本物のクラフトマンシップをヴィンテージから学ぶ
LOUIS VUITTON創業初期のハンドメイドトランクは顧客の旅をしっかりとサポートし、エレガントに演出する役割を果たしていた。当時のプロダクツには、LOUIS VUITTONが現在も超一流ブランドたる証が詰まっている。
1920~ʼ30年代頃のトランク。当時のLOUIS VUITTONは職人によるハンドメイドでモノ作りが行われていた。パーツはすべてオリジナルで、スタッズは手作業とは思えないほど均一に打たれている。さらにモノグラムも当時はすべてハンドペイント。驚くべき技術を感じることができる。
1890年代頃のトランク。19世紀後半には王族や貴族などを顧客に抱え、高い評価を得ていたLOUIS VUITTONだが、悩みの種は他社によるコピー品問題だった。そこで1888年、この市松模様をイメージした柄「ダミエ」が考案された。現在もブランドを象徴する柄としてあまりに有名。ラグジュアリーブランドのトランクというと気負いしてしまうが、あえてカジュアルなジャケットやブーツに持つのがクール。
時代性とクラフトマンシップを感じる当時のロゴデザイン。
トランクの高さが48cmあることから男性用であるとわかる。
1900年代初頭のワードローブ。当時の旅は船旅が基本。上流階級の人たちは、長旅に対応する量の洋服をワードローブに収納した。時には複数個にわたることもあった。いくつものトランクを運ぶポーターと共に旅路に出るオーナーの姿が思い浮かぶ。
LOUIS VUITTONのコレクションの幅とユーザー層を広げた人物は、創業家系3代目のガストン・ルイ・ヴィトン。クリエイティブな発想に長けていた彼は、香水やハンドバッグ、財布など様々な商品開発を行った。
こちらは1970~80年代のガーメントケース。あらゆる角度から旅行者のライフスタイルを支え彩るブランドの姿勢は、3代目ガストンの活躍あってこそ。
旧さゆえの存在感とその背景にある価値
今回、大変貴重なLOUIS VUITTONのヴィンテージコレクションを提供してくれたのはGLAD HAND&Co.の幸田大祐氏だ。ファッションに携わる者として、そして、妥協のないモノ作りを信条とする幸田氏にとって、LOUIS VUITTOのヴィンテージには多くの大事なメッセージが詰まっているという。
「彼らの偉業は数え切れません。第一に、19世紀のトランクは豚革素材が主流でしたが、LOUIS VUITTON はキャンバスを用いて軽量化に成功しました。さらにパーツのひとつひとつまでこだわりり、モノグラムはハンドペイントでありながら一寸の狂いなく美しく描かれています。そしてそれが百年以上経った今も綺麗に残っている。画期的な開発と細やかなクラフトマンシップは、作り手としてリスペクトする部分ばかりですね」
あえて、ヴィンテージという選択。プロダクツとしてのカッコよさはもちろんのこと、そこには世界を代表するラグジュアリーブランドがなぜその地位に登りつめたかを証明する類稀なる軌跡が残されているのだ。
人々の交通手段が馬車からクルマへと変化していった1900年前後は、このように車載可能な形状・サイズのトランクが作られ始めた。黒地に青のモノグラムは大変貴重。
●幸田大祐 Daisuke Koda
GLAD HAND&Co.Owner
ヴィークル、音楽、ロウブロウアートなど旧きよき時代のアメリカンカルチャーを背景とするブランドGLAD HAND&Co.の代表。上質をモットーとし、時に意表を突いた素材やデザインにも評価が集まる。
※本ジャーナルは、『CLUTCH Magazine Vol.56』の内容を再編集したものです。
(出典:『CLUTCH web』、写真: Akira Kuwayama 桑山章、文:CLUTCH Magazine編集部)
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