レザークラフトの伝統技術に日本画にある調色技法を組み合わせる。
現代の多くの革ジャンのベースは遥か昔に確立されていたと言っても過言ではない。だが、現代までデザイナーや職人の努力によって、新たなプロダクツが誕生し続けてきた。つまり、革ジャンをはじめとしたレザープロダクツは伝統を守りながら、進化を続けるカテゴリーなのだと言える。
渋谷の工房兼ショップからハンドメイドのレザープロダクツを発信するアツレザーワークスのモノ作りにはそんな温故知新の精神が色濃く感じられる。ブランドの代名詞である、レザーカービングに細かく砕いた鉱物を密着させ色付けする“The Ore”と名付けられた技法は、レザーカービングに加え、日本画からヒントを得た調色技法を駆使したモノ。
つまり、どちらも伝統技術でありながら、それを組み合わせることで、レザークラフトにおける新たな表現として昇華されるというわけだ。アツレザーワークスのライダースのベースのスタイルは至ってオーソドックス。だからこそThe Oreによる繊細なデザインが際立ち、奇を衒うことなく唯一無二の個性を演出する。
生産の全工程を工房で行うのは職人でありデザイナーの外山さんのこだわりを自らの手で具現化するためだ。職人がレザーと向き合い手作業でオリジナリティを追求するモノ作りは、アートと呼ぶにふさわしい。
The Oreをはじめとした外山氏の業は、レザーに息吹を宿すかのように、そのもの独自の表情を与えることができる。こちらはGood Art HLYWDとのコラボレーションで製作したキャスケット。
The Oreのベースとなるレザーカービングはひとつの図柄に対し、10以上のスタンプを使用して丁寧に刻まれる。トラディショナルな絵柄から個性を生み出すThe Oreの軸となる部分。
ベストのポケット部分。カービングのピーナッツフラワー部分は一見パッチに見えるが、周りに着色して一枚のレザーから生み出したデザインだ。
DOUBLE BLACK RIDERS “Sun Burst & Peanut Flower”
アメリカの伝統的なダブルライダースをベースに独自の味付けを加えた1着。エポレットとポケットフラップのサンバースト、ベルトのピーナッツフラワーをモチーフとしたThe Oreがオリジナリティを演出。渋鞣しのステアハイドはヴィンテージ加工が施され、ヌメ革を丘染めで仕上げているため、茶芯のヌメ革が深いアメ色へと変化し、奥行きのあるエイジングを実現する。上の写真は約3年着用したエイジングサンプル。32万1200円
外山さんの愛車である’48年HDパンヘッドのリアフェンダーには、The Oreを施したレザーカバーを装備。外山さんならではのドレスアップだ。
ダブルライダースの他にシングルライダースも展開。ホワイトやブラウンのカラバリにも茶芯を出し、見事な仕上がりに。
The Oreは銀粉を密着させるSilverをはじめ、ラピスラズリ、ターコイズなど、鉱石によって様々な自然の色彩を表現できる。
【DATA】
ATSU LEATHER WORKS
東京都渋谷区猿楽町3−1 エムワイ代官山1F
TEL03-6455-1351 13時~20時
https://atsuleatherworks.com/
Instagram@atsu_leather_works
(出典/「Lightning 2024年12月号 Vol.368」)
Text/Y.Kinpara 金原悠太 Photo/M.Watanabe 渡辺昌彦
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