「カフェレーサー」誕生の歴史。
1950年代後半から60年代のイギリス、ロンドン。その片隅にロッカーズと呼ばれる若者たちがいた。彼らは労働者階級の青年たちで、クルマよりもずっと安価なバイクを移動手段としていた。当時イギリスで販売されていたバイクの総数の4割は、ブルーカラーの若者たちが購入したものであったという。
そんなロッカーズたちは、深夜営業のカフェ「エース・カフェ」にたむろした。彼らは仕事を終えるとそこにバイクで乗り付け、ジュークボックスでロックンロールを流してダンスとナンパに興じた。そして、違法な公道レースも行われた。
ロッカーズにとってのバイクは単なる移動手段に留まらず、日常を忘れてハイスピードで走ることに没頭するためのものだった。彼らは最速の称号を得るため、誰よりも速くストリートを走れるよう、GPレースで活躍していたファクトリー・レーサーを真似て愛車を改造したのだ。
このスタイルと手法は後にカスタムバイクのジャンルとして確立し、1970年代になると世界的なブームとなり、メーカーから純正でカフェレーサーと呼べるスタイルのバイクも登場したのである。
「カフェレーサー」の5つの特徴。
1964年製NORTONの「ATRAS」を例に、カフェレーサーの5つの特徴を紹介しよう。
1.長いタンク
モーターウェイ製のレプリカタンクはブリティッシュビート製で素材はFRP。縦に長く十分な容量の燃料が入るタンクは大きな特徴のひとつ。
2.低いハンドル
ハンドルはイタリアのトマゼリ製セパレートハンドルを装着。セパハンは空気抵抗を減らすため低い前傾姿勢のライディングポジションをとるのに欠かせないパーツ。
3.スミス製メーター
バイクだけでなくクルマでも欧州車御用達のスピード&タコメーターといえばスミス。ヴィンテージの機械式は高級時計のように精密に速度と回転数を表示する。
4.エアクリーナのないキャブレター
本来はひとつの純正アマルフ製キャブレターをツインに。エアクリーナーはベロシティスタックに変更。ツインキャブにするためマニホールドをワンオフで製作した。
5.一人乗り用シート
ソロシートはブリティッシュビートのオリジナル。着座部分の穴はオイルタンクの給油口にアクセスするため。シート後部はカウルのように丸みを帯びている。
いまヨーロッパで「カフェレーサー」人気が爆発!?オーナーたちの愛車拝見!
1977 HONDA CB750FOUR / トーマスさん
日本の旧車をこよなく愛するトーマスさんは、セパハンに、アルミタンク、シングルシートと正統派のロッカーズスタイルを披露。日本ではありそうで意外と少ないが、国産旧車のカッコよさを再認識させてくれた。
1973 BMW R75/6 / ブルネットさん
低くセットされたハンドルやきれいに処理されたリア回りなどバランスのいいカスタムが施されたカフェレーサー仕様のR75/6。美しい女性が大きなバイクにまたがる姿は、まるで峰不二子の様である。
1981 HONDA CX500 / ジュゼッぺ・ホークさん
SUZUKI GSX400 / フィリップさん
日本のバイクが大好きだと語るフィリップさんはサックスブルーのタンクが印象的なGSXで来場。ネイキッドバイクでもシートまわりを変更するだけでカフェスタイルが作れるという好例。海外の人たちは日本車をカッコよく見せるのが上手である。
ヨーロッパ人がカフェカスタムに秀でているのはご覧の通り。しかし、そんな彼らの多くはホンダやヤマハといった日本製バイクに乗っているというのも事実。今まさにどんなカスタムを施そうかお悩みの方々、ぜひカフェレーサーに挑戦してほしい。
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(出典/「別冊Lightning BIKERS SNAP バイカーズスナップ」「Lightning Vol.240 2014年4月号」)
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