奥深きナイフの世界。「A&F」会長・赤津さんがアウトドアナイフに魅せられる理由。

太古の昔からナイフは日常に欠かせない道具。石器時代から基本的な用途や形は変わらず、素材が進化しているだけだと「エイアンドエフ」会長・赤津さんは語る。一流の料理人が包丁にこだわるように、アウトドアマンの赤津さんもナイフの機能、造形美に魅せられたのだ。

基本的な道具としては原始の時代と何ら変わっていないナイフ。

昨今は危険なものとして見なされがちなナイフだが、幼少期から鉛筆をナイフで削るのが当然だった赤津さんにとっては生活に欠かせない道具。職人に敬意を払いつつ、道具としてのナイフの在り方を語ってくれた。

「エイアンドエフ」会長・赤津孝夫さん|1947年長野県生まれ。日大芸術学部写真学科卒業後カメラマンを経て’77年にアウトドア用品輸入販売会社「エイアンドエフ」設立。「スポーツナイフ大研究」(講談社)等の著書あり

「鋼が開発されてナイフは劇的に進化したけども、基本的な道具としては原始の時代と何ら変わっていない」と赤津さん。石器を常用するニューギニアの民族が鋼のナイフと使い比べてみたところ使用感はあまり変わらなかったという例もある。もちろん鋼の強度は言うまでもない。だが使用者の手に馴染む形こそ理想のナイフであり、カスタムナイフが優れているのもそこに尽きる。

「ナイフと同様ケースも大事。腰にぶら下げるので柔らかい革だと 転んだ時に怪我をしかねない。自分で作ることもあります」

赤津さんのナイフに対する審美眼は、友人ラブレスからの影響が大きい。「手に取りたくなり、触ってみて、そして使ってみる」。その3つがクリアしたものが優秀なナイフ。理屈ではない。その感覚を赤津さんは「手に溶ける」と表現する。

「そのためには、まずは触ってみたいと思わせないと。その点、ラブレスのナイフはひと目惚れするほど美しい。彼はバウハウスでデザインも学んでいる。ただの職人じゃないですよ」

ナイフの危険性だけが取りざたされる昨今だが、キャンプの盛り上がりのなかで原始的な道具に目を向けられるようになりつつあるのは、ひとえに赤津さんを筆頭とするアウトドアマンたちの啓蒙の積み重ね。

「アメリカは西部開拓の歴史があるから、学校でナイフの授業があるほど。日本では切れるナイフは危ないなんて言われるけど、切れないナイフのほうが力んでしまって危ない。むしろ切れるほうが安全ですよ」

続いては用途や状況に応じてそれぞれの個性がある、赤津さんのコレクションを拝見!

【R.W.LOVELESS(ラブレス)】最高強度の鋼を使用したラブレス本人の愛刀。

塊から削り出したストック&リムーバルのカスタムナイフ「002」は、ラブレスが自分用にこしらえたものを、ご本人から譲り受けた。ジャンボジェット機のタービンに使われる鋼154CMを使用しつつ、ハンドル部分もテーパードフルタングで持ちやすさに比重が置かれる。ナイフも優秀だけど、ぴったりと収まるケースもすごい!!

フルタングのブレードだが、厚い金属をそのまま挟んでしまうとハンドルに比重がかかってしまう。バランスよくするため金属を斜めにテーパーさせている。

【RANDALL(ランドール)】質実剛健な鍛造ナイフ。革ハンドルで手にもなじむ。

英国の刃物の街シェフィールドから職人を呼び寄せ製作するアメリカを代表するカスタムナイフメーカー。金敷とハンマーで炭素鋼を打ち鍛えるフォージング法を用いたハンドメイド。鋼がハンドルの真ん中を貫通し端をボルトでねじ込んでいるナロータングが特徴。「同じカスタムナイフでもラブレスとは作り方がまったく違うんだ」

ハンドルに鹿角が使われることが多いが、これは重ねられた革。濡れても滑りにくく手によくなじむ。さりげない鞘の色使いも良い。

【加藤清志】刃物鍛冶による鍛造ナイフは鉈さながらに使える。

八ヶ岳のある山梨県・北杜市を拠点に活動する刃物鍛冶、加藤清志氏による1本は、形状は西洋ナイフだが作りは鍛接、鍛造、折り返しなどの刀匠の技法が生かされる。赤津さんが20年以上アウトドアで使用し続けてきた大事な1本。鉈のように木を切るときに重宝。

【BUCK(バック)】生涯共にできるライフタイムギャランティ。

アメリカのファクトリーメイドだが、生涯刃を交換してくれるライフタイムギャランティ。ロックボタン式の折り畳みナイフを作った最初のメーカーであり、1964年に登場して今なおベストセラーだ。赤津さんはハンドルの真鍮部分に唐草模様の彫刻をオーダーした。

【GERBER(ガーバー)】洗練されたデザイン。ハンティングに欠かせない。

バックと双璧をなすアメリカを代表するメーカー。バックは頑丈さに秀でているが、一方ガーバーは洗練されたデザインが魅力。しなるほどに薄い刃は切れ味が抜群で、赤津さんの狩猟時には欠かせない。左は皮剥ぎ用のFlayer。メスのような右は細かい作業用のPixie。昔ながらの炭素鋼。錆びないように刃までメッキをかけている。

【GERBER(ガーバー)】小川四郎による鹿の彫刻。洗練された造形美が真骨頂。

旧いガーバーのナイフには、ジョン・ウェインの銃に彫刻したこともある小川四郎氏による鹿の彫刻をオーダー。「ナイフより彫刻のほうが高価(笑)」。ハンドルとナイフの連結部分は鋳込んであり水や血が染み込まない。レザーケースは赤津さん自らこしらえた。

【GERBER(ガーバー)】マイカルタをハンドル材に使用した日常の愛用品。

ラブレスも愛用したマイカルタのハンドル材を使用した折り畳み式。マイカルタは麻の布に樹脂をしみこませている繊維で、軽量かつ縦横共に強度が強い。昔は、四六時中身に着けていたほどのお気に入りの1本だった。ケースの革細工は遊牧舎工房の大草氏によるもの。

【VICTORINOX SWISS ARMY KNIFE(ヴィクトリノックス)】スイス軍正式採用の最高級ステンレス。

スイス軍が正式採用する最高級ステンレスを使用したポケットナイフ&ツール「PIONEER」。ポピュラーなプラスチックボディのタイプはこのモデルから派生したものだ。ハンドルにスイス軍の紋章付き。ナイフのほか錐、ドライバー、栓抜き、缶切りなどが使える。

【原幸治】使えば使うほどに切れ味が増していく。

日本が誇る刃物の生産地、岐阜を拠点とするカスタムナイフ職人、原幸治氏原による1本。ブレード材に使われるカウリY鋼材は使うほどに切れ味が増していく。ハンドルはサンバースタッグ(インド産大鹿の角)。ケースも原氏自らこしらえナイフとの一体感がある。

【AF】ブランド不明ながら、小技が効いたカスタムナイフ。

ブランド不明だがAFと掘られていることから友人から譲り受けたアメリカのカスタムナイフ。ジャンボジェット機のタービンに使用された鋼154CMを刃に、スクリムショーで彫りこんだ柄が優美。あり溝加工を駆使してボルト止めなしでもぴったり刃が収納される。

昨今のアウトドア人気により、注目を集めるようになったアウトドアナイフやキャンプナイフ。アウトドアからいざという時のサバイバルに頼りになるだけでなく、目で見て楽しむことも魅力的なのだ。まずはお気に入りの1本を見つけてみてはいかがでしょうか?

(出典/「Lightning 2019年5月号 Vol.301」)

この記事を書いた人
ADちゃん
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ADちゃん

ストリート&ミリタリー系編集者

Lightning本誌ではミリタリー担当として活動中。米空軍のフライトジャケットも大好きだけど、どちらかといえば土臭い米陸軍モノが大好物。そして得意とするミリタリージャンルは、第二次世界大戦から特殊部隊などの現代戦まで幅広く網羅。その流れからミリタリー系のバックパックも好き。まぁとにかく質実剛健なプロダクツが好きな男。【得意分野】ヴィンテージ古着、スケートボード、ミリタリーファッション、サバイバルゲーム
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