういう確実性が大切だ。たとえば、誰かと会話しながら、チケットなどを無意識で「スッ」とポケットに入れた時にも、どちらに入れたか身体が覚えている……そういう扱いやすさが大切なのだ。
次なる1次試作がとっても楽しみ!
いきなり完成度の高い0次試作が上がってきたので、うれしくなってしまったが、もちろん煮詰めていかなければならない部分がないわけではない。
まずは、大切なモノを入れる可能性が高いiPhone側のポケットにはファスナーは必須だ。向きが変わることを考えても、ファスナーがないと大切なモノがこぼれ落ちる危険がある。また、入れるものにもよるが、もうちょっとマチが必要だ。モバイルバッテリーなどをどのぐらいまで考慮するか……。
また、iPad側のポケットはもう少しサイズが必要。大きすぎても困るのだが……。
「オーケーです。この話を元に次の試作にかかりましょう」と向井さん。
いきなりの0次試作で、素晴らしい完成度だったが、いよいよ次に作ってみてもらうものは、試用して、使用感を煮詰めていきたい。「実際に使ってみると、ここが使いにくい!」なんてこともあるかもしれない。
「スマホどこ入れる?」で悩んでいるみなさん。もうしばらくお待ち下さい!
次回のライブミーティングは、YouTubeライブで4月24日(水曜日)19:00からの予定! チャンネル登録お願いします!
(村上タクタ)
〈0次試作の出来の良さ位に盛り上がったサンボル商会の製品企画会議の様子は、動画で公開中!〉
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