まずは知りたい「WHITE’S BOOTS(ホワイツブーツ)」とは?
ワークブーツの王様と称され、世界屈指の品質を誇るホワイツブーツ。その歴史は古く、18世紀半ばの南北戦争以前まで遡る。創業者のオット・ホワイト氏がアメリカ北西でロガーマン達へハンドメイドブーツを提供したのが始まり。厳選した上質なマテリアルを用い熟練の職人が丁寧に織りなす同製品は、マスプロにはない堅牢さと美しい機能美が宿り、誕生から1世紀以上たった現在では、ワーカーだけに留まらず、ファッションアイテムとしても輝き続けている。今現在も頑固なまでにハンドクラフト製法の伝統を守り続けている数少ないカンパニーだ。
特徴は厳選されたレザーのみを使用すること、アッパーレザーとインソールを縫う糸にアイリッシュ・リネンと呼ばれる太い糸を使用すること、そしてハンドクラフトによるグッドイヤーウェルト製法にある。中底とアッパー、コバの三つをすくい縫いしたあと、ウェルトにアウトソールを出し縫いするこの製法により、他社では実現できない柔軟性と快適性を生み出し、細部にわたるこだわりが外からの浸透を完璧に防御、世界最高峰と呼ばれる強度を作り出した。
しかし、これは手間やコストがかかる製法で限られた足数しか作れないため、ここまで手作業にこだわっているブランドはアメリカでもほとんどない。それでも「一人一人の顧客ニーズに柔軟に対応出来るシステムと品質を永く維持することが最も大事」という理念のもと、頑なに昔ながらの製法を守り高品質なブーツを作り続けているからこそ、ファンの心を掴んで離さない。
ホワイツブーツは、ワークブーツらしい堅牢さに加えて、フォーマルウェアにも似合う上品さを併せ持つのも人気の由縁。セミオーダーもメイド・イン・USAで作られ、ファンならずともブーツ好きには憧れの存在になっている。そんな、ホワイツブーツにはどんなモデルがあるのか、人気の「スモークジャンパー」「セミドレス」をはじめとした定番7モデルを紹介していこう。
【定番①】10インチ スモークジャンパー(10” SMOKE JUMPER)
創業以来、製造の根源を変えることなく生産され続けるホワイツの代表モデル。“森林消防パラシュート降下部隊員” 用に開発されたスモークジャンパーは、ブランドの顔役的な存在。「森林火災の消火にあたる消防隊員が飛行機から降下して現場に赴く」様からスモークジャンパーという名に。過酷な労働条件の中で働くワーカーたちの足元をしっかりとサポートする独自設計のアーチ・イース構造が特徴的だ。ヘビーデューティな作りはまさに一生モノだ! オイルレザーに#100ソール搭載で強度はもちろん耐火性にも優れるため、現役消防士やワーカーたちの愛用者も多い。
貴重なヴィンテージを拝見! くたびれた革の表情から、森林消防パラシュート降下部隊員の過酷さが分かる。
森林消防パラシュート降下部隊員が愛用するモデルは、NFPA(米国防火協会)が認める耐火性能の基準を満たした認証タグが付けられており、それはリビルド(修理)時の保証書ともなる。ちなみに同モデルは、安全靴でありながらトゥ部分に鉄板が施されていない。それは、高温の場所で足元の火傷を防ぐためなのだとか。
【定番②】6インチ スモークジャンパー(6” SMOKE JUMPER)
100年を優に超える歴史において、製法の根源を変えることなく生産され続けるブランドの看板モデル、スモークジャンパー。そこにオックスフォードに見られるつま先の反り、ドレス感を醸し出すスタンダードなレースアップ、足長効果が期待できる1/4ヒールアップを加え、ゴツさだけではない新たな魅力を引き出したモデル。
【定番③】セミドレス(SEMI-DRESS SDL)
タウンユースメインという人に人気が高いのがドレスシューズのような上品さを醸し出す「セミドレス」。専用のセミドレスレザーを使用したシャープなプレーントゥスタイルは、幅広いシーンで活躍してくれるはず。ソールはスマートながら高いグリップ力を誇るビブラム#700。履きやすい5インチハイトだ。
【定番④】ノマド[エンジニアブーツ](12” NOMAD)
ハイクオリティなハンドソーン製法のエンジニアブーツが欲しいという長年のリクエストに応える形で、2013年から生産がスタートした「ノマド」。フルグレインのオイルドレザーを使用し、ホワイツ特有の“アーチイーズ(土踏まずの膨らみ)”も採用されているので、高いフィット感が得られる。ビブラム#700を採用。
【定番⑤】オリジナル パッカー(8” ORIGINAL PACKER)
耐久性と快適さを求める、メカニックや建設労働者、牧場のワーカーたちに支持されたオリジナルパッカー。ホワイツのなかでも最もアーチが高いラストを使用することで、ヒールが高く、トゥがシャープという、ワークブーツらしからぬスマートな雰囲気に仕上がっている。ソールはビブラム#430。
【定番⑥】ノースウエスト オックスフォード(NORTHWEST OXFORD)
アッパーはスモークジャンパーに似たデザインながら、ソールは一般的にトラクションソールを組み合わせることが多く、ボリュームあるルックスが足元にインパクトを与えてくれる。他のモデルに比べ、土踏まずの盛り上がりであるアーチイーズは控えめで、ほぼフラットな履き心地になっている。扁平足気味の人やホワイツの入門モデルとして人気。「ノースウエスト」もともとはラストの名前で、日本では独立したモデル名となっており、オックスフォードのほか同じラストを使った6インチブーツもある。
【定番⑦】オックスフォード(OXFORD)
本国のホワイツのラインナップにはなく、日本限定モデルとなっているがアメリカの工場で生産。現代のカジュアルシーンに使いやすいシンプルなモデルといえよう。一般的にオックスフォードと呼ばれる短靴の比べ、履き口のカットが深くなっており、ブーツらしさも感じられるフィット感になっている。
2018年から展開を開始した新顔「 フォアマン(FOREMAN)」ってどんなブーツ?
より多くのワーカーに向け、既存のホワイツのヘリテージラインナップよりも優れたクッション性、軽さを追求、現代技術を注ぎ込んで2018年に展開を開始したプロダクト。アーチイーズが低くつま先にボリューム感のあるゆったりとした設計になっており、既存の製品とはコンセプトが大きく異なったモデルとなっている。
ブーツを愛するライトニング編集部が選出! 評判の高かったホワイツブーツはどれだ?
ブーツを普段から愛用しているメンバーが多いライトニング編集部。そこでホワイツブーツを実際に履いてみたなかで、これぞというモデルをあげてもらった。数々のブランドのブーツも知り尽くした一家言あるメンバーを虜にしたのはどのモデル?
モヒカン小川が選んだのは「NOMAD」
革ジャンとブーツをこよなく愛する男・モヒカン小川。特にエンジニアブーツには愛が深く、本誌でも数々の記事として取り上げている編集部きってのレザーラバー。そんな彼が選んだのはやはりこちら。
「ハンドソーンとステッチダウン製法、アーチイーズなどホワイツならではの技術をエンジニアに落とし込んだ珠玉の1足。かつてスタンプタウンで試着をしたが、その履き心地は紛れもなくホワイツだった」
ラーメン小池が選んだのは「100 WHITE’S BOOTS MFG. / W200 PLAIN TOE」
「一世紀以上に渡り、世界最高峰のワークブーツを作り続けるホワイツ。その高い耐久性や品質、美しさは、確かな腕を持つクラフトマンたちによって生み出されている。またそのカスタムオーダーによる自分だけの一足を作れるのも嬉しい限り。そんなホワイツからチョイスしたのは、米国ワシントン州スポケーンにあるホワイツ本社の工房にて修行した日本人靴職人、新城氏によるハンドクラフトの逸品です! 触ればわかるその違い!」
▼新城さんにお話を伺った記事はこちら!
モヒカン小川が選んだのは「SEMI-DRESS」
レーズアップからも1足選んだモヒカン小川。やはりこの代表作は外せない模様。
「綺麗目のスタイルにもバッチリとハマるホワイツのセミドレス。もちろん耐久性や品質はワークブーツのそれ。レザーの深い色味と真鍮製のコントラストはただただ美しい」
▼業界人のホワイツコーデはこちらの記事でチェック!
2大人気モデルの経年変化をチェックしてみよう。
一世紀以上に渡り、世界最高峰のワークブーツを作り続けるホワイツ。その高い耐久性や品質、美しさは、確かな腕を持つクラフトマンたちによって生み出される。「ブーツエイジング」を楽しむのにホワイツブーツほど適したブーツもないものだ。
またカスタムオーダーによる自分だけの1足を作れるのも嬉しい。今回エイジングを楽しむためのおすすめモデルとしてピックアップするのはそんなカスタムオーダーの「スモークジャンパー」と「セミドレス」。スモークジャンパーはオイルドレザー、セミドレスはオイルドラフアウトを使用。共に足馴染みの良い革なので、着用者の足に沿った美しい皺が刻まれていく。実際のエイジングサンプルを紹介しよう。
SMOKE JUMPER
着用年数:1年
メンテ方法:適宜オイル入れとブラッシング
価格:カスタムオーダーのため価格は変動
SEMI-DRESS TOE CAP
着用年数:1年
メンテ方法:適宜オイル入れとブラッシング
価格:カスタムオーダーのため価格は変動
▼ホワイツブーツのカスタムオーダーの方法はこちらの記事で掲載しています!
ホワイツブーツの取り扱い店舗はどこにある? 中古やヴィンテージを探すのに欠かせない名店も紹介!
さて、すっかりホワイツブーツが欲しくなってきたと思うが、どこで買えばいいのだろうか? 一生モノのホワイツはオンラインショップで購入もできるが実際履いて購入したいもの。そこでおすすめのショップを紹介しよう。
1.スタンプタウン(東京・渋谷/銀座)
ホワイツを始めとする様々なブーツ銘柄の定番モデルや別注モデルの展示販売を行うョップが「スタンプタウン」だ。2014年にオープンしたスタンプタウン渋谷店を皮切りに、現在はスタンプタウン銀座店も構えるブーツ専門店。もちろんホワイツのカスタムオーダーにもしっかり対応。この場所でベースモデルとなるブーツを見ながら、革選びやディテールの選定など、細部にまで徹底したこだわりを注いだ“自分だけの1足”を手に入れることが可能なのだ。
また特筆すべきは、店内に隣接するリクラフティングルーム(修理工房)の存在。ここで熟練のリクラフターが、持ち込まれる様々なブーツ銘柄のソール交換やステッチ補修といった各種リペア、メインテナンスに対応している。もちろんここで購入したブーツ以外でもリクラフティングの注文には柔軟に答えてくれる。だから愛用するブーツたちを安心して預けることができるのだ。そしてホワイツが公認する唯一のショップだけに、純正パーツを使い対応してくれる点も魅力だ。
さらにブーツに造詣の深い経験豊かなスタッフが常駐しているので、ブーツに対する悩みや相談、商品解説まで、的確なアドバイスをしてくれるのが嬉しい。
【DATA】
スタンプタウン銀座店
東京都中央区銀座2-3-7 3F
TEL 03-3561-6788
営業/11:00~21:00
休み/無休
スタンプタウン渋谷店
東京都渋谷区神南1-11-5 2F
TEL03-3477-0658
営業/11:00〜21:00
休み/無休
http://www.stumptownjapan.com
※そのほか取り扱い店舗は公式HPでご確認ください。
2.ホープスモア(東京・世田谷)
言わずと知れたユーズドブーツの宝庫、東京・三宿にあるユーズドブーツ専門店「ホープスモア」。1990年代のレッドウィングをメインに、歴代の名モデルがずらりと並ぶ。ストック数はなんと約3000足! 世界にも類を見ない、ブーツ好きの楽園なのだ。ここまでユースドブーツが集まるショップは、世界広しといえどもここだけなのではないか? 一歩店内に入ると、もはや“ブーツの洪水”。ここには、レッドウィングを中心に、ホワイツやダナー、ウエスコ、ラッセルモカシンなど名だたるブランドの名作がずらりと並ぶ。ここに行けばきっと出会いがあるはずだ。
【DATA】
東京都世田谷区三宿1-1-19
TEL03-6413-8683
営業/11:00〜20:00
休み/月曜
http://hopesmore.net
http://hopesmore.com
ホワイツブーツのお手入れ方法は?
上質な革を使ったホワイツブーツ。経年変化を楽しみたいからといって何もしないのはまずい。例えば日本限定モデルであるオックスフォードはホーウィン社のクロムエクセルレザーを使用し、上品さと無骨さを両立させた一足。何もしないのではなく、過保護にメンテし過ぎない程度のお手入れが上手な育て方だ。
用意するのは馬毛ブラシ、サフィールのユニバーサルレザーローション、スポンジ、ウェス。これだけあればたいていのブーツもお手入れ可能。ブラッシングした後、丁寧に薄くローションを伸ばしていき、余分なものはふき取る。そして保管も大事! 風通しのいい場所で直射日光を避けて保管しよう。
詳しくは下記記事を参考に、年に1、2度を目安に行うといいだろう。
※掲載している情報は2022年12月現在のものです。価格が改訂になっている場合、生産終了になっている場合がありますので公式ホームページでご確認ください。
※ロゴ刻印が現行品とは異なる場合があります。
(出典/「Lightning Vol.308, 313, 322, 332, 345」「別冊Lightning vol.190 ブーツの教科書」)
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