ファッションにおいては、「革ジャン」「ブーツ」、そして「ジーンズ」。この3つはアメカジの外せない三種の神器であり、年に一度は各テーマで特集を組むほど、無くてはならない存在である。
特に、ジーンズはヴィンテージ市場も成熟し、突き詰めていくと面白い世界だ。そこで、まずはどんな歴史かを知るところから始めてみてはいかがだろうか? 歴史を知っていれば、デザインの違いや希少価値について理解するのに役立つはずだ。
ジーンズとは? デニムとの違いって何? 発祥はどこ?
これを知らないとお話にならないので、簡単におさらいしておこう。
ジーンズは、主にデニム生地を使いリベットで補強したパンツのことだ。ちょっとやそっとでは破れないそのタフさから、ワークウエアとして長年愛されてきた。
そして、デニムとは生地のことを指す。インディゴ染めの縦糸と白いままの横糸で、綾織りで織られた生地のことを指し、一般的には綿である。
デニムという生地は、もともとはフランスが発祥という説が有力だが、そのデニムが現在のジーンズに至るまでの歴史は、アメリカなくして語ることはできない。そんなアメリカでのデニム(ジーンズ)の進化の過程を紹介のしていく。
1880年代、ゴールドラッシュとともに誕生したジーンズの原型。
19世紀半ばにアメリカ・カリフォルニアで起きたゴールド・ラッシュ。一攫千金を夢見て、様々な国から多くの方達が、移民としてアメリカ西海岸に上陸した。
そんな時代に必要とされたのが、ワークウエアだった。
当時は現在のように「○○用」というウエアの分類はなく、着古したものを屋外労働用として着用するのが一般的だった。だからこそ、ゴールドの採掘作業では、激しい労働に耐えうるワークウエアが求められたのである。
そんな折、ドイツからの移民でサンフランシスコにて織物の卸売業を営んでいたリーバイ・ストラウスは、テントや荷馬車の幌に使うキャンバス地を鉱山労働者に販売していた。
同時期、ネバダ州でテーラーを営んでいたヤコブ・デイビス(かのベン・デイビスの祖父)のもとには、堅牢なワークパンツ制作の依頼が舞い込んでいた。
かくして、リベット留めによる補強を思いついたデイビスは、それをリーバイに売り込み、共同で1873年5月20日にリベット補強の特許を取得。
こうしてデニム生地をリベット補強したワークパンツ、つまり後のジーンズの原型が誕生した。
1890年には、それに501のロットナンバーが与えられた。
以来、カウボーイにも人気となり、それがいつしか若者のファッションとして一般化すると、様々なデニムブランドが生まれ、スリムやブーツカットなどシルエットも変化しながら、世界中でファッションとして人気を集め、現在の不動の地位を確立したのである。
1900年代初頭、5ポケットジーンズが誕生。
1902年、リーバイスのジーンズはバックポケットが2つに変更された。
こうして、ベルトループは装備していないが、コインポケットも付く5ポケットジーンズが誕生したのである。
写真のものは同年代のリーバイス201。
当時は1810年にニューハンプシャーで創業した綿織物を扱う世界最大のアモスケイグ社のデニムを使用していたが、XXデニムという堅牢な生地を使ったモデル以外に、廉価な生地のモデルもあった。
この201は1つランクの下がるNo.2デニムのモデルだ。
1920~30年代は、カウボーイにデニムが広がった時代。
1910年代に入ると、リーバイスはコーンミルズ社(1891年にノースカロライナ州で創業)にアモスケイグ社のものよりも肉厚で堅牢なデニム生地を別注。
リーバイス専用デニムの証としてセルビッジに赤いラインを入れたと言われている。
1920年代にはすべてのプロダクツがコーンミルズ社のデニムが使われるようになったようだ。
またこの時代には鉱山などで使用するワークウエアとしてだけでなく、カウボーイからの人気を集めたジーンズ。支持されていたのは、先に紹介したリーバイスだけでない。
1889年にカンザス州で創業した食品と雑貨の卸売会社だったリーは、1920年代からカウボーイパンツと銘打ったジーンズを売り出し、1926年には世界初のジッパーフライを装備したジーンズもリリース。写真は’30年代のカウボーイパンツだ。
ジーンズらしいディテールのひとつである赤タブは、リーバイスが世界で初めて1936年から採用したディテール。
この時、バックポケットの外側から補強していたリベットを、ポケット内側に施すように変更。これが俗に“隠しリベット” と言われている。同時にサスペンダーボタンも廃止され、ベルトループが付けられた。
1950年代、第二次世界大戦を経て、ジーンズは完成形となった。
1940年代、第二次世界大戦期は、アメリカでも物資統制局による指示で様々な物資使用に関して制限が設けられた。服飾業界も同様で、大戦モデルと称される簡素化された独自のディテールが生まれたのだ。
現在では絶対にありえないディテールから、ヴィンテージ市場で珍重されて、高値で取引されている。
そして戦後、1950年代になると、ファッションとしてジーンズは地位を確立。
こちらはウエストバンド内側中央にあったネームラベルが、右腰側に変更された後の1950年代のリー101Z。
赤タグの後の通称黒タグが付属する1本で、おそらくジェームズ・ディーンが着用していたのもこのモデルだろう。当時のリーはリーバイスとは逆の左綾デニムだった。
1955年公開の映画『理由なき反抗』で、主演のジェームズ・ディーンがこのリーの101Zを着用し、赤いドリズラーを羽織った姿は、当時の若者に衝撃を与えた。彼はプライベートでもリーを多く着用していたことで知られる。
こちらは1960年代に登場した、防縮加工デニムを使った551ZXXというモデル。
縮むデニムを嫌う東海岸のファッショニスタに向けて作られ、スタイリッシュなシルエットでジッパーフライ仕様というのが特徴。後に505というロットナンバーに変更された。
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ジーンズの歴史と切っても切れない存在であるアメリカ。歴史を振り返るうちに、ヴィンテージに興味が沸いてきた方もいるのでは? そんな方におすすめの記事がこちら!
リーバイス501からジーンズの歴史を知ることができる内容になっています。
Text/T.Miura 三浦正行 資料写真/フェイクアルファ、ベルベルジン、マービンズ、レオン・バイ・フリーウェイ
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