35回目の夏を超えて伝承する使命感を覚えた。
「35SUMMERSは、私が25歳に立ち上げた会社で、自身が60歳を迎えることに35回目の夏に解散し、隠居しようという目論見で名付けました。そのカウントダウンが迫ってくると、まだまだ自分にはやることがあるなと強く思えたんです。昨年、無事に35回目の夏を迎えたわけですが、解散は撤回。自分が作ってきたもの、集めてきたものを通して、その経験や技術、そして想いを次の世代へ“継承”しなければならない」と語る寺本氏。
60歳を機に、伝承することを目的に自身をアーカイヴニストと名乗り、SNSやメディアを通してストーリーテラーとなる活動を始めた。世界的なヴィンテージコレクターでもあり、取材の度にその圧倒的な経験や知見に基づき、的確な説明を行ってくれる。寺本氏の熱量を体感している人間であれば、その活動に大いに賛同できるだろう。
「これまで様々なジャンルの膨大な量のヴィンテージを集めてきた結果、国や年代に関係なく、次世代に語り継いでいくべきプロダクトが存在するとわかりました。珍しいもの、旧いものがすべてではないと思います。今回の企画で、紹介するのはそんなアーカイブばかり。当時に作り手の技術や想いも含めて、次の世代へバトンを渡したいものです」
「アーカイヴニストが、墓まで持っていくもの」
アイコンであるハート型のチェンジボタンが付いたCarharttのカバーオールは、1920年代のヴィンテージ。現在の市場では、屈指のスペシャルピース。「同年代の個体でも色落ちが異なるのは染料の差と推測」
フランスを代表する建築家であり、家具デザイナーJean Prouvéのスクリーンは、1959年の作品。本来はパーテーションの役割であったが、自身のアトリエにてボードとして活用している。素材は鉄とアルミである。
ニューメキシコ州でスーベニアとして販売されていたハンドウーブンのタイは’50s。「パートナーであり、敬愛するピエール・フルニエが、エミスフェールでセレクトしていたんです。’84年頃に店頭で見て、衝撃を受けた」
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