あくまで、かなりマニアックな、オウンリスクでの購入チャレンジであることはご理解いただきたい。仮に購入できなかったり、購入できても日本で動作しなかったりしても、筆者としては責任は取れない。
購入するのは不可能ではない。ただし、容易でもない
まず、必要なものは、
●自分のアカウントでUSのApple Store(ウェブ)に入ること
●USのApple Store(リアル)での受け取りか、USの住所での受け取り
●眼鏡の人はUSの処方箋(詳細は後述)
●USのApple Storeで動作するクレジットカード(これが案外難しい)
●USのApp Storeでないとアプリは買えないはず
●OSも現時点では英語のみのはず。かなりSiriに依存する操作体系だが、Siriも英語のみかと。また、位置情報などで動作しない可能性もゼロではない
●技適については後述
筆者の意見としては、USで住所を貸してくれたり、配送を受け取ったりしてくれる友人がいれば買いやすいが、そうでなければ難易度は大きく上がるという感じ。
ちなみに、アップルは、FAQにおいて、USのユーザーが旅行に持ち出す際には、その優れたユーザーエクスペリエンスを常に体験できるとは言っている。
また、海外のユーザーの購入については、英語しか入力できないし、Siriも英語のみ、そしてUSのアップルアカウントが必要で、US以外でのサポートも提供しない……とは言っているが、禁止するとも言っていない。
また、US以外の国では年内に発売するという姿勢は変わらない。
ともあれ、上記の条件を順番に解説していこう。
Face IDでのフィッティングは2種類のバンドのサイズと、Light Sealのサイズ
まず、USのApple Store(ウェブ)で購入の手続きをする。
当初、USのアカウントが必要という噂があったが、これはデマだった。日本のアカウントでもストアをUSに切り替えると、購入できる。決済しなくても、Face IDでの測定などはできるので、体験してみると面白い(当然ストアは英語です)。
Face IDの測定は顔周りの形状を計測するもの。
Apple Vision Proは、視線入力を行ったり、赤外線での表情のセンシングなどを行ったりするので、顔まわりを完全に密閉する『Light Seal』という部品を、個人個人に合わせる必要がある。おそらくここに光が入ると上手く操作しないのだろう。そこで、このFace IDでの測定で、バンドのサイズと、Light Sealのチョイスを行う。
バンドにはSolo Knit Bandと、Dual Loop Bandがある。
Solo Kint Bandは筆者がWWDC 23で体験したもので、広いバンドの上下にオレンジ色のヒモが通っており、それをダイヤルを回して調整することで適度なフィット感を得られる。後頭部の一番出っ張ってる部分にフィットするので、上下にズレる感覚がなくてとても良かった。
Dual Loop Bandは、その名の通り、上下に2本のバンドが出ているタイプ。筆者が体験したのはSolo Kint Bandの上にサポートバンドが通っているものだったが、上下2本のベルト構成のものが別添されることになったようだ。サイズは、それぞれS、M、Lがあり、筆者は計測した時によりSの時とMの時があったので、その中間ぐらいなのかも。
Light Sealは、筆者は33Wというサイズだった。周囲の日本人は、21W、25W、33Wの3サイズの人しか見当たらなかったが、Twitterなどを見ると35W、23Wという投稿もあった。20種類ぐらいのLight Sealが用意されるという噂もあるので、大柄な人、ほお骨の出た人、鼻の低い人、高い人……というバリエーションがあるのかも。さすがは多様性の国である。
なお、このLight Sealも別途購入できる(199ドル)ので、仮に他の人の買ったVision Proを譲り受けたとしても、Light Sealを交換して使うことができそうだ。
さらにその内側には、Light Seal Cushionという顔に当たる部分の部品がある。
こちらも別途購入可能で、29ドル。
眼鏡、ハードコンタクトの人は処方箋と、ZEISSのオプチカルインサートが必要。ソフトコンタクトなら使える
続いて視力についての質問がある。
眼鏡を利用している人の場合はUSの医師の処方箋をもらって、ZEISSのオプチカルインサートを購入する必要がある。
ハードコンタクトレンズは利用できない。処方箋をもらってZEISS。
ソフトコンタクトレンズでも色つきのものの場合はZEISS。また、monovision(左右の目の焦点距離の合う領域を変えて、左右合わせると広い範囲でピントが合うようにする方法)のコンタクトレンズもZEISSが必要になる。
つまり、視力が低下している人が使うには、ソフトコンタクトレンズか、ZEISSのオプチカルインサートが必要だということだ。
Apple Vision Proは、Optic IDという虹彩認証や、マウスの代わりに視線を使う視線入力を使う。目の周りにあるカメラやセンサーが目を追うときに、ハードコンタクトレンズや、色つきのソフトコンタクトレンズは邪魔になるということなのだろう。
ZEISSのオプチカルインサートは、Readers(老眼鏡?)は99ドル。Prescription(処方箋)は149ドルとなっている。医師の処方箋を元に、視力に合ったZEISSのオプチカルインサートを購入することになるというワケだ。
Light SealやZEISSのオプチカルインサートのことを考えると、Apple Vision Proは「ちょっと貸して」といって体験できるデバイスではないことが分かる。今のところゲストモードや、マルチアカウントがあるかどうかも分からない(iPhoneやiPadはマルチアカウントでは使えない。Macはできる)。
虹彩認証でログインすると、個人アカウントのメールや、メッセージが見られるが、他の人が装着してもログインすらできない……となると、AppleVision Proの体験は、購入した人だけのもの……になるかもしれない。
店舗での受け取りか、配送か
受け取りは、店舗で受け取るか、配送(もちろんUS国内のみ)。
店舗で受け取るなら、特定のタイミングに特定の店に行く必要がある。なかなか難しいし、受け取れるタイミングに渡米する必要がある。しかし、US住所を持っていなくても入手できる。
当初噂されていた、長時間の説明というのはなさそうだ。配送もあるのだから。
USに知人がいたら、配達を受け取ってもらって、日本に送ってもらう。これが一番簡単だろう。
ストレージは3種類、アップルケアは約7万4000円
ストレージは256GB、512GB、1TBの3種類で、それぞれ200ドル(約3万円)でステップアップできる。筆者の意見としては、初期のデバイスは近いうちにアップデート版が出るだろうし、今のところ大容量データをたくさん保管しないといけないということはないので、256GBで良いように思う。もちろん、3Dデータを大量に持ち運ぶ用途を考えている人は大容量を買っておいた方が良いと思う。
アップルケアも悩ましいところ。3599ドル(約52万円)以上のデバイスが文鎮化したら……と思うと入っておいた方が良いような気がするが、同時に前述の理由で近いうちに買い直すかもしれない。とはいえ499ドル(約7万4000円)なので、無駄に入りたくはないが。悩ましいところ。
もっとも、150ドル、200ドルといった機能追加とかを繰り返してアップルケアの選択に到達するので、その頃には499ドルを瞬時にポチれるぐらいには感覚が麻痺しているが。
通るカード、通らないカード
次にカード決済。
筆者はここで苦戦したのだが、通るカードと通らないカードがある。
ANA JCBは通らなかった。三井住友VISAは通りそうだが、筆者は昼間のウチに認証していなかったから使えなかった。他にも何枚かのカードを持っていたが、そもそも4000ドル(約60万円)まで、上限額を上げているカードが多くないので、苦労した。
また、アップルデバイスに登録する際のクレジットカードの住所地はUSの住所地にしておく必要がある。
VISA、マスターカードなどの、USで通りやすそうなカードを、念のために複数用意しておいた方が良さそうだ。
また、筆者が購入しようとしている時は、アクセスが集中していたのだろう。頻繁にエラーが出たので、購入には苦労した。平常時ならここまで苦労はないと思うが。
ちなみに、今(1月20日18時)、試してみると6〜7週間後に出荷となった。
技適がなかった場合には
さらに、手に入れたとしても技適があるかどうか分からない。
セルラーの使用電波周波数帯に違いがあるiPhoneやiPadの場合は、国ごとに品番が違うので、海外仕様は日本の技適がないが、Apple Vision Proの場合はWi-Fi/Bluetoothしかないので、世界共通仕様で技適が取得されている可能性もあると思っている。
技適がない場合には『技適未取得機器を用いた実験等の特例制度』を利用することになるだろう。マイナンバーカードのおかげで、オンラインで申請することが可能になっている。
技適未取得機器を用いた実験等の特例制度
https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/others/exp-sp/
USでも相当数の人が買っていると思うが、現時点でも6〜7週間後の出荷となっている。バンドやLight Sealのオプション、オプチカルインサートなど、かなり準備が複雑な商品であるにもかかわらず、この注文をさばけているということは、かなり周到な用意が行われているということだろう。
そういう意味では、日本発売、出荷も遠くはないのかもしれない。「ここまでのリスクを冒すのは……」と思う人は、日本発売を待ったとしてもそれほど先のことではないはずだ。
Apple Vision Proにおける日本の夜明けも、そう遠くないかもしれない。
(村上タクタ)
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