子供服という概念がなかった時代の縁起物。
グリーンバウムブラザーズの当時の規模感がわかる貴重な資料が、1870〜1880年代に製造されたと思われるこの小さなサイズのモデルである。通常、このサイズのものは「セールスマンサンプル」と呼ばれ、営業マン用に商品と同じ生地を使用して作った「ミニチュア」だ。穿くものではないため、当然ポケットなどは省略され、縫い合わせもダミーのステッチが使われる平面的なものが多い。
それに比べ、このパンツはポケットが設けられ、人が穿けるように作られているのが特徴。実はこれ、『First Pair of Pants』と呼ばれるもので、主に出産祝いとして「1年後に脚を通せるように、健康に育つことを祈る」という願いを込めた縁起物として販売されていた。これが製造された19世紀後半は、まだ世の中に子供服という概念がなかった時代。小さい子供も大人と同じ扱いを受けていたわけだ。
「生まれて間もない体の小さな人間」という認識で、保護されるべき「子供」という当然考え方はありつつも、「小さな大人」とみられる側面が強かった。つまり、子供は「小さい人間であり、未成熟な人間であり、仕事がまだ十分にできない人間」という存在だったのである。そのため彼らの着る衣料は、紳士服を子供サイズにしたものだった。生地も作りもすべて大人用と同じ。事実、大人と同じ職場で労働に従事する子供はたくさん存在した。
グリーンバウムブラザーズの製作したこの『First Pair of Pants』も、同じように紳士服の子供サイズである。東海岸で生地調達と縫製をし、西海岸で販売をしていた同社ならではのオリジナルティのあるダックストライプ生地を使ったワークパンツは、大人用さながらの佇まいだ。
19世紀後半はデニムが労働着に使用され始めた時代だが、同社は他社が使用しないテキスタイルを使用して紳士衣料を製造し、その家族の幸せを想う気持ちをこの『First Pair of Pants』に込めた。奇跡的に現存していたこのアーカイブから新たなグリーンバウムブラザーズのオリジナリティを感じつつ、生地からすべて完全復刻を果たした。
当時の『First Pair of Pants』に実際に付属したラベルのデッドストック。「初めてのパンツ – 1歳の誕生日に」としっかり記載されている。
Lot 2214|1880 HEAVY LEATHER BOUND BLOUSE
直線で縫製された肩のラインは袖山が「ゼロ」の状態で、その分着用することで自然に肩が落ち、脇の下に生地が蛇腹のようにたまり、それが特徴的な色落ちになる、この時代ならではのブラウス。左右対称に配されたポケットもこの時代のワークウエアでは珍しい。独特のドレープ感も魅力の1着だ。¥42,900_
Lot 1228|1874 3POCKET HEAVY LEATHER BOUND OVERALL
グリーンバウムブラザーズを代表するウエストオーバーオールが、この3ポケットタイプのモデル。1874 年にパテントを取得したリベット箇所を革で補強する仕様をはじめ、コインポケットがつかないフロントポケットや立体的なL字の形状など特徴敵な仕様が満載だ。¥46,200_
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Photo by Shunichiro Kai 甲斐俊一郎 Text by CLUTCH Magazine 編集部
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