現代社会を予言していた80年の原田真二作品
今回も満員御礼となったオーディエンスを前に、大河ドラマ顔負けのヒストリカルなトーキング・ロックショーが繰り広げられた。今回のテーマは1980年、原田真二&クライシスの時代を中心に「時間旅行の旅」へと舵を切った。と言いながらも、すぐには本題に踏み込まないのが、原田真二マニアック恒例のスタイル。今回もクライシス結成直前にリリースされたシングル「マーチ」への考察がたっぷりと展開されたのだった。演奏前のカウントありなし、そのボリュームに関しての言及はまさに原田真二マニアックと呼べるものであった。
そこから満を持して、怒涛のクライシス考察が述べ立てられる。まずはクライシスというバンド名の由来から始まり、多士済々なメンバー一人ひとりの深掘り。そこからレコーディングの背景の説明、収録曲の解説が繰り広げられた。その第一弾シングルとなったシングル「ストロベリーナイト」は現代社会を予言した曲であると位置づけ、それに影響された漫画や小説の内容にまで触れ、あらためて原田真二の先見性を再確認するものとなった。
圧巻はアルバム『ヒューマン・クライシス』とビートルズの『サージェント・ペパーズ~』との奇妙な関係。意識せずとも生まれた符号点を静かながらも熱を込めて語り上げる野口教授の姿には、鬼気迫るものが……。『ヒューマン・クライシス』が名盤であることが証明された瞬間であった。
第2部のライブでは、1部でも言及された「ストロベリーナイト」をはじめ、レア曲、人気曲が披露された。それにも増して感動したのは、平和を守るために一人ひとりが行動しなければならないという名演説と言っても差し支えないMC。今の我々が原田真二のもとで何ができるのか、あらためて考えさせられた瞬間だった。(広川峯啓)